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1−8:アルカディアスダンジョンの要塞ハウス


「へえ、あれがアルカディアスダンジョンのある建物か……」


 貴族街に引かれた特別区域を進むこと、約5分。目の前に、コンパクトながらとても存在感のある建物が見えてきた。

 周囲は貴族街らしく、庭付きの優美な外観をした屋敷がいくつかあるけど……その建物は優美さの欠片も無い、ひたすら無骨で機能性のみを追求した見た目となっていた。


「あまり大きくないですが、堅牢で重厚そうな建物ですね。まるで要塞のようです」

「昔はスタンピードとかも稀にあったらしいから、それに備えてるんですかね〜? 貴族街のど真ん中にあるし」

「……守る、大事……」


 全方位を鋼鉄の壁に覆われた、アルカディアスダンジョンの建物。周りとのギャップで異質さすら感じてしまうほどに、その風景は周りから完全に浮いていた。


「さて、入り口は……あそこかな?」


 そんな建物の正面に、小さいが頑丈そうな金属の扉を見つけた。色合いが他の場所と明らかに違っているが、これはもしかして……。


「全ミスリル製の扉ですね。青くて綺麗な色をしています」

「強度は十分に欲しいけど、扉はなるべく軽くしたい……そんな相反する要求に対して、金の力でゴリ押ししたらしいですね〜」

「………」


 そっと扉に触れて、魔法を掛けてみる。前世の僕は金属鑑定ができたが、今世の僕は……よし、どうやら問題無く鑑定できたようだ。

 このミスリルは純度99.998%、前世の僕が"超々高純度"と呼んでいた品質のものらしい。前世の僕基準だと、このミスリルの品質は中の上くらいらしいけど……これ、今なら普通に最上品質だと思う。ミスリルを精錬するのは大変だって話を、父上から少しだけ聞いたことがあるし。

 ……鉄は不純物を限りなく少なくしていくと、強度が高く錆びを生じない材料になるらしい。ミスリルもそこは似ていて、不純物が少ないほど強靭になるだけでなく、魔力の通りも格段に良くなるそうだ。"魔法金属"と呼ばれるミスリルの面目躍如といったところだろう。

 それだけに、高純度のミスリルは需要が高く、つられるようにして値段も高い。


「……かなりの高純度ミスリルだな。今これを作ろうと思ったら、2億ペルナは掛かるだろうね」

「2億……」


 金額を聞いたティアナが唖然としているが、無理もない。なにせ、エリオス家全体で1年に使う費用が、大体それくらいの額なのだから。

 ちなみに、ペルナとはアルカディア王国で使われている通貨の単位だ。今の物価だと、20ペルナでパン1つが買えるくらいの値段になるな。


「まあ、これだけ厳重に閉じられているのなら、周りの貴族も安心だろうね。

 ……さて、中に入ろうか、みんな」

「はい!」

「りょーかい!」

「……承知」


 ミスリル製の扉を開けて、4人で建物の中へと入っていく。

 中は簡素な造りとなっていて、小さなカウンターが1つと、地下に続く石造りの階段だけがあった。そして……。


「おう、いらっしゃい」

「ようこそ、アルカディアスダンジョンへ」


 フランクよりも大きな体躯を持ち、大剣を背負った男性と……背中から一対の黒い翼を生やし、身軽そうな格好をした女性が階段を守るようにして立っていた。どちらも悠々としており、立ち居振る舞いにまるで隙が見当たらない。相当高レベルの人たちであるのは確定だな。


「なんだ、よく見たらゼルマとフランクじゃないか。いつもは2人で来てるのに、今日は4人だなんてどういう風の吹き回しだ?」

「おっす、パウルさん。今日は我らが主様の3男坊が、ダンジョン初挑戦でしてね。一緒に来たんですわ〜」

「……良き人、です」

「ふぅん、ソリス家の?」


 大剣を背負った男性――パウルさんが、僕の顔を覗き込む。こちらもじっと目を見返すと、パウルさんはフッと笑った。


「こりゃまた、随分と若い子たちが来たもんだな。まず君、名前は?」

「エリオス・ソリスといいます。本部で探索者証を頂き、その足でこちらへ来ました。こちらがその探索者証です」

「なるほどね。ソリス家の子ならダンジョンに挑戦するのも納得……うん?」


 探索者証を手渡すと、それを見たパウルさんが少しだけ首を傾げる。なにか良くないことでも書いてあったかな? 本部で正式な手順を踏んで発行してもらった探索者証だから、問題は無いと思うけど……。


「……おっと、不安にさせてしまったなら申し訳ない。本部発行の探索者証はオズバルド本部長が認めた相手にしか渡さないから、珍しいなと思って見ていただけだ。

 いや、確かにこれは本物だな。まだ10歳なのに、よくオズバルド本部長を納得させられたもんだ」

「いえ、僕などまだまだ未熟者です。オズバルド本部長が認めてくださったのは、きっと未来の僕に期待をかけておられるからなのでしょう。むしろ、これからが大事だと僕は考えています」

「なるほどねぇ……オズバルド本部長が探索者証を与えた理由、なんとなく分かった気がするよ。10歳でこれなら、確かに未来へ期待をかけたくもなるってもんだ」

「……?」


 パウルさんがなにやら小声で言っていたが、僕にはよく聞き取ることができなかった。まあ、パウルさんは穏やかな笑顔を浮かべているので、悪いことではないのだろう。それなら気にすることもないか。


「おっと、すまんすまん2度目だな。後ろの御三方も、ツェツィーリアに探索者証を渡してくれ」

「それでは、ご一緒の皆さまも探索者証をご提示ください」

「はい、こちらです」

「はいな〜」

「………」


 翼の生えた女性――ツェツィーリアさんが手早く探索者証を確認すると、1つ頷いてから全員に返却した。


「確認ヨシ。ただし、エリオス殿とティアナ殿は15歳未満ゆえ、第20層までの探索のみ許可されている。ゆめゆめお忘れなきよう」

「「分かりました」」


 ティアナと綺麗に言葉が重なる。互いに顔を見合わせて微笑み合うと、パウルさんが『仲良いねえ』と(はや)してきた。


「よっしゃ、それじゃあ行ってこい! 人生初のダンジョン探索、慎重に楽しんでこいよな!」

「ははは、楽しむ余裕があったらいいんですけどね……」


 初ダンジョン探索だからね。多分、安全確認とかで一杯イッパイになるような気がするよ。



◇□◇□◇読者の皆様へ◇□◇□◇


 なろうに数多ある小説の中から、私の小説を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


 読者の皆様へ、作者よりお願いがございます。


 皆様の率直な判定を頂きたいので、ページ下部より☆評価をお願いいたします。

 ☆1でも構いませんので、どうかよろしくお願いいたします。

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