友人が、散歩の途中で「結婚希望」と書かれた手紙を拾ったらしい
「どうしよう、デュトン。封筒を拾っちまった」
「はい?」
慌てた様子で、友人のアークが飛び込んできた。
「中を見たら"結婚希望"と書かれてて、身元まで詳しく書いてあって」
「そりゃまた」
「ほら、何か聞いたことないか? 東の国では"冥婚"といって死者の結婚相手を探す風習があるっていう……」
アークが蒼白になって震えている。
「何でそんな、得体の知れない封筒を拾ったんだよ」
「い、いつもの散歩道にすごく綺麗な封筒が落ちてたから……。良い香りもするし……。どう見たって貴族の使う紙や装飾で、大切な手紙なら代わりに届けてやろうかなって、つい」
「アホなの? なら開封するんじゃない」
「だって宛名に"独身の美青年様"って書かれてあったんだ」
「うっわ。もうどこツッコんだらいいかわかんね。お前も大概厚かましいし」
俺が呆れると、アークはオタオタと挙動不審な動きをする。
「相手がもし死んでたら俺──」
「まず、身元や名前が書いてあったんだろ? 存命かどうか調べりゃいいじゃん。あと拾いました、って返して来い」
「!」
アークが思い切り目を見張る。
「そ、うか、そうだよな。うん、そうしてくる。有難う、邪魔したな」
言って、来た時同様、窓から飛び出して行った。
「次は玄関で呼び鈴鳴らせよ──」
アークの背中に呼び掛けて。でもきっとまた窓から来そうだな、と嘆息しながら、開け放たれた窓を閉めた。
──のが、数か月前。
ニコニコと、再びアークが窓からやってきた。
「俺、今度結婚するから、これ招待状な」
金色の縁取りの封書を手渡してくる。
「……それはおめでとう。どういう相手?」
「前に話した封筒の彼女」
「は?」
「なんかさ、彼女の目当て、最初から俺だったらしいんだよね。散歩してる姿に惚れたって」
「ほう……」
「家から出して貰えない薄幸令嬢で、年上の爺に売り飛ばされそうになったから、賭けに出たんだとか」
「で」
「彼女んちに乗り込んで、俺が娶ると宣言してきた!」
ドヤとばかりにアークは胸を張るけども。
「お前の親父さん、結婚許してくれたの?」
「相手が人間なら、ギリ許すって」
うんうんとアークが頷く。
「いやぁ、もし死者だったら冥界との縁組だろ? あそことは長年領地戦やってるから、どやされるところだった」
「彼女はお前が魔族だって知ってるのか?」
「勿論! だって俺の散歩コース、彼女んちの3階の窓辺通るし」
そこが封筒の落ちてた所?
故意だろ。
あと羽出して飛ぶのは散歩じゃねぇよ!
お読みいただき有難うございました!
なろうラジオ大賞参加作品5作目になります。
昨日4作目の『お姉様のためなら、ベランダからでも落ちますわよ!』を投稿したばかりなのに。なんなら3作目投稿したあたりで、そろそろいったん控えておかねばと思ってたのに。
あれよあれよと5本目。あれぇ…? すみません、"なろラジ"が好きなんです。毎年ワクワクしながら待ってるんです。許して。
複数作品おつきあいくださる読者様には感謝しかありません!!(≧∇≦)/有難うございます!!
さて、東の国の風習については詳しくは書きませんので、本作はまるで違った創作作品とお受け取り下さい。ところで「どやされる」って方言? 通じます?
このお話、令嬢側から書いたら楽しいかもしんない、と、ちょっと思ってみたり。きっと大胆なご令嬢なのでしょうね!(*´艸`) お話を楽しんでいただけましたら幸いです。
ところでウチのスマホですが、音声入力で「もずく」というと「魔族」と変換してくるんです。今日は「魔力」と変換してきました。…おぬしもわかっておるのぅ…。でも困る。お買い物メモだから!!(;>∀<)
2024.12.10.ご感想をいただいたので追記です♪