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なろラジ6参加作品

友人が、散歩の途中で「結婚希望」と書かれた手紙を拾ったらしい

「どうしよう、デュトン。封筒を拾っちまった」

「はい?」


 慌てた様子で、友人のアークが飛び込んできた。


「中を見たら"結婚希望"と書かれてて、身元まで詳しく書いてあって」

「そりゃまた」

「ほら、(なん)か聞いたことないか? 東の国では"冥婚"といって死者の結婚相手を探す風習があるっていう……」


 アークが蒼白になって震えている。


(なん)でそんな、得体の知れない封筒を拾ったんだよ」


「い、いつもの散歩道にすごく綺麗な封筒が落ちてたから……。良い香りもするし……。どう見たって貴族の使う紙や装飾で、大切な手紙なら代わりに届けてやろうかなって、つい」


「アホなの? なら開封するんじゃない」


「だって宛名に"独身の美青年様"って書かれてあったんだ」


「うっわ。もうどこツッコんだらいいかわかんね。お前も大概厚かましいし」


 俺が呆れると、アークはオタオタと挙動不審な動きをする。


「相手がもし死んでたら俺──」

「まず、身元や名前が書いてあったんだろ? 存命かどうか調べりゃいいじゃん。あと拾いました、って返して来い」


「!」


 アークが思い切り目を見張る。


「そ、うか、そうだよな。うん、そうしてくる。有難う、邪魔したな」


 言って、来た時同様、窓から飛び出して行った。


「次は玄関で呼び鈴鳴らせよ──」


 アークの背中に呼び掛けて。でもきっとまた窓から来そうだな、と嘆息しながら、開け放たれた窓を閉めた。

 ──のが、数か月前。



 ニコニコと、再びアークが窓からやってきた。


「俺、今度結婚するから、これ招待状な」


 金色の縁取りの封書を手渡してくる。


「……それはおめでとう。どういう相手?」


「前に話した封筒の彼女」

「は?」


「なんかさ、彼女の目当て、最初から俺だったらしいんだよね。散歩してる姿に惚れたって」

「ほう……」


「家から出して貰えない薄幸令嬢で、年上の(ジジイ)に売り飛ばされそうになったから、賭けに出たんだとか」

「で」


「彼女んちに乗り込んで、俺が(めと)ると宣言してきた!」


 ドヤとばかりにアークは胸を張るけども。


「お前の親父さん、結婚許してくれたの?」

「相手が人間(・・)なら、ギリ許すって」


 うんうんとアークが頷く。


「いやぁ、もし死者だったら冥界との縁組だろ? あそことは長年領地戦やってるから、どやされるところだった」


「彼女はお前が魔族だって知ってるのか?」


「勿論! だって俺の散歩コース、彼女んちの3階の窓辺通るし」


 そこが封筒の落ちてた所?

 故意だろ。

 あと羽出して飛ぶのは散歩(・・)じゃねぇよ!




 お読みいただき有難うございました!


 なろうラジオ大賞参加作品5作目になります。

 昨日4作目の『お姉様のためなら、ベランダからでも落ちますわよ!』を投稿したばかりなのに。なんなら3作目投稿したあたりで、そろそろいったん控えておかねばと思ってたのに。

 あれよあれよと5本目。あれぇ…? すみません、"なろラジ"が好きなんです。毎年ワクワクしながら待ってるんです。許して。

 複数作品おつきあいくださる読者様には感謝しかありません!!(≧∇≦)/有難うございます!!


 さて、東の国の風習については詳しくは書きませんので、本作はまるで違った創作作品とお受け取り下さい。ところで「どやされる」って方言? 通じます?


 このお話、令嬢側から書いたら楽しいかもしんない、と、ちょっと思ってみたり。きっと大胆なご令嬢なのでしょうね!(*´艸`) お話を楽しんでいただけましたら幸いです。


 ところでウチのスマホですが、音声入力で「もずく」というと「魔族」と変換してくるんです。今日は「魔力」と変換してきました。…おぬしもわかっておるのぅ…。でも困る。お買い物メモだから!!(;>∀<)


 2024.12.10.ご感想をいただいたので追記です♪

挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
タイトルから惹かれ、東の国の風習、アークの再訪と驚きの展開、そしてラストまで、目が離せませんでした。そういえば、アークは窓から飛び出して行ったような…とまた前から何度も読み返して、絶妙な構成に驚嘆しま…
冥婚…確かに、聞いたことあります。勿論、どことは言いませんが(笑) 「相手が人間なら、ギリ許すって」 …人間?と思ったら魔族の方なのですね~。 最後に驚きがあって面白かったです! 素敵な作品をあ…
ラストに驚かされました。 デュトン最後のツッコミには“散飛”になるのだろうか、とふと思いました(笑)
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