那覇基地⑥
「コントロール、こちらデルタリーダー。エンジン始動完了、滑走路へのタクシーを許可願います。」
西村が無線で管制塔に報告すると、少しの間静寂が続いた後、冷静な声が返ってきた。
「デルタリーダー、了解。滑走路クリア、発進許可。」
スロットルを徐々に押し込むと、エンジンが低く唸りを上げ、機体全体が微かに振動した。HUDに映し出されるデータを見つめながら、西村はスロットルをさらに前進させ、エンジンの出力を最大にした。エンジンの轟音が一気に増し、戦闘機が滑走路を疾走し始める。滑走路の端に並んだ誘導灯が次々と機体の横を通り過ぎていく。西村はスロットルを押し込み続け、滑走路の終わりが近づくと同時に操縦桿を引き上げた。戦闘機が徐々に地面を離れ、空へと浮かび上がる。
戦闘機は一気に加速し、那覇基地の上空へと舞い上がった。エンジンの音がさらに高まり、風を切る音がコックピット内に響き渡る。HUDに表示される飛行データを確認し、目標の高度まで順調に上昇していることを確認した西村は、無線で部下たちに呼びかけた。
「デルタツー、こちらデルタリーダー。高度1500メートルで編隊形成、状況を報告せよ。」
「こちらデルタツー。高度1500メートル到達、編隊位置に入ります。すべて順調です。」
デルタツーは、ウイングマンである三等空尉の藤原だった。藤原は、西村の指示に従いながら、HUDに表示されるデータを確認し、自分の位置が正確であることを確かめた。
「デルタスリー、デルタフォー、続けて編隊位置に入れ。」
西村が続けて指示を出すと、デルタスリーとデルタフォーのパイロットたちがそれぞれ無線で応答し、編隊を整えていった。戦闘機たちは見事なまでに整然とした動きを見せ、まるで一つの生き物のように空を支配していた。西村は目を前方に据え、仲間たちと共にさらなる高みへと向かっていった。
高度を増すごとに、那覇基地や沖縄の島々が遠く下に広がり、朝の光が徐々に大地を照らし始めた。