那覇基地①
那覇基地の空は、まだ夜の名残を残していた。遠くに見える水平線は薄紫色に染まり、夜明けの気配が徐々に基地全体に広がっていく。冷たい風が滑走路を吹き抜け、遠くから聞こえる海鳴りがその風に混じって低く響いていた。F-15J改戦闘機が整然と並び、まるで夜明けを待つかのように不動の姿勢で佇んでいる。この機体は、従来のF-15Jに対して電子戦システムの強化や、最新のアビオニクスが導入された改良型である第9航空団第204飛行隊のエンブレムが描かれた戦闘機の巨大な翼と鋭い機首が淡い光に照らされ、その金属的な光沢が一瞬だけきらりと輝く。滑走路を縁取るように誘導灯が点滅し、基地全体が静寂に包まれていた。
自衛隊員たちは静かに、しかし手際よく動いていた。彼らの動きには無駄がなく、各々が与えられた役割を確実にこなしている。整備主任である一等空曹の森田は、ヘッドセットからの指示を聞きながら、部下たちに指示を出していた。整備員たちはF-15Jの機体を入念にチェックし、手袋をした手が戦闘機の表面を優しく撫でるように走り、確かな感触を確認する。「エンジン良好、燃料タンク確認済み」と森田一等空曹が冷静に報告すると、隣の整備員が静かに頷き、再びチェックリストを見直す。東の空が薄紅色に染まり始め、夜と朝の境目が消えつつあった。第204飛行隊のF-15J戦闘機たちは、まるで生き物のように息づき、いつでも空へ舞い上がる準備が整っているかのようだった。