第三話 マ○ス
第三話
マ○ス
側近「魔王様。大変です。」
魔王「どうした。大変なのはお前の頭だ。俺は今トイレ中なんだが。締めてくれるか?」
側近「分かりました」
がらがらがら
側近「それで魔王様」
魔王「あ、話し続けるのね、まあいいや。どうぞ。」
側近「大変です」
魔王「それは聞きました」
側近「次の勇者の召喚が確認されました。」
魔王「またか…」
側近「そして次の勇者のスキルですが、【不死身】でした。一刻も早く魔王様に伝えようとおもい…」
魔王「ああ、そういうやつな。大丈夫大丈夫、死なないやつは封印するって相場が決まってるの。絶対に倒せないから焦ったんだろうけど安心してくれ。そういうやつを安全に処分するところあるから。」
側近「…そうなのですか。焦って損しました。」
魔王「ふーすっきり」
魔王「ところでこのトイレがどこに繋がってるか知ってるかね。」
側近「知りませんし知りたくもありません」
魔王「うん。まあ、【不死身】の勇者は知る事になるだろうがね。」
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側近「魔王様。【不死身】の勇者が魔王城へ侵入した途端、消えました。」
魔王「ああ、そうだろうな。」
側近「…なぜでしょうか?」
魔王「ほぼ封印したんだよ。」
側近「そんなことができるのですか?しかしどうやって?」
魔王「まあ、封印って言うと語弊があるんだけどさ。」
魔王「魔王城の下水道ダンジョンへ飛ばしたんだ。」
側近「下水道ダンジョン…?」
魔王「そう。そこにはね、1フロアに20万個のワープゾーンがあってな。そのうちの一つが正解で、それ以外が外れ。あたりを引いたら次のフロアに進み、ハズレを引いたら最初のフロアに戻る。そしてあたりとハズレは毎回ランダムに選定される。それを100万フロア重ねただけの単純なダンジョンなんだ。」
側近「それ、なんかみたことあります。」
魔王「ああ、多分それ。」
側近「でも、そんな便利なものがあるなら、」
側近「全部の勇者をそこへ飛ばせばいいのでは?」
魔王「ああ、まあ普通、そう考えるよな。」
魔王「この世界にはさ、妙なルールってのがあって、進行不可能な状態に勇者を追いやる事がほぼ無理なんだ。」
側近「ふむ…?」
魔王「だから、定命の…命の限りのある勇者は、理論上その寿命の中で終わらないような謎解きの部屋へ送れない。」
魔王「でも、不死身なやつはそうじゃない。無限に命があるからね。理論的に解除可能な謎ときになるんだ。」
側近「だから妙に落ち着いて処理してたんですね」
魔王「当たり前だよ、何年魔王やってると思ってる」
側近「………魔王様は、定命なんでしょうか」
魔王「そーいや、考えたこともなかったな…」