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第9章 シャロ、アリティンティリウスに帰還

僕は、ここ最近ようやく体が動くようになり、農場で畑仕事を手伝ったり、図書館で本を読んだり、論文を執筆したり、また、たまに依頼される探偵としての業務も行なっている。

以前稼いだお金で家政婦として、りるを雇用し、僕はシャーロックホームズのように毎日ヴァイオリンを奏でたり、タバコを吸ったりしている。

もし、僕がホームズなら彼女はワトソンと言ったところだろう。


「ところで」

「はい」

「イザルは、3つのアイテムを渡せただろうか」

「私にはわかりませんわ。それよりももう1つの世界の話もっと聞きたい」

「・・・」

記憶が断片的になりつつある。

僕は、仕事ができないが面接官に気に入られ入社したあの会社。

同僚の笑顔が脳裏に浮かぶ。


「タバコを1本ふかしたら、話すよ」

「喫煙は体に毒ですよ」

「はは、毒であるならもっと摂取して寿命を縮めたい」

「そんなこと言わないでください」

「・・・僕なんて、僕なんて必要ない人間だから」

「あなたがいた世界ではそうかもしれませんが、アリアットの発展には、あなたの力が欠かせませんわ」

「・・・うん」


僕はタバコの先端に火をつけた。

アリアットのタバコ「ヘーワ」の味にも慣れた。

ショートピースに近い味がして、僕の好みの味だ。また、アリアットで流行のコラーラというジュースは、チェリーコークに似ており、これも僕の好みの味だった。

家政婦のりるは、僕の承認欲求と孤独を満たしてくれる。

正直ここにずっと居座ることができれば、それが一番幸せなのかもしれない。

たまに新宿を思い出すし、トー横と呼ばれる新宿東宝ビル周辺の路地裏が懐かしく思えるし、パチンコやパチスロもまた打ちたいと思える。

刺激はたしかにこちらの世界の方が少ないが、それでも僕は幸せを享受しているのかもしれない。


だが脳裏に浮かぶのは果たして幸せとはなんだということだ。

「・・・りる、トー横の話をさせてもらって良いか?」

「とーよこってなんですか?」

「新宿という街の話はしたね、そこに歌舞伎町っていうのがあって、歌舞伎町を進むと新宿東宝ビル周辺の路地裏に、…妖精がいるんだ。

黒いマスクをつけた妖精たちが」

「妖精、フェアリー族のことですか?」

「比喩表現だ。妖精のような美少女たちがたくさんいる。

僕は彼女達を遠くから見ることしかできなかった。

彼女達を抱ける社会的地位の高い人達を羨ましく思うよ」

「そうなんですね」


僕はまた嫌な記憶を思い出した。

「ちー…」

「ちー?」

「ちひろちゃんっていう僕の後輩がいて、僕は彼女に恋をしていたんだ。

彼女は男性アイドルが好きだった。だから、僕も彼女の趣味に合わせようと、男性アイドルの曲をひたすら聴いたしダンスも覚えたけど、彼女は、僕と目を合わせることをしなくなった。

…最後まで関わってくれたのは南さんだけだった。彼女と連絡先を交換しようとしたけど、断られた。

本当に…好きだった。

孤独を癒すためトー横に言った、だけど僕は妖精たちを抱けない。彼女達は僕にとって蜃気楼のような存在なんだ」


「あの…私でよければ」

「りる…」

僕はりるを抱いた。りるは、とても美しく白くつやのある肌に童顔で、年齢は18歳ほどの美少女だ。

でも、僕は地球で解雇された会社の同僚や後輩のことばかり思い出す。


「過去に固執してばかりでごめんよ」

「良いですよ、だって地球の話とても面白いし、私の知らない世界の話とても興味深いです」

「りる…」

「どうしました?」

「キスしても良いかな?」

「え、」

りるは、顔を赤らめた。

りるは、こくんと頷くと僕はりるにキスをした。

この感情は恋心なのかどうかもわからない。

ただ今言えるのは、前の会社に戻りたい。

元同僚の瀧川さんにも会いたい、僕はダメなやつだ。どうして目の前に本当に好きな人がいるのに過去の女に固執してるのか。

恋したガールズバー嬢のあいかちゃんも思い出してきた。

気がつけば女の記憶ばかり、脳裏に浮かぶ、僕は最低なやつだ。

でも、りるは、そんな僕をぎゅっと抱いた。

「りる、なんで僕に優しくしてくれるんだい?」

「私は、元々あの宿主の女奴隷だったんです。それをあなたが買い取ってくれて、晴れて一般市民になれたんです。

そんなあなたは私にとっての英雄です」

「もし、僕が他の女に恋をしたら?」

「その時は、あなたを応援します。」

「りる、愛してる」

「ムシロさん、私もあなたを愛してます」


…その頃、シャロ達は。


オレオンでイザルと合流し、3つのアイテムを受け取り、その後イザルもアリティンティリウスに一緒についていくと言い、4人は、船を買い、アリティンティリウスまでの渡航を開始した。


道中クラーケンに襲われることもあったが、4人に敵なしの状態であった。


その頃魔王達は頭を抱えていた。

次々に、3人の男に仲間が殺されていったり、統治した国を解放されたりと、散々な目にあった魔王は、終戦直前の日本を彷彿とさせる、絶望の状況に立たされていた。

「どうしたものか…」

「私たちは降伏すべきでしょうか」

「いや、降伏などしない、最後まで戦う!

魔王族の誇りに賭けても」


そして、4人を乗せた船がアリティンティリウスに辿り着くと一斉に矢が放たれるがイザルの魔法で作られた巨大な盾によって、矢が当たることは一切なかった。

魔王達が、次々にシャロ達に攻撃を仕掛けるが、イザルが刀で次々に切り刻んでいき、シャロも応戦する形で、魔力を込めた小銃で次々に魔族や魔王族を殺していく。

4人はアリティンティリウスの首都、マーロにあるエルル神殿に向かって歩いた。

「この6つのアイテムがあればきっと、エルル・ヴァラダスを召喚できる…」と3人は喜びに溢れていた。


すると、ひとりのツノの生えた魔王族と1人と思われる女が剣を持って4人に襲いかかった。

その剣は青銅の剣であり、その行為が自殺行為であることは、わかりきっていった。

女は泣きながら「旦那を返せえええええええーっ!」とシャロに斬りかかろうとしていた。

3人は彼女を殺そうとしたが、シャロは微笑みながらこう言った。

「あの女、俺の好みだ。」

ベトナム戦争時のアメリカ軍を彷彿とさせる行動にシャロは出る。

シャロは青銅の剣を彼女の手から落とし、そして抱きしめた。

「可愛い、愛してる」

嫌がる彼女に無理やりキスをした。

シャロは、魔王族の女は、シャロから逃げようとする。

シャロは、魔王族の女に平手打ちをした。

「お前らは、何人の人間を殺した。

そして、お前らは、どれだけの罪を犯した。

俺たちが正義なんだ。」

シャロは嫌がる彼女を脱がせようとしたが、流石に憤りを感じたジョンが、シャロに殴りかかる。


「お前は魔王族を何だと思ってる!」

「敵だ!僕の国を滅ぼした悪だ!だからこそ、僕は彼女を殺せるし、裁ける。

だから、僕は好みであるこの女を抱いた!それだけだ!ジョン、裏切るつもりか…」

「いや、裏切らない、俺だって魔王族のやり方には反対だ!だが、お前のやってることは、正義に名の下に蛮行を働く独裁者のようだぞ」


「俺は…

もしかしたら独裁者になる男かもしれない」


イザルはふと笑った。

「そんな奴が、俺の世界線にもいた。

シャインと言うのだがね」

「どこにだっているんだな」とシャロは笑った。

女はシャロ達から逃げた。

「まぁ、先を急ごう、エルル神殿までもうすぐだ」


すると、女が斬り殺される音が聞こえた。

「無様な姿を晒して!この魔王族の恥が!」という低い声が聞こえた。

シャロは、ジョンに言った。

「もし、僕が彼女を女奴隷にしたら彼女は死ななかった。そう思わないか?」

「…彼女の死を笑うな、いや、人の死を笑うな!!!!」

「死を笑ってるんじゃない、彼女が僕の女奴隷にならなかったのは、非常に残念だと言っているだけだ!

魔王族の女は全員僕の奴隷になれば良い。

一人ずつ抱くよ俺は。

きっと僕は魔王以上に魔王の素質があるのかもしれない。」


イザルは、思い切りシャロの顔面を殴った。

イザルの殴りはあまりに強く、シャロは気を失った。

「こいつは、俺が連れて行く。」とイザルはシャロを背に乗せた。

「俺こいつのことが嫌いになりそうだ」とジョンが言うと、イザルは「誰にだって負の側面、正の側面がある。完全な正義なんて存在しないし、完全な悪も存在しない。

きっと魔王族のやつらも、正義のために人間を殺し、様々な国を植民地化したのだし、人間もゴブリンやオークを迫害した。

完全な正義なんてものは不可能なんだ、それはジョンお前にも言えるぞ」

「・・・お前は一体何者なんだ」

「・・・俺は、…なんだろうな、風来坊とでも言ってくれ」


4人はエルル神殿まで無言で歩いて行った。

道中大雨が降り出した。

その雨は、4人の冷えついた、空気感を表すようだった。


途中ナハトが凍えて、倒れた。

「う、寒い…」

ジョンはナハトを魔法の力で温めた。

「ナハト、歩くのがつらくなったら言え。

また食糧も欲しくなったらいつでも言ってくれ」

「ありがとう、ジョン」

「お前は俺の大親友だからな」

「ジョン…」


よろよろと歩くナハト。


だが、魔王族の1人の矢がイザルの魔法の盾を貫通し、ナハトの胸に命中した。

ナハトは絶命した。

「貴様アアアアアアアア」とジョンは、魔王族の男に向かって、矢を放った。

「ナハト、しっかりしろ、ナハト!!!!」ナハトは、安らかな顔だった。

それは、まるでジョンと旅ができたことによる喜びに包まれた表情だった。


ジョンは涙を拭い、彼を抱え、エルル神殿まで歩いた。


そして、歩き始めてから5日が経った頃、エルル神殿に辿り着いたのであった。

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