第3章 シャロ、ジョンに会う
"かつて魔王と呼ばれた男" ジョン・レイリー。
この本を恐る恐るシャロは読んだ。
前書き
私はかつて魔王と呼ばれた男のジョン・レイリー。たしかに魔王族の生まれだが、私は、平和主義者である。
私の父、ガン ガガ・ジャイヤーは、人間を奴隷にし、魔族優位思想の蔓延る世界を作り上げようとしている。
そして、魔国の中にも魔獣で結成された革命組織があった。
しかし、魔族や人間では、太刀打ちができない現状がある。
そこで私が考えられる父を討伐する方法を考えてみた。
ちなみにこの本のタイトルを「魔王を倒す方法」にしなかった理由は、語彙力のある勇者によってのみ読んで欲しく、内容はとても一般人が読めぬように細工を施してある。
前書きから先に進もうとすると、ページが重くて捲れない。
きっと、この本には魔術による封印が込められている。
「この呪文を使ったのは、初めてだけど」
アリティンティリウスで修行した呪文の一つで、封印を解く魔王だけど…うまく行けるか…
ランパラリ・ノグスワリ・シャメロック…」
強く念じると封印は解け、全てのページを読むことができるようになった。
エルル・ヴァラダスの存在について。
エルル・ヴァラダスは、神話上の神として崇拝の対象だが、この世界に必ず存在している。
古代文字を読める友人ナハトによると、エルル・ヴァラダス神話にはいくつもの誇張表現があるが、それは改訂に改訂を重ねたためだ。そして真の意図を読むには解読魔法シュタナルが必要だ。
シュタナルを唯一使えるナハトは、オリジナルの古代文字を読んだ。
"6つのアイテム"がエルル・ヴァラダスには、必要だ。6つのアイテムについては、のちに記述するが、その前に私は魔王を討伐する仲間を欲している。
私は作家としてアグルアニの田舎町アンルイに居住している。
仲間における条件をここに書こう
・高度な医術を持つ者
・平和主義者
・呪術魔術武術に優れている者
・妖刀や魔弓を扱える者
・大切な友人であるナハトを守り抜ける人
だが、そこまでの能力を持つものはきっと、多くはない。
だからこの本の封印を固くしたが、今読んでいるということは少なくとも第一関門は突破したわけだ。
もちろん、テストもしっかり行う予定だ。
さて、最後にエルル・ヴァラダスを君臨させるための6つのアイテムについて記述しよう。
1. ワッサールの聖杯: アリティンティリウスの領土に隣接するワグリアット文化の聖杯。魔力を秘め、持ち主の力を高める能力を持つ。
2. 英雄の指輪:ショーロンポーの国に伝わる伝説の指輪。このシャクを手に入れると、持ち主は軍事的な指導力と統率力を得ることができる。
3. エルヌティアヌの首飾り:エルル・ヴァラダスの息子であるハジャの妻であるアンピュリの装身具。この首飾りは愛と癒しの力を宿し、持ち主を保護し回復させることができる。
4. エルル神殿の鍵:エルル神殿を開くための鍵。この鍵を手に入れることで、神聖な場所にアクセスし、神々の助けを借りることができる。
5. ルーファラの剣:伝説の戦士ルーファラが使っていたと言われる剣。この剣は勇気と力を象徴し、持ち主の戦闘能力を飛躍的に高める。
6. 女神のティアラ: 神秘的な力を宿した魔法の頭飾りである。それはエルル・ヴァラダスが愛した女神から授けられたと伝えられており、装着者に神聖な保護と知恵を与える。ティアラは煌めく宝石で飾られ、光り輝く翼や蓮の花のモチーフが彫り込まれている。使い手はティアラを身に着けることで魔法の力を引き出す。
他にも様々な記述はあったが、シャロは、この本を読み上げた翌日、ひなの作ったパンとスープを飲んで、「ごめんね、ひな」と別れ際にキスをした後に、アンルイに向かった。
シャロは、馬車でアンルイに辿り着くとそこは都市ティリウスとは違い、のどかな田舎町といった感じだった。
シャロはくわで畑を耕している老人に声をかけた。
「僕はシャロ、ジョン氏に会いに来たのだが」
「…その男はきっと、この町にはおらんぜ…
それよりあんた、力が強そうだね。
少し畑を耕すのを手伝ってくれんか」
老人からくわを借りると、そのくわの重さは、200トンにも及ぶほど重く、シャロは、持ち上げるだけでも精一杯だった。
「おうりゃ!!!」とシャロは、畑を耕し続けたが、20分もすると、肩や腕に痛みを感じる。
「なんて、重さなんですか…」
「アグルアニを守るため、農民も市民も体力をつけにゃいかんのよ」
「ジョンを探してると言ったな、ジョンという男は知らんがここ最近、アンルイに引っ越した、若い作家がおる。
そいつのもとに案内することはできるが、畑を全て耕したら良いだろう」
10ヘクタールほどの畑を開拓しなければ、ジョンに会えない…しかし、シャロは、世界を救うという目的のために諦めるという選択はなかった。
そして、シャロは畑を耕すのに専念をすることになった。
畑を耕してる間は、老人の家に居候をし、老人の手料理を毎晩ご馳走になった。
シャロは畑仕事を通じアンルイの市民と交流を深め、そして、10日が経った時、10ヘクタールの畑を耕した。
「よくやった、それでは、ジョンのもとへ案内しよう」
老人は家の床を剥がし、地下へと案内した。
そこで光魔法ピカンを証明として利用し、小説を執筆してる男がいた。
部屋の広さは6畳ほどで、とても暗いが食糧だけは豊富にあった。
「・・・勇者…か」
「恐らく彼は素質あるものでございます。
あのくわで畑を耕した男です、どんな大男であってもあそこまでの力を持つものはなかなかいません」
「下がれ、ルマー」
「ははあ」老人は階段で地上へと戻り、シャロとジョンは2人になった。
「貴様が勇者か…」
「俺は勇者でもなんでもない!頭の悪いただの陰湿な男だ!しかし、世界を救いたい!」
「・・・俺はかつての魔王…だが、私も世界を救いたいからこそ、真の勇者にのみ、あの本を読ませるように封印を施した…
私は作家としての仕事を中断し、その勇者にあたる男と友人のナハトと旅に出ようと思う。
お前がその勇者にふさわしいかテストをさせて欲しい」
ジョンはシャロに幻覚を見せた。
それは燃えていくアリティンティリウスの市街地。シャロの顔馴染みのある人も中にはいた。シャロの両親の死に際を見せる。
シャロは泣き出しそうになるが、シャロはぐっと堪えた。
ジョンは、「・・・合格だ」とシャロの頭を撫でると、幻覚は消えた。
ジョンはシャロと地上を出て、ナハトが勤務する大学へ向かった。
クルニィエル大学で研究職をしているナハトは、大学図書館で書籍を読んでいた。
「勇者がきた。旅の準備はできた」
「ええ、彼が勇者ですか?はっきり言って弱そうです」
メガネをかけた色白で、身長が低めの男、ナハトは、ショルダーバッグを手にした。
「まぁでも、ジョンが認めるなら彼は勇者かもしれませんね」
「お前…言わせておけば…」
シャロはぐっと怒りを感じた。
「戦っても良いんですよ…」
ナハトは、小さなナイフを取り出した。
ナハトはナイフを高速で10本投げるが、シャロは全てナイフを避けた。
「こっちの番だ!」
しかし、ナイフはブーメランの如くUターンをし、シャロの全身に突き刺した。
「これは、魔術で作り出した、マジックナイフ…そしてこれは実態はないが多くのダメージを与えられる」
「やめろ!勇者に何をする!」
シャロは、「ファグライアー!」と指先から炎を出すと、ナハトはかわす。
シャロはナハトを殴りかかろうとするが全て交わす。
「・・・まぁ、強いのは認めますよ、伸びしろに期待しましょうか…」
不仲のシャロとナハト、ジョンは少しだけ頭を抱えた。
英雄の指輪を見つけるためにショーロンポーの国に3人は向かった。