第1話 シャロの旅立ち
シャロが10歳の頃にずっと読んでいた本、それはアリティンティリウスの歴史についての本だった。
アリティンティリウスの初代皇帝ルーファラに憧れを抱いたファロは国家を作りたいという野心が幼心にあった。
シャロは、国家形成のために学問と魔術、呪術に法学や武闘力を高め、12歳の頃には、アグルアニの兵士として活躍していた。
兵士のアングロは、シャロに話しかけた。
「お前は、12歳なのにすごく強いな」
「僕は、いずれ建国したいって思ってる。
誰もが幸せなパラダイスみたいな国家を」
「パラダイスみたいな国家だ?
アグルアニ、よく聞けこの世の中にはパラダイスみたいな国家は存在しない。
それにみんなが平等な国家を建国したとしても怠惰な者が現れる。
シャロ、そんな時君はどうする?」
シャロは2分ほど考えて答えを出した。
「怠惰な者か…もちろん、罰を与えるさ。
国家のために働かないのは非国民だ」
「じゃあどうやってそいつを管理する?」
「管理はできないと思う。
だから罪を犯した者には見せしめで処刑をするのさ」
「シャロ、本当にそんな国家で国民は幸せだと思うかい?
恐らく殺されないために、国民は働くと思う。それにそんな国家は恐怖政治を生むだけだ。恐怖政治を行なうと、いずれは国民の反乱が起きて革命に発展する可能性がある」
「うーん…まぁ、じゃあみんな平等じゃなくても、例えば…格差を減らすために…」
話し続けてると、中年の男バロが2人に声をかけた。
「何をはなしてるんだ」
アングロは、ジャロに言った。
「シャロは、いつものように政治だとか建国の話をしてるんだ」
バロはビールを飲みながらファロに言った。
「シャロ、たまには酒でも飲もうや
酒じゃなくてもジュークでも良い。宴の時は楽しもう、難しいことは戦時に考えればいい」
「僕は…真剣に建国を考えてるんだ…
僕の建国計画の邪魔をするなら、2人とも僕の眼中から消えてよ」
「ち、しゃーねえか」
「お、おう」
2人はシャロの側から離れ、シャロはバッグから、法学の本を出した。
バロは、アングロに言った。
「シャロって頭も良いし、兵士としては立派だけど協調性に欠けてるよな」
「仕方ないさ、シャロは少し内気なんだ。
まぁ、そんな奴も1人2人いても良いじゃないか?」
「ち、まぁ良いけどよ」
シャロは法の本を読んだ後に、エルル・ヴァラダス神話を取り出した。
最高神エルル・ヴァラダスと女神アトロンとの間にできた子供ハジャ。
神の子であるハジャは、地上世界で神の子ではなく、人間として生き、そして地上に現れる魔族から何度も世界を救ってきた。
ハジャは、時に炎神ファーガ、氷神ヒエルコ、風神ヒューズ、雷神ゴロロの力を借り、次々と魔族の支配する国を統治していった。
アリティンティリウスでは、この本が禁書にされた。何故なら魔族を討伐する描写があまりに多く自分達が人間の上位互換とする魔族からすれば良い本ではないからだ。
だが、少なくともファロにとっての数少ない娯楽の一つではあった。
「おーい、シャロ金やるから少し手伝って欲しいことがある」とバロは、シャロに声をかける
「なんだ?まぁ金をくれるなら」
「おう!」
ビールを片手に、カードを持ってる者達、数字が書かれたカードでどのような賭博をやってるのか、気になったシャロは、バロの近くに行った。
「シャロお前は頭が良さそうだから、俺はお前が勝つ方に10アルダ賭ける。」とバロは言った。
「それでもシャロはまだ子供だ、俺はイシダに10アルダ」
「ふひ、じゃあ、ここはファロに100アルダだ!」どんどん賭け金が多くなっていく。
「シャロお前に期待してるぞ」
「このゲームは?」とシャロは少しだけ心を許した少し頭のいい兵士のアズールに尋ねた。
「これはな、5枚のカードを引いて同じ数字のカードが多ければ多いほど勝ちというゲームだ。
例えば1と1があったとする。もし手札に2つの1がある場合、それは"ツーペア"って呼ぶんだ。同様に、3つの1がある場合は"スリーカード"、4つの1がある場合は"フォーカード"って呼ばれる。
同じ数字のカードが5枚ある場合は、それは"オールイン"って呼ばれる。
また、異なる数字のカードが揃っている場合は、それらの数字の中で最も大きい数字を持つ手札が勝利するんだ。
例えば、手札が2、3、7、9、10の場合、最も大きい数字の10があるので、この手札が勝利するってわけだ。」
シャロと参加者のシニルは、束ねられたカードを5枚とった。
「ちなみに、チェンジは2回までだ。」とアズールは言った。
「チェンジは、何枚でも良いの?」とシャロは尋ねた。
「ああ構わないさ」
「オールチェンジだ。」とファロは言った。
シニルは、ニヤリと笑った。
「そんなに手札が悪かったのか?」
ファロは、「シニルはどうなのさ?」と尋ねた。
「フヒヒヒヒ、それはまだ言えねえよ」
「そうか…」
「シニルは交換は?」とアズール
「しないよ」とシニル。
アズールは「では、声をかけるのでオープン!」と言った。
シャロは5枚のカードが揃っていた。
シニルは4枚のカードが揃っていた。
バロはファロに300アルダを支払った。
「よく、やったな」とファロに賭けていたジャロは、大笑いしてた。
「いつかは、もっとでかい賭けをするさ」とシャロはバロに返した。
その頃魔国では。
人間の女性の奴隷が魔族のゴブリンに鞭で叩かれてた。
「おい!女!くそ!」
「痛いですやめてください」
すると、魔王はゴブリンに近づいた。
「ま、魔王こいつは」
魔王は、ゴブリンの全身を引きちぎった。
「大丈夫か?」
「魔王様、大丈夫です…
ありがとうございます」
「むしろああ言った低俗な魔獣には強い罰を与えないといけない。
下等な人間を越えなければ我々魔族の地位も上がらん。
女子供に優しく、そして勤勉な魔族を育成し、世界を暴力ではなく魔族が人間の本当の上位互換となって世界を支配する。
そのために必要なのは、不必要な暴力の排除と必要な暴力さ」
女は言った。
「魔王様、私は魔王様の考え方に魅力を感じます」
「ありがとう、私が目指してるのは魔族上位社会だ。
さて、アグルアニか…次はここを攻めるとするか」
その頃シャロは、何度も連勝を重ね、気がつけばシャロの貯金は10000アルダに達していたが、シャロは国家に貢献したいという気持ちも強く、16歳までは兵士として戦い続けた。そして、彼が16歳になった頃にシャロは兵士を辞めた。
もちろん正式な退職ではなく、シャロは臨時兵となり、シャロは手元の資金で賭博場を開業した。
特にバロが開発と設計をした回転遊戯機は、かなりの収益をあげ、シャロの貯金は1億アルダに達し、国の中でも有数の富豪となっていた。
アグルアニに攻め込む魔獣もいたが、シャロが開発した火縄銃やバズーカ砲で魔獣もアグルアニだけは狙えなかった。
そして、シャロは元手資金を国王に寄贈した。
「良いのか!こんな大金」
「僕は旅に出ます。そして魔族から統治された国家の解放のために動きます。
とりあえずアグルアニから西の方面にあるヒャットコ諸島を目指します。
国王は渋々と了承した。
「大丈夫です。アングロもバロもきっと魔族を討伐できます。
火縄銃さえあれば、この国も安泰です。
それに旅の途中で僕は新たな武器の開発にも着手します」
「なら、君に船をあげよう」
シャロは、アグルアニの船を一隻もらい、ヒャットコ諸島を目指した。