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猫実験

現実ではあり得ない……けれど文なら、人の頭の中なら成り立つ。そんなお話。

 博士は目の前の結果に驚くことなく、真剣に実験結果をまとめていた。


「ふむ、やはり仮説通りだったか。」

 博士の行った実験は、猫トースト装置だった。


 猫トースト装置… …これだけを聞いてピンとくる者もいるだろう。

 簡単なことだ、猫とトーストを背中同士で貼り合わせた装置の名称である。


 え? よく分からない?


 前提条件として、猫は高いところから跳んだとき、必ず脚から着地する。

 そしてバターを塗ったトーストは必ずバターを塗った面が下に落ちるという物理法則を前提にした実験だ。


 では、ここでクエスチョン。

 バターを塗ったトーストを猫の背中に貼り付けたとき起こる現象とは?


 答えは簡単だ。


 博士の目の前で起きている現象。

 それが全てを物語っている。


 猫とトーストがグルグル勢いよく回っているのだ。

 原理は先の物理法則が働いていることに由来する。


 猫は法則に従って脚から着地しようとするし、トーストもまたバターの面から落ちようとする。

 互いの物理法則を同時に満たすため結果は一つに収束する。


 それ即ち、猫とトーストは浮いたままそこを回転し留まるのだ。


 博士はその実験に満足した様子で、椅子に腰掛けコーヒを啜る。目の前では、猫とトーストが勢いよく回っていた。


「なんと面白い。この運動エネルギーを使えば永久的に電力を生み出せる!」


 博士の頭の中ではいくつもの数式が立ち並び、すぐさま新たな実験を行いたかった。


 しかし、博士はふと気付く。


「小腹が空いたなぁ。」


 博士は朝からずっと実験漬けで、かれこれ10時間以上何も食べていなかった。


 たしか、猫トースト装置に使った食パンが残っていたはずだ。

「どれ、一枚食パンでも食べようか。」


 博士はおもむろに食パンにバターを塗って口に運んだ。


 しかし、それを咀嚼することなく博士は口にパンを当てがったまま停止する。


 博士の頭の中には一つの疑問が浮かんでいたのだ。

 (食パンはおよそ1.8cmの厚みがある。そして両面が無地だ。故にこの時点では食パンに裏表は無い筈だ。しかし、私は今バターを塗った。するとどうだろう、バターを塗った方が表になり無地の方が裏になるではないか。)


 博士は、より深く考える。

(いや、そもそも我々は食パンの二面ある内の一面のみしかバーターを塗れない事から、そもそも表側にしかバターを塗れないのではないだろうか?)


 考えれば考えるほど思考がこんがらがる。

 しかし、それが面白かった。


 博士は口から食パンを外し眺める。


(そうだ。 バターを塗った表側のパンを、半分に織り込むと今度は表側が内側になるではないか!)


 博士はこの考えを忘れないうちにメモしようと、ペンと紙を取りに机に向かった。


 するとどうだろう、これまで勢いよく回っていた猫トースト装置が止まっているではないか。


 止まっている。

 即ち猫とトーストが床に落下していた。


 博士は猫の方を見て気が付いた。

 猫が死んでいるのだ。


 そう、猫トースト装置は猫の習性があって成り立つもの。しかし、目の前の猫はトーストとの回転に耐えきれず死んでいた。


 死んでしまえば猫の習性も無くなってしまう。


「ふむ、どうも私の実験も先程までの考えも杞憂に過ぎなかったようだ。」


 博士はどうにもガッカリしながら、猫の亡骸をそっと抱いた。


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