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クローンフィロソフィー

 クローン技術が普及した時代。

 クローン保険なるものが生まれた。

 クローン技術は2000年代初頭からほぼ確立していたが、倫理の観点からその技術は進歩を阻まれていた。

 人が生命を創造する事は神への冒涜であることから、近年までその倫理は崩れることはなかった。

 しかし、倫理観は時代の変化と共に移り変わっていく。

「部分的なクローンを複製する事は、神への冒涜には当たらないのではないか?」そう吹聴する者が現れたのだ。

 つまるところ、臓器のスペアを作り万が一に備えるという事である。

 これがクローン保険だ。


 重要な臓器に保険を掛け複製臓器を培養する。

 値段はセットプランとなっており臓器一つから、可能で、三つ五つと臓器の複製数を選択する事ができる。


 例えば心臓に疾患がある人は予め心臓のスペアを用意しているし、万が一に備えて腕や足のスペアを準備する者もいる。自分の細胞から培養した臓器や部位なので拒絶反応の心配は無いに等しい。


 料金は決して安いとは言えず、富裕層向けのその商品は、富裕層の寿命を伸ばし、より一層貧富の差を拡大させた。


 クローン保険には一つルールがある。

 クローン人間を作ってはいけないというルールだ。

 簡単な話、部分的な複製は許可されているが、人間一人を全て複製する事は未だにどの国からも許可が降りていなかった。そして何よりクローン人間を作る事は出来ても、ある技術的問題があったのだ。


 過去にある国が一度実験でクローン人間を生成した。二十代のクローンで、身体は鍛え抜かれ引き締まった姿をしていた。

 しかし彼はだらしなく無く口を開け涎が床に滴り落ち、目は虚だった。


 そう、肉体という入れ物を用意できてもそこに魂が無いのだ。魂と言うと非科学的であるが分かりやすく言えば経験の引き継ぎが出来ていなかった。

 肉体に記憶が釣り合っていないと言うべきか。

 人は時の流れに合わせて肉体的にも精神的にも成長していく。

 しかし、クローンは違う。

 肉体は二十歳のそれだが、頭の方は産まれたての赤子同然なのだ。そして、精神と肉体の釣り合いが取れないことから彼は廃人の様に化し、ただ呼吸をしているだけの存在だった。

 ならばクローン人間を赤子の状態で生成し育てるのはどうだろうか?と、新たな実験が行われた。

 しかしこれも、最終的に出来上がったのはオリジナルとは似ても似つかない性格、趣味、嗜好を持ったクローン人間だった。

 遺伝子レベルでは全く同じ情報を持っていたが、その時々の経験の違いから異なる成長を遂げ、何より生成から成人に至るまでオリジナルと同じだけの時を刻まなければならないことから研究は打ち止めとなった。

「完璧な人間がいないように、完璧なクローン人間も生成する事はできない」ある権威ある博士が残した言葉は、後の研究者達にも伝わりクローン人間一体の生成を行う者は以降現れなかった。


 そして現在、私はクローン保険で全ての臓器を臓器スペアで補っている。

 私の身体は二十歳のそれで若々しく艶がある。

 私は死を克服したに近かった。

 金がある限りいくらでも肉体の替えを生成し、それを移植する事が可能だ。

 100から先の歳は最早、数えていない。

 

 しかし、そんな私はふとした時に考えてしまう。

 オリジナルの臓器が無い私はいかに自分の複製臓器を移植しているからといって、果たして、私はオリジナルの私と遜色ないと言えるのだろうか?

私たち人間を構成する細胞はおよそ六十兆個と言われている。

そして、細胞分裂を繰り返し一日あたり一兆個の細胞が入れ替わっている。単純計算で2ヶ月もすれば全ての細胞が入れ替わっているんだそうだ。

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