9、マジックアイテムの入手
次の部屋に進むと、やはりスケルトンが一体いた。
さすがにもうスケルトンとは戦い慣れている。剣も持っているし、一対一なら楽勝だ。
スケルトンは俺に気づくと、どたどた小走りで距離を詰めてきた。もう何度も見た光景だ。
次に奴が起こすアクションは、剣を振り上げて斬り下ろすのみ。
それが分かっているからこそ、俺はそれより先に剣を振り上げ、スケルトンの肩甲骨からけさ斬りを叩きこむ。
スケルトンを見事斜めに両断すると、力を失ってがらんと崩れ落ちた。
「よしっ、楽勝」
やはりスケルトン一体程度なら問題にならない。最初は恐ろしかったこのモンスターに何も思わなくなったのは、成長と言えるかもしれない。
とはいえ三体同時はどうなんだろうなー。今なら勝てるのかな。でも三体同時は怖いんだよなー。
そんな事を考えていると、スケルトンの死体が黒い霧へと変わり、マナクリスタルが現れる。
「そういえばマナクリスタルは近づくだけでいいんだっけ」
どれほどの距離まで近づけばいいのかまだ把握してないので、じりじり足を進めていく。
ちょうど普通に歩いて二歩分くらいの距離まで近づくと、マナクリスタルはパリっと砕け散り、中の紫色のマナが俺の体に向かってふわふわ浮きあがってきた。
そのまま体の中にマナが吸い込まれる。
これでマナを入手できた……のかな?
今俺がどれくらいのマナを持っているか、どうやれば確認できるのだろう。
それをアルティナに質問するため、話しかけてみる。脳内で呼びかけるだけでいいらしいが、声を出した方がやっぱりしっくりくる。
「アルティナ、聞こえるか?」
『はい。私はいつもリック様を見守っていますよ』
ありがたい言葉だ。
「今マナを入手したんだけど、どれくらいマナを持っているのか確認する方法ってあるのか?」
『それならば、今後もぜひ私に聞いてください。マナの量を具体的に数値で表すには、女神である私でなければ不可能だと思います』
「そっか、じゃあそうする。今スケルトンを倒したけど、ちゃんとマナを入手できてたかな?」
『はい。先ほどまでマナの総量は1でしたが、今は3になっています』
良かった。ちゃんとマナは入手できているようだ。
こういう確認の積み重ねは大事だ。マナを入手していると思っていたら全く手に入ってなかったとかありえるからな。
『それよりもリック様、先ほどスケルトンの死体があった場所を確認してみてください』
「ん?」
言われるまま視線をうつすと、そこにはなぜか剣が落ちていた。
「あれ? こんな所に剣なんてあったっけ?」
『おそらく先ほどのスケルトンがドロップしたのでしょう』
「ドロップ……スケルトンが持ってた剣を落としたってことか?」
『……正確には、違うと思います。この地下迷宮では、なぜかモンスターを倒すと黒い霧になって消えてしまうようなのです。その際、消え去るはずの死体がごくまれに別の存在になってしまうようですね』
「じゃあこれはスケルトンの死体が別の姿に変化したってことなのか」
『そうなりますね。仮説ですが、このアンブロシアの檻は魔王の呪いによって作り出されているので、魔王やその他多くのモンスター達の記憶が残留しているんだと思います。時折落ちている武器や、今スケルトンの死体が変化した剣は、かつて魔王やモンスター達が人間と戦った際に苦しめられた武器の記憶で、それが具現化したのかもしれません』
「記憶の具現化……作成の能力と理屈は同じって事か」
『ひとまずその剣を入手してみませんか? もしかしたら魔法効果が付与されていて、今の剣より強いかもしれませんよ』
言われるまま、スケルトンがドロップした剣を手にする。見た目はただのロングソードだ。
しかし、その刃がぼんやりと赤く光っているのに気付いた。これが魔法効果って奴なのだろうか。
『やはりこれは魔法効果がついた武器のようですね』
「その魔法効果っていうのは、何なんだ?」
『魔法効果とは、その名の通り魔法が付与されているという意味です。例えば切れ味が良くなってたり、折れにくくなっていたり、もっと凄いのでは武器を道具として使うことで炎や雷を生み出したりできます。これらのような魔法効果がついた武器などはマジックアイテムと呼ばれているのです』
「なるほど。じゃあこのロングソードは普通のロングソードより強いってわけか」
『そうです。ちなみに、より高い魔法効果がついたものはレアアイテムと呼ばれ、他に類を見ない特別な効果が付いた物はレジェンダリーと呼ばれます』
魔法効果の強さや種類によって等級も変わるのか。
この地下迷宮を攻略するには、俺が強くなるほかにもこういった強い武器を見つける必要がありそうだ。
「で、このロングソードはどういう効果の魔法が付与されてるんだ?」
『……多分ですが、炎属性の追加ダメージがあるのではないかと。いわゆる炎のロングソードですね』
「アルティナでもはっきりとは分からないのか」
『私自身は付与魔法に疎いので……もし詳しい効果を知りたいのなら、鑑定スキルを覚える必要があります。しかし私が授けられる鑑定スキルは低レベルなので、先ほど申し上げたレアやレジェンダリークラスの武器を鑑定するのはとても不可能でしょう。知識を司るクリスなら、高レベルの鑑定スキルを授けられると思いますが……』
「……そういえば、他の女神もここに封印されてるんだっけ」
「ええ、私の他に後三人の女神がこの地下迷宮のどこかに封印されています。どうか彼女達を見つけ出し、封印を解いてください。そうすれば、彼女達が持つより専門的なスキルを授かる事ができるでしょう」
地下の最奥に行って呪いの元を立つのが目的だが、その前にまずは封印されている女神達を助け出さないとな。
……いや、その前にスケルトン三体を倒すところからなんだけど。
とりあえず良い剣も手に入ったし、まずはレベルを上げてみるか。
目標を決めた俺は、探索がてらスケルトン狩りを行うのだった。
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