4、茨の美女の正体
あれから、俺は何度か地下に足を運んでスケルトンを倒していた。
その過程で分かったことがいくつかある。
まず一つ。やはり、俺は死んでもあの茨の女性が居る聖堂で復活するようだ。
そして二つ目。死んだ際、入手した松明や剣はどこかへ消えてしまう。
三つ目。紫色のクリスタル、通称マナクリスタルは消えたりしない。
四つ目。地下には武器がランダムで落ちている。全く落ちてない時もあり、その時はスケルトンと素手で戦う羽目になった。もちろん負けた。
今の俺の実力では、剣を拾えないとスケルトンに勝つ事は不可能だ。しかも勝てるとしても一対一。
スケルトンは基本的に一体ずつ出てくるが、例外がある。
それはあの赤いドアの部屋だ。あそこには、確実に三体のスケルトンが待ち構えている。
やはりあの部屋は何か特別なのだろう。
だが、その部屋を避ければ、スケルトンとは一対一で戦えるようだ。
例外は、スケルトンからいったん逃げようとして別の部屋に入った時、そこに別のスケルトンが居た場合だ。これで二回は死んだ。
おそらく俺は、合計でもう十回は死んでるだろう。
しかしそのおかげで、マナクリスタルは結構集まった。
数えてみると、五個はあった。一個で茨の三分の一が焼けたので、五個もあれば十分だろう。
さっそく、俺は茨の美女にマナクリスタルを捧げにやってきた。
「頼む……今度こそ目覚めてくれ……」
そして何か事情を知ってたら教えてくれ。もうスケルトンを倒して死に戻る日々は辛すぎる……。
茨の女性にマナクリスタルを五個近づけると、それらは一気に砕け、紫色の炎だけが吸い込まれていく。
そして、彼女を包む茨が一気に燃え出した。
その勢いは最初の時とは比べ物にならない。
あっという間に茨を焼きつくし、茨の美女は茨から解放された。
やった……!
喜びながら俺は美女に近づく。すると、彼女は薄ら目を開け……今度はパチっと、その美しい瞳を開け放った。
「ああ……封印がようやく解けたのですね。ありがとうございます、人の子よ。あなたのおかげで、ようやく永い封印から自由になれました」
まるで竪琴を奏でるかのような美しい声音だった。
思わず聞き惚れてしまった俺は、はっとして首を振り持ってかれた意識を取り戻す。
「な、なあ、あんたはここが何か知ってるのか? 俺、気が付いたらここにいて、死んでも死んでもここに戻ってくるんだよ……! 何か知ってたら教えてくれ」
茨に囚われていた美女は、驚きに双眸を見開いた。
「そうでしたか……あなたもここに……このアンブロシアの檻に囚われてしまったのですね」
アンブロシアの檻……それがこの場所の名称なのだろうか。
とても、良い響きとは思えない。まるで牢獄のような名だった。
「いいでしょう。ここが一体何なのか、あなたへお話しします。しかし、その前に自己紹介がまだでしたね」
女性は立ち上がる。薄く白いドレスに包まれたほっそりとした肢体が、暗闇の中でくっきりと浮き上がった。
「我が名はアルティナ。力を司る女神、アルティナと申します」
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