3)手練手管
アレキサンダー視点
夕食後、グレースと過ごしていたアレキサンダーは、日中の一幕を思い出した。
「テレンテ・クダか」
アレキサンダーはつぶやいた。忍び笑いのはずが、いつの間にか、哄笑になっていた。
「あぁおかしい」
凍り付いたようになっていたロバートなど、初めて見た気がする。なんとか収めようとするが、笑いが止まらない。
「なにがありましたの。アレックス、そんなにお笑いになるなんて」
グレースが不審に思うのも無理はない。アレキサンダーは笑いすぎて、目じりからこぼれ落ちそうになっている涙を拭った。
「あぁ、グレース聞いてくれ。昼間のことなんだが。ローズがまた、ロバートを振り回して、あぁ、そうか、あれこそがテレンテ・クダか」
アレキサンダーも必死に笑いを収めようとするが、止まらない。
「アレックス、もう、御一人でわらっていらっしゃらないで、教えてくださいな」
「あぁ、ちょっとまってくれ。ローズのせいで、ロバートが哀れなくらいだったんだが」
数日後、ローズはまた、執務室で、周囲を驚かす言葉を口にする。
「ねぇ、ロバート、シュ・チニクリンって何」
周囲は固唾をのんでロバートの様子を窺った。
幕間のお話にお付き合いいただきありがとうございました。
この後も、本編でお付き合いいただけましたら幸いです
こうして、アレキサンダーとグレースは共通の話題を得て、親密になっていきました。
副題 「ロバートを、妻との会話の肴にするアレキサンダー」
「酒池肉林」は中国の故事に由来する言葉です。「肉欲」という意味はありません。
空想上の異世界ですので、ご容赦ください。