1557年-1
誤字報告ありがとうございます。
評価、ブックマークありがとうございます。
また、感想ありがとうございます。
ネタバレにな・・・結婚・・・妻・・・尼・・・ウッ頭が!
年も明けて、殿に新年のあいさつに沢山の臣下や商人がやってきている。
しかし、その中に正月と言うのに大汗を掻きながら挨拶を終えた商家があった。
熱田から来られた、加藤西家の主である。
「熱田はワシに付くか勘十郎に付くか、旗色をハッキリとせねば津島との差は開くばかりぞ」
殿は熱田に釘を刺したのだ。しかもライバルの津島と比べて・・・
津島の商家は関銭免除を有効活用して、美濃との商売で大儲け。
熱田には無いアドバンテージで商売を進めているからだ。
"わしらも食い込みたい"のが本音だが、両方に良い顔をしてきた手前、にっちもさっちも行かなくなってきたのだ。
そんな事を思いながら、お城を後にする。
そして、時を同じくして・・・
「林よ、勘十郎にワシに下るか、戦うか好きな方を選べと伝えよ」
「ケンカを売って来たのはお前達だから、好きな方を選ばせてやる」
新年のあいさつに来た林佐渡守秀貞に向かって、ケンカを吹っ掛けた。
流石は信勝の筆頭家老、顔色一つ変えずに"冗談が過ぎますぞ"と言葉を返す流石はタヌキだ。表情に一つも出さないが心の中は・・・・だろう。
「睦月いっぱいまで待ってやる」
「返事が無い場合は、ワシに歯向かったと見なし討伐する 良いな!」
ピシャリと言い放ち、林佐渡守秀貞を謁見の間よりたたき出した。
「信行、最後の思い遣りぞ」と小声でつぶやくのであった。
そんな事が起こっているとはいっちょも知らずに、甘い生活を送っている小一郎とさき。おかあや旭とも仲良くやってくれているので非常に助かっている。
そんな時であった。
「木下様」と弥七が訪ねてくる。
「六郎殿ではまた」視察に訪れていた蒸留所を後に歩きながら報告を聞く。
報告によると織田信勝様から、信光様・信広様・信清様の間で使者の行き来が非常に増えたと・・・
「戦の匂いがします」弥七殿の言葉に頷き監視を引き続きお願いして、それとは別に弥七殿に一つお願いをしてから、上司の下に。
「村井様、よろしいでしょうか」と話しかけると「丁度よかった、殿所に今から行くぞ」と引っ張って行かれた。
何か問題が起こったみたいだ・・・
「殿、林様の件本当でしょうか!」
村井様が殿に詰め寄る。
何気に厳しい言葉に驚く。
「あぁ、言った」
「下るか、戦うか好きに選べと」
「はぁ~・・・殿はどうお考えなのですか?」
「新しい領地もまだ落ち着いていないのに」
「領地の安定はお前たち親子に任せた!」
「それで、相手も味方も今は動けないから、高飛車に出たと思わせて本当に動く!」
「増員の訓練も間も無く終わると、報告を受けている」
「訓練が終わり次第、末森城を攻めると見せかけて青田刈りだ」
「それと熱田を占拠!我が勢力下におく」ニヤリ
「条件次第では我が方に付くでしょうが・・・」
「小竹!案を出せ!」
行き成り連れてこられて、無茶振りですか!と少し不機嫌になる。
・・・
・・・
・・・
チーン!
「殿、献策します」
「うむ、申せ!」
「熱田への条件ですが、美濃への関銭免除だけでなく津料の減額も条件に挙げて見ては如何かと」
「勿論、津島の津料も一緒に下げます」
「そして、佐治家を取り込んで伊勢湾の海上輸送にかなりの変化を起こしましょう!」ニヤリ
「勿論、津料は下げてもらいますが」と付け加えて話を終わる。
これで伊勢湾を事実上内海化して、各地からの船便を増やし人・物・金の流れを海上にも作る、そして特産品を堺に売り込みを掛けたいと青写真を描いているのである。
(まずは六郎殿からだな)
殿は控えている者達に意見を聞き、基本路線がまとまると・・・
「殿、ご提案があります」
ビックと反応する殿。
今までの空気が変わり、場に緊張感が走る。
おかしい、当たり前の事しか提案したことが無いのに、解せぬ。
「殿、東美濃でも儲けましょう」
「そんな事は皆考える事だ」と反論が返って来るが、次の言葉を聞いて絶句した。
「犬山を電撃的に落としましょう」
・・・
「大義名分など後からどうにでもなります」
「事実、味方では無いと言う事です」
「末森城を攻めると思い込ませて・・・」ニヤリ
えげつない作戦に全員が絶句している。
それと、別の狙いは信光様・信広様に味方に成らなければ潰すぞとアピールする事である。敵対しないのなら良いではないかと、そんな甘い考えでは通らない今は戦国ぞ!
ただ、この案は全員一致で却下された。解せぬ。
如月になったが、信勝様からの返事は無かった。
弥七殿からの報告では、怒り狂った林殿が主戦論を唱えそれに柴田様を始め皆様が賛成をしたそうだ。
末森城は籠城の準備を急いでいるそうだ!
そして、我が軍は常備軍1000人を出陣させて、熱田を占領支配下に置く。
「ここに至っては仕方なし」と熱田が軍門に下る。そして熱田防衛の為に防御施設を突貫工事で建設、末森方の奪還に備えた。
末森方の弱点を抑えた殿は蜂屋様と1000人を守備に残し清洲へ、そして何時もの様に青田刈りに精を出す。
熱田を抑えたので、末森方の物と金の流れが非常に悪くなるし抑えの兵を置いたおかげで、末森方は出陣できない。
スキを突かれて城を攻められるのを恐れているからだ。
そんな状態が一月ほど続いたある日!
「弥七殿よろしく頼む」とお願いして送り出す。
「ダメもとで」と呟く小一郎。
殿は今回の対末森戦をワザと持久戦にした。
城は攻めないが経済的に末森方を攻める、常備軍でなければできない戦術で攻撃を仕掛けていくのである。
そして、常に末森方の領地を青田刈りをして下らせる作戦だ。
因みに「鬨の声を上げる事も効果的ですよねぇ」と遠回しに言ってみたが、犬、市の目の下のクマがひどい顔は見たくないと却下された・・・兄弟には矢張り甘いですね。まぁ、死者が出ないので非常に良いのですが・・・
そして、この効果を知った時にはもう打てる手は無いのである。
そして卯月に入った頃であった。
大量の農民が荷物を持ってやって来る。そう、卯月に始めた農民獲得作戦が形になったのだ。
このままでは食べるものも無い、作付けしても直ぐにボロボロにされるこれでは餓死を待つだけだった。そんな時に殿様の領地では農民募集中で、すでに作付けしている分をお願いしたいと触れ回る人々がいた。
そう弥七殿達である。
最初は半信半疑であったが、常備兵兼屯田兵が植えた作物を任せる人々を募っていたのだ。
そして、こんな状況を二ヶ月耐えたが我慢の限界を超えて、末森方の農民たちが話を合わせて引っ越しをしてきたのだ。
中には、村ごとの引っ越しもあったほどだ!
「出陣せよ」
「我が領民を守れ!」
その話を知った殿の果断な処置で内藤様・平手様率いる常備兵1000人が出陣!末森方も離散を止めようと出て来るもボッコボッコにされて、尻尾を蒔いて逃げたのであった。
「殿、最終局面かと・・・」
佐久間様が申し上げると「うむ」と一言だけ言って、後の采配を佐久間様に委ねた。
佐久間様は、兵を進め末森城を囲み城の出入り口に障害物を設置、敵方の奇襲を封じて城攻めを・・・しなかった。
囲んでいるだけ、無理をすることは無い。
後は実が熟すのを待つだけであった。
(なお、僕がやった方法は今回に限り禁止されていた)
一月後・・・
その頃、末森城内では「キィキィ」と土田御前がヒステリックに叫んでいたが、城内は重い空気が充満していた。
身から出た錆なのだが、次男を焚き付け続けた結果城まで囲まれたからだ。
そんな事はお構いなしに、信長が悪いとか、信広、信光の援軍はまだかとか、好き放題言い放つ。そして、それを虚しく眺める信勝様がいた。
兵の士気は上がらず、此方から打って出る事もかなわず、脱走兵が後を立たず・・・
「此処までか」
悲壮感を滲ませながら呟く。
「まだです。林や柴田の援軍が来ます」
「勘十郎殿!」
土田御前が元気づけようとするが・・・林・柴田両名も領地をボロボロにされて援軍どころでは無かった。
「やはり、これまでか」
「兄上に使者を・・・」
家臣達は悔しさを滲ませ打ち震えている。
表情が全てを現していた。
満足に戦にて雌雄を決する事も無く、ただ一方的に押し潰されたからだ。
しかも戦以外の方法で、最後には城を囲まれたがその時には既に勝敗は決していた。
信勝が呟く「こんな戦は兄上しか出来ないであろう」と。
そして、織田信勝は降伏の為に使者を送るのであった・・・
殿は信勝様に降伏文書を書かせて、信勝方の諸将に降伏するように促す・・・と柴田様を始め一人を除いて全て降伏した。
それは信勝様の筆頭家老の林秀貞様・通具様の兄弟であり、殿は直ぐに包囲を命じ、小一郎立案の作戦を実行するように指示、そして降伏は「許さない」と言明する。
この時の殿はヤング第六天魔王モードで怒髪天状態であった。
そして、最悪の事態を回避する為に僕は動き出した。
信勝様の領地に役人を送り込み、忙しい中何とか時間を作り、殿に面会を申し込むも全て却下!もう何回申請しただろう?と思っていると、小姓から「誰とも面会していない」「部屋にこもって出て来ない」と聞き強硬手段に・・・
「殿!小一郎でございます殿!殿!」大声で叫ぶも反応が無い・・・
「失礼します」と強行突破と共にバチンと扇子が額に当たる・・・
「摘まみ出せ!」
ヤング第六天魔王モードの殿が鬼気迫る表情で迫ってくる。
小姓はあまりの迫力で動けないが僕が負ける分けが無い、社畜をなめるな!
「殿!ご提案がございます!」
目を見据え大声を上げる、それはまるで邪気を払う為に見えた。
「殿!」「殿!」
グイグイ突っ込んでいく!
殿はヤング第六天魔王モードのままだが・・・
ギロリと睨み付けられるが、どこ吹く風と受け流す。
「ご提案がございます!」
再び、眼を見据え力強く言葉を発す・・・すると・・・
「言え」
ぼそりと言葉を吐いた。
なにかを諦めた見たいに。
「ハッ、武将織田信勝様には死んでもらいます」
ギロリと殺気が飛んで来る。今にも刀を抜き切りかかりそうだ。
「そして、ただの信勝として余生を過ごしてもらいます」
「そんな事は考えた、またすぐに母上が担ぎだす事だろう」
目が血走り、眼の下のクマが疲れを表している殿が、絞り出すように言葉を絞り出す。
「ここからが、ご提案です」
「信勝様と土田御前・奥様・お子様・その他信勝様を慕う方々は・・・・・・島流しにします」
「!?」
「そして、そこで余生を過ごしてもらいます」
「既に、場所と屋敷は手配して有ります」
「後は殿の御許可だけです!」
殿は身内に甘い、それは土田御前に愛情を注がれなかったためであろう、しかし纏まり掛けた尾張を織田家を再び内乱にさらすことは出来ない。
「殿、ご許可頂けますか!」
「よきにはからえ」
殿は静かに言葉を絞り出す。
ただ、疲れ切っていた殿の顔が柔らかくなったのを確かに見て、その場を後にする。
「あ奴は言い出したら止まらんな、爺の目は確かであったか」と独り言をつぶやくのであった。
それから、木村屋に向い例の場所への船の手配とついでに例の物も買ってきてもらう。
それと、一年間の食料とか日用品の諸々準備を頼み、出航日は一月後で頼んだ。
其れに間に合わせる為に、村井様に叱られながら仕事をこなすのであった・・・
(事後承諾はダメですね・・・トホホ)
無事、出航しましたねと村井様と見送りこれで織田家最大の懸案が片付いた。
因みに、信勝様はただの信勝として生きる事を、兄に感謝して最後の対面を終え、母である土田御前とは会わなかったそうだ。
「因みに、島流しはどこの島だ」
「はい、八丈島です。」
僕の説明に、なんでそんな所知ってるんだと疑問を持たれたが、華麗にスルーして港を後にした。
その後の顛末になるが、柴田様を始め信勝様の家臣の多くは殿に仕える事に。
勿論受けてもらいます。教育プログラム!武士にそんなの関係ありません!新制織田家には、武士のプライドを振りかざすものなど必要ないのです(エッヘン)それと、柴田様は重臣に迎えられ今後織田家の先陣を任される、掛かれ柴田が誕生したのである。
それから、今回の戦いを傍観していた信光様、信広様、信清様(犬姫と婚礼)は臣下の礼を取り一門衆に。
条件は、関銭の廃止と3公7民の年貢の受け入れであり、三者ともそれを受け入れたのであった。
それから、林様達が籠城戦を頑張っていたが20日を過ぎた頃だろうか、味方に錯乱者が出てあえなく二人とも命を落としたのであった・・・24時間は戦えないよね。
これで、織田家を統一する事が出来て、尾張の国をほぼ手中に収めたのであった・・・
つづく。