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1554年

誤字報告ありがとうございます。

「お前達など必要無い、すきにしろ!」


殿の罵声が大広間に飛ぶ。

知多の水野様からの援軍要請で、集まったが好き勝手しか言わない信行様が寄越した林兄弟に嫌気がさして追い出した所だった。(多分、戦う気は無かったのであろう)

明日は我が身だって事が解らないみたいだ。


それにしても殿も色々としていたみたいで、今川方の武将の水野様を寝返りさせていた。

そして、寝返りに対して今川方は出兵して来たのだ。


「では、後を頼む」


殿は信光様と援軍に向かった。この戦いが村木砦の戦いである。

それで、僕は・・・・・・清洲城にてお留守番である。




「お邪魔するよ」


「平手様、ご無沙汰しています」


「ご助力かたじけない」


村井様が留守居役を任されたのだが、不穏な動きが有る為に隠居されている平手様を清洲城の守りの手伝いに、古渡城の守りに佐久間様を配置して万全の体制を敷く。

何も無しに済めばよいのだが、普通に考えれば殿と敵対している勢力同士が手を結んだ可能性が高いので兵士もかなりの数が守りに付いている。

殿は常設軍を率いていて練度も高く手足の様に動くので、凄く喜んでいた。普通の兵(農民中心)では殿に付いて行けないからだ。

ただ、敵影を見る事なく終わった。


その頃殿は、異様な強風の中無理やり渡海して今川家の村木砦を落とし勝利したが、かなりの激戦で小姓や兵士に死者が多数出たのであった。




「村井様、提案が"ギョ!"あります」


何故か驚く村井様、解せぬ。

すると結局は殿の近くまで行って話をする事に。


「常備軍と役人見習いの増員をしませんか」


「ふぅ、その事か」


何故か三人(殿、佐久間様、村井様)とも安堵の表情に。


「常備軍の増員は佐久間が中心に動いている」

「増員は、急務だ」

「ただ、役人見習いは今の人数で大丈夫ではないのか?」


「はい、今の領地だけを考えると大丈夫ですが。領地が増えた時に、役人不足で統治出来ないのを防ぐ為です」


・・・・・・腕を組み暫く考え込んでから。


「そうか、転ばぬ先の杖というやつだな」


「それとですね」


“ギック”と三人に緊張が走る。


「報告が上がって来たのですが、農民が足りません」

「常備軍を屯田兵にして開墾しまくったので、農家の次男や三男を独立させたのですが、足りません」

「商人を通じて、奴隷を購入する許可を頂きたい」


「うむ、そうか人手がな・・・良し全て許可する!後は村井と相談して進めるように」


「はっ、有難うございます」


その後、村井様に相談をして100人程募集を掛ける事に、日時は佐久間様と相談して常備軍の募集と同じ日としたのであった。

それから、募集の準備に忙殺されたのは言うまでも無かった。


その頃、美濃までの道を補修している工作兵200人に、色々な試作の道具を与えている。

それは、鶴嘴と一輪車と整地用のタコである。

これらの評判がよく、大量生産の必要性が出て来たので工作兵の中から、選抜して生産部を作った。

この生産部が、小一郎の無茶ぶりに応えて、色々な物(特殊な物でない)を大量生産していくのである。

そして、事後報告で工作兵も100人増員の募集をするのである。


しかし、我が織田家の領地は見違えるように変わりだした。

この戦国時代に道を整備して、通行を良くするなどもっての外の考えで、敵に攻められる事を考え最低限にするものを立派に作り変えている。そして一部だが関銭の廃止と他の国人領主とは明らかに違う動きをしているからだ。

(関銭は3年を目途に廃止を考えている)

これで、商売が盛んになり、人物金の行き来が増えると領地が豊かになり、自然と収入も増える事となるがその道筋が見えて来た所である。

まぁ、全ては津島が有る為に出来る事であった。

尾張の経済の中心地は津島と熱田であるが、熱田は殿と信行様の両方に旨い事距離を取っているから、自然と小一郎の施策も津島中心になるのである。


そんなこんなで、日々忙しく走り回っていると文月に入り尾張国内に激震が走る。

それは、守護代・織田伊勢守家(岩倉織田家)に身を置いていた守護の斯波義統の息子(斯波義銀)が信長を頼りに落ち延びて来たからだ。

話を聞くと斯波義統が殿に付くと噂話が囁かれ暗殺されたのだ。

たまたま、城外にいた斯波義銀は家臣が駆けつけて落ち延びて来たのであった。

しかし、棚から牡丹餅で相手が勝手に墓穴を掘り、織田伊勢守家を謀反人として糾弾する大義名分を手に入れた。


そして、事態が動き出す。


「良い案は無いか」


呼び出された重臣達が頭をひねる。

呼び出されたのは、佐久間様、内藤様、蜂屋様、村井様、平手五郎右衛門久秀様(平手家跡継ぎ)に僕であるが・・・解せぬ。

ただ僕に発言権は無い。


「・・・・・・」


上尾張を治めるだけあって、簡単に倒せる相手ではない。

そして、殿はせっかちな性分で一気に勝負を付けたいと思っているから良案が出ない・・・

イライラして落ち着きが無くなる殿、ピーと頭から湯気が・・・

あっ・・・目が合った・・・ヤバい・・・


「小竹ぅぅぅぅぅ」

「良案を出せ!」


ヤング第六天魔王モードの殿が怒り狂っている・・・困った。

心配そうに僕を見つめる村井様と平手様。

唇を噛み締めて。


「献策させて頂きます」


・・・・・・・・・静かに息を吸い込み。


「当家と織田伊勢守家との戦で、現時点で勝ち切るのは無理でございます」


「なんだとぉぉぉ」


怒気と共に、扇子が飛ぶが・・・


「そこで・・・」


目を見据えて、一呼吸おいてから話し始めた。


「常備兵の最大の利点を生かして、相手の徴兵の難しい時期に戦を仕掛け相手の生産力を削いでいき、時間を掛けて立場を逆転させるのが良いと思われます」


「具体的には?」


「青田刈りです」

「上尾張の収穫をボロボロにして、ついでに離反農民を手に入れます」


"農民足りませんから"と付け加えた。

奴隷を他国から買うより、自国の離反農民を手に入れるほうが、おてがるだからだ。


そして目がキラーンと光り、小一郎の雰囲気が変わる何時もの無茶ぶりモード発動。


「殿、提案があります」


何時もの言葉に、平手様以外の殿と重臣方の表情が一変する。


「な な な なんだ」


動揺するノッブ。


「農民の税率の6公4民を3公7民にしましょう!」


「「「「「なんだっでぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」」」」」


「小竹ぅぅぅぅぅぅぅぅ!」

「何を考えているぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」


ノッブの怒号が飛びヤング第六天魔王モード再起動だ、村井様も首を横に振っているし他の4人は魂を抜かれていた...

それでも、僕は冷静に殿を見据えた。


・・・・・・

・・・・・・

・・・・・・


そしたら、諦めて・・・?

(社畜は伊達じゃ無い)


「考えている事を申してみよ」


「はい、では・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・と言う考えなんです!」

「状況が変わった今が攻め時です」

「是非!」


考え込むノッブ。

驚きの余り口をパクパクさせている、内藤様・蜂屋様・平手様。

筆頭家老として、答えを出そうと頭をフル回転させている佐久間様。

そして、何かを考えている村井様がいた。


「佐久間、どう思うか!」


「恐ろしい、提案と思います・・・がこれでは収入が少なすぎるのでは無いかと」


「具体的には?」


「これからの検討としかお答え出来ませぬ」


「うむ、そうか」


「村井はどうか」


「はい、4公6民だと支障が無く大丈夫かと・・・」


「そう思うか、では・・・・・・無理そうだな」


村井様のあとに話を振られても答えようが無いので、3人は必死で首を振っていた。


「では、我が領地の年貢は4公6民とする、ただし隠し田は認めない厳しい処分を課すと領民に伝えよ!」

「ハッ!」


その後、作戦を煮詰めてからお開きとなったが、その後重臣方全員に責められたのは仕方のない事だった・・・トホホホ。


ただし、いきなり起こった大事(おおごと)を、最大限に生かす方法と僕は思っている。

そして、物事が一気に動き出した・・・そして織田伊勢守家との雲行きも一気に悪くなっていくのであった。


鬼のような忙しさの、選抜作業を終えて、常備兵が2000人に工作兵が300人・役人が150人に増員、今から鍛え直しである。

特に常備軍のスパルタは凄いものだった。

一月で精鋭に育て上げたのである。

中核に先輩常備兵がいたおかげであった。


そんな中時間を無理やり作り、養蜂の採取と美人水制作を各村に実践!疑いながらも協力してくれた村人達には、やってよかったと喜びの笑顔があふれ、反対に取り組まなかった者達の後悔の色がハッキリと別れたのが面白かったし、来年は全ての村人が養蜂と美人水作りを行うとの事、養蜂は2群まで美人水の苗も3株までと取り決めをして全て丸く収めたのであった。(無理やりです)

そして、ホクホク顔で帰っていく大橋屋さんがいた事を付け加えておこう。

これらの地場産品の育成がうまく旨く行くと、堺から商人が来るだろう。すると増々良い流れになっていくだろう。




「おかあ、帰ったぞ」


久し振りに、中村に帰って来た。

親不孝?者で滅多に帰ってこないが、帰ってきたらおかあと旭がとても良い笑顔で迎えてくれるので帰るだけでうれしくなる。

ただし、旭はお土産が嬉しいみたいだが・・・

そして、おかあから兄者の話を聞いた。


「藤吉郎が末森様のお城で雇われたと、この前ふらっと立ち寄った時に言っとった」

「一応、小一郎にも伝えておこうと思ってね」


「そうか、兄者が末森様の所に・・・」


この先の事が判っている、僕からすると何とも言えないが要領の良い兄者の事だ死ぬことは無いだろう。そう思いおとうが帰って来たので話題を変えたのであった。

その後、久しぶりの家族団欒を楽しんだ小一郎であった。




つづく。


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