1572年-1
誤字報告ありがとうございます。
新年を迎えて...織田家は忙しすぎた。
小一郎のやらかした"蘭奢待の切り取り許可“は、次の天下人を織田信長様に決めたという朝廷の意思表明にとられて、今まで交流の無かった諸大名家や国人領主までが新年のあいさつに使者が訪れている。
また武田家とは雪の為に休戦状態となり、対今川家に全力で当たらなければならないのだが...
そんな中、小一郎は各商人達に4国同盟にたいして通商の禁止を発表(昨年末)して嫌がらせをするぐらいしか出来ていなかった(対外的に)。また後に知ったのだが、その事で上杉様が清酒が手に入らないと知った時の落ち込み方は凄かったらしい(饗談報告)
そしてその間に小一郎達木下組は殿や佐久間様了承の下で常備兵に役人の募集に始まり、先の武田家との戦の補給物資調達などの補充や代金の決済にこれから起こる遠征の費用や、その他諸々の算出などに追われているのである。
そんな中だが、不意に手を止めて今後の戦略を考えてしまうと"う~ん"と声が出てしまう。
攻め手が無いのである。
信濃に攻め込むと...織田家は大軍である為に補給が不安になる。いや不安しか無い。現地調達などでは足りるはずも無く、尾張国からピストン輸送をする事になる(だろう)。そうなると確実に補強部隊を襲撃してくる(筈だ)。そして補給部隊に守備兵を付けても無駄であろう。すると必然的に敵国内で補給不足になる織田軍の先は想像に難しく無い。そんな状況で今川家が大動員をかけたら...武田攻めはいまの段階では無理と答えが出てしまうのだ。また今川家(三河国)に攻め込むと三河国は平定出来るだろうが、信濃国と国境を接してしまう。すると今川軍・武田軍の両軍を相手に三河の地で決戦に...勝てる見込みがない武田軍が強すぎるからである。(今川軍も精強である)先の戦いでは、全ての条件が重なり撤退させることが出来たが、そんな事を次も望むのは無理であろう。
此処に至ってはひたすら守りの一手で、チャンスを待つしか手を思いつかないのであった。
しかしそんな時に小一郎の下に書状が届く、それは尾張国の九鬼君からで...例の物が出陣可能となりました。つきましては至急尾張国までお越しください!と書いてあり、その書状を読み「よし」と小声を発して渾身のガッツポーズをしたのは秘密である。
「殿、ご提案があります!」
そう言って、ダークでない小一郎と九鬼君が神妙な顔をして殿の言葉を待っていた。
それは睦月の末頃、清須城の殿の私室での事であった。
「何か、面白い事を思いついたな」(ニヤリ)
"はっ!"力強く返事を返した小一郎は、提案の説明に入る。
「まず対今川家対策ですが、攻め込むことはせずに守りに徹して頂きたいと思います。今川家も無理をして攻め込んでくる事は無いでしょうから、暖かくなるまで待ちの一手です!
(暖かくなっても待ちの一手ですが!と心の中で囁く)
そして本命は、九鬼澄隆殿が中心となり建造していた鉄甲船(三隻)を「出来たのか!!!」旗艦として織田水軍を出陣させて、畠山様と雑賀衆に止めを刺したいと思っています。
あっ...そのついでに瀬戸内の東側から伊勢湾までの海を織田家の内海とする様に、各所に脅迫をしたいと思っています。
・・・・・
如何でしょうか...」
「....暖かくなるまで待つと、今川家と武田家はどうするのだ?
このまま黙って見ているとは思わないが」
「はっ、殿のおっしゃる通りだと思います...が
武田家は現在、雪の影響で動けない為、手を出せませんし手が出ませんが暖かくなると動き出すでしょう。しかし武田家が攻め込んでくるのは東美濃です。今回降伏した遠山家の面々に第一次防衛線を張ってもらい時間稼ぎをしてもらい、それで遠山家の忠誠心を計りたいと思っています。(ニヤリ)
それに伴い我が軍は前回と同じように国境沿いに展開、今は足止めをする事を一番と考えています。
また、今川家を攻略しようとも考えましたが、冬場では川が渡れません!
具体的に言うと、今川方が西三河を捨てて矢作川を防衛線として守備に付かれますと攻め手に欠けます。
それに兵達に冬場の川を渡れとは命令が出来ません(僕は)
今川様はもし織田軍が攻め込んだ時には、背に腹は代えられないと考え最終的に西三河を捨てる覚悟をされると手も足も出ませんし、自分ならこの防衛戦を選択するので暖かくなるまで待つ事を選択した訳です。ですから東を攻めると見せかけて、西側のうるさい雑賀衆の息の根を止めたいと思います。
(暖かくなっても今川家を攻略する事はしません、殿、ごめんなさい!と心の中で謝るのであった)
宜しいでしょうか?」
基本戦略を話て、少し嬉しそうな殿を見る。
勿論、殿が喜んでいるのは鉄甲船が完成したからだ。
あっ!
「殿、乗船して戦場に出るにはお控え下さい。
いいですね!
・・・
・・・
・・・いいですね!」(怒)
「わっ わかった」
小一郎にとても強く念を押されて、“くっ“と少し悔しそうな殿がいたのであるが...気を取り直しその他の打ち合わせをして退席をしたのであった。
其処からの小一郎は、伊賀衆(服部様・藤林様・百地様)と津島商人に始まり熱田商人に伊勢商人の代表と立て続けに会談をして「此処だけの話だが...」とある事ない事をボソッと話したのである。
そして、織田家が対今川家に全兵力で攻め込むという話が、織田領内から関東にまで広がったのであった。
噂が広がり始めた頃に、小一郎と九鬼君は九鬼殿や佐治殿と集まっていた。そして戦略と狙いを話し織田家の内海を確立出来る様にお願いをして、細かい段取りは任せたのである(水上戦は専門家に一任)その後、小一郎と別れた三人は各自本拠地に帰ると静かに出陣して行く、其れは日ノ本の水軍史を塗り替えるものであった!
出陣を見送ったあと気になるのは、今川家の動きである。
饗談と伊賀衆の報告では、噂話を信じて動員の準備をし最大兵力で防衛線を構築する準備に取り掛かったのである。
「今川家も、本気ですねぇ」
口角が少し上がった小一郎が呟くと。
「では、次の手に行きますか」
そう呟くと、ぶらりと清須城から熱田へ・津島へ買い物に行き「此処だけの話だが...」とある事ない事をボソッと商人達に呟いたのである。
それは、織田家が兵力を動員して今川家を攻める事は現在の状況では出来ない(守りを固めるのみ)と触れ回ったのであった。
そして、その話は木下小一郎殿が話されたのだが...と商人達の噂話に、今川家の忍びに話が伝わり本国に届けられ疑心暗鬼に陥る。
小一郎の呟きに振り回される可哀想な今川家であった。
如月末頃
「ふむ」
殿が上機嫌で書状を眺めていた。
その内容は、織田水軍が熊野水軍(堀内家)を戦う事なく降伏させた報告であった。
九鬼君が 織田水軍の鉄甲船の初陣の成果を殿にお伝えするべく使者を送ったのである。
小一郎の下にも、伊賀衆からの報告は来ていたが報告は控えていた。そして伊賀衆の報告によると、織田木瓜を掲げた三隻の黒鉄の城(船)を中心とした織田水軍が熊野灘に到着した時には、堀内家は大混乱に陥った!織田家とは先日の勧誘を断った事で戦にはなっていないが関係がギクシャクしていたからだ。
そんな時に、見た事のない黒鉄の城(船)が来襲したのである。
いや、三隻の黒鉄の城(船)を中心とした船団が来襲したからである。
鉄甲船襲来を突き付けられた当主の堀内殿は激しく動揺、先の時に織田家に下って居ればと激しく後悔をしたとの事、そして、九鬼君が行った降伏勧告を受諾、織田水軍の一翼を担う事となったのであった。
この報告を聞き小一郎も思った。いきなり見た事のない黒鉄の城(船)が三隻も攻め寄せて来るのである。しかも船団を率いて!こんな事態なろうとは想像もしてなかったであろう。そんな事を考えながら小一郎は他人事のように堀内殿を不憫に思うのであった...
弥生上旬
織田水軍が熊野水軍を引き連れ船団を出発させた頃、尾張国に滞在中の小一郎の下に弥七殿が報告にと打ち合わせに訪れた。報告によると、小一郎の蒔いた噂話に今川家家臣団が疑心暗鬼に陥っているとの事であるが、最終的に現在の防御をそのまま維持するみたいであった。
この噂話での小一郎の狙いは今川家対応を見るのと戦費や食料の消費であり、肝心な時に予算などを捻出できない様に意地悪を仕掛けたのであった(笑)
そんな小細工を行っていると、織田水軍と雑賀水軍の戦が始まると早馬で知らせて来たのであった。
その後、小一郎の下には服部殿からや伊賀衆から幾一状況の報告が上がって来る。
報告によると、織田水軍(織田・九鬼・佐治・熊野からなる水軍)に阿波水軍(三好水軍)が合流し戦う前から勝敗は決しているような状況だったが、雑賀水軍は勇猛果敢に襲い掛かって来た。
それは、水上戦は数でするものではなく船乗りの腕で勝敗は決まる事を教えてやる!とばかりに有利な潮の流れに乗って攻め込んできたのである。
そして、まるで秘策があるみたいに織田水軍の鉄甲船に襲い掛かって来た!それはクジラに襲い掛かるシャチの群れの様であり、統率の取れた見事な動きであったそうだ。
ただ悲しいかな、織田水軍には強力な武器が装備されていた!その武器(狭間筒)が轟音×5と共に火を噴いたのである。滝川殿にお願いして三隻の鉄甲船5人ずつ射手を乗り込ませている(勿論、船酔いしない様に訓練済み)
波で揺れる船上からの射撃である。なかなか当たる筈はない...が自分達の横を鉄砲の弾が空気を切り裂いていくのだ生きた心地はしなかったであろう。そして自分達の武器の射程外から一方的に殴られるのである。たまったものでは無かった。そんな現実の中であっても一縷の望みを掛けて攻め寄せて来る雑賀水軍、決死の思いで鉄甲船にあと少しで肉薄する地点ま近づくと...パンパンパンと織田軍の少音型の鉄砲×5や弓矢が激しく降り注ぐ様になり雑賀水軍に多数の死傷者が出始めるが、しかしそんな事を気にせずに一気に突撃を敢行した!それはまさに特攻作戦だ。
肉薄した雑賀水軍の船上では、ハンマー投げみたいに何かを振り回していた!そう焙烙玉であった。
史実では、瀬戸内水軍が主に使用していたと考えられる武器でるが、雑賀水軍も装備していたのである。そして、織田家の鉄甲船を打ち破るにはこれしかないと準備をしていたのであった。
その様子を見ていた、九鬼殿達は...
「焙烙玉を投げさせるなー!!!!」
鬼気迫る迫力で指示を出し、投擲者を狙い撃ちにして行く。
しかし、全ての焙烙玉を防ぐことは出来ず...九鬼殿の乗船する鉄甲船の舳先に焙烙玉が投げ込まれた!
バッゴォォォォォン
轟音と共に船首で爆発、死傷者が数名でたが船体に異常は見られなかった。
「この船すごいな」
小声で呟くと、雑賀水軍を近づけない様に次々と指示を出していくのであった。
其れとは別に、雑賀水軍は決死の覚悟で攻め込んで乾坤一擲の焙烙玉が効かなかったのである。その事で急速に戦意が萎んでいくのを感じていたのである。
両軍が入り乱れた激闘は時間にして二刻が経とうとしていた時に、織田水軍では待望の雑賀水軍には絶望をもたらす事が起こった。潮目が変わったのだ。今まで雑賀水軍に有利に流れていた潮だったが織田水軍が優勢と変わり九鬼君は此処に来て温存していた阿波水軍と熊野水軍を投入一気に攻め立てたのである。そしてそこからはワンサイドゲームで、雑賀水軍の壊滅をもって勝敗は決した。
結果として勝利を掴んだがこの戦は完勝ではなく、決死の戦を仕掛けて来た雑賀軍に織田水軍も多数の死傷者を出したのであった。ただし織田水軍の作戦成功で雑賀衆の未来は確定した。
其れとは別に、今回の戦で予想通り火薬を使わない種子島(少音型)が非常に有効に仕事をしたのと、狭間筒用に火薬を一発分づつ分けたうえに、油紙などを使っての海上戦対策にも成功したの事を付け加えておこう。
卯月下旬
「お待たせしました」
遅くなったことを詫びながら、服部様が到着して全員が揃う。
「では報告を聞こう」
小一郎の言葉で始まった。
ではと言って百地様が話を始める。
「家の手の者が入手した書状じゃ」
そう言って一通の書状を取り出した。
その手紙の送り主は、足利義秋様であり相手は丹波国の大名である波多野氏であった。
内容は簡単に言えば、我の味方をして武田家と一緒に織田を攻めよである。
遠交近攻作戦で、戦をする事の理にはかなっているのだが...
そしてここに参加しているメンバーは一人も驚かない。ただ冷静に現実を直視して現実的に波多野家が織田家と一戦を交えるのか?その事を冷静に考えているのだ。
小一郎の考えは戦の最初の時点で参戦していないのに、今更そんな事をするはずはない。と結論付けている。ましてや丹波国の波多野家・赤井家との関係は良好である上に、織田家は丹波国を経済的に侵略しているのだ。目には見えないが織田家と事を構えると塩などを始め生活必需品の供給が止まり短期的には問題がないが、長期的には立ち行かなくなる。他国から丹波国に入って来ていた商人達は良い物が安く販売できる堺商人・近江商人との競争に敗れて撤退しているからだ。それは丹波国だけではなく大和国(中南部)や紀伊国の一部に播磨国の西部にも及んでいる。
織田家と友好的に関係を持つと、良い物が安く買えるようになる為に最初は喜んでくれるが、気が付いた時には首根っこを押さえられているのである(ただ、この時代の武士達がその事に気が付いているかは不明)
そして、それは今の武田家が直面している問題でもあった。
足利義秋様を旗頭として、戦を起こした武田家は其れまで友好国として織田家から米に塩を始めとした生活必需品を安く購入していた。それにともない甲斐の商人達は熱田・津島商人との競争に敗れ生き残る手段として熱田・津島商人が取り扱わない物を商売の生業の主力として生き残ったそんな状態なのだ。武士は注文すれば手に入ると思っている事だろうが、もう後の祭りである。
これから甲斐信濃国では品不足で塩などの価格高騰がはじまるいや、始まっているであろう。また駿河商人や越後商人達から購入できたとしても、需要と供給のバランスが崩れて価格が高騰!今川領や上杉領・北条領をはじめとした隣国では民達の生活が苦しくなると思われる。
話を元に戻そう話し合いの結果、波多野家は動かないであろうと意見が一致した。ただ、足利様の事だから、波多野家だけでは無く手当たり次第に書状を出していると考えられるので、各方面に注意して行く事で話が纏まったのである。
そして、各地での報告が終わり情報の共有が済んだ時に小一郎が思いもよらない事を持ちかけた。
「藤林様、百地様、服部様 伊賀国で清酒を作りませんか?
伊賀衆にお願いしたいと考えているのです」
小一郎の申し出に、強者達も目が点になっている...
それもそうだろう、今現在武田家・今川家とにらみ合っている時に領地の開発を持ちかけられたからだ。藤林様が真意を確認すると小一郎が戦の後の領地経営を考えている事が判ると、二つ返事で三人は受け入れてくれたが、別の意味で恐ろしさを心の奥で感じていた。
「 」
藤林様は口に出そうと思ったが言葉が出なかった。今現在の状況をこの人(木下殿)は分かっているのか!と心配になるが、戦と内政の話をしている小一郎はいつもと変わらぬ、冷静さを保っていて柔らかい雰囲気のままであった。
そして、伊賀衆が取り仕切る酒蔵にて清酒の生産計画がスタートしたのである。
話は少しそれる。それは小一郎のあずかり知らない所で上杉家に大きな一撃を与えていた。
一体何が起こっているかと言うと、越後国は日本一のカラムシの産地だった為、上杉家は衣類の原料として青苧座を通じて京都などに積極的に売り出し、莫大な利益を上げていたのだが、その大消費地を失い上杉家の財政に致命的な一撃を与えていた。そしてそれを後に知る事になるのであった...
皐月上旬
「皆の者、大義である」
清須城の大広間には、殿を筆頭に重臣方が揃っていた。
そして、九鬼君をはじめと、織田水軍と新たに加わった熊野水軍に塩飽諸島の塩飽衆、真鍋島の真鍋衆、日生諸島の日生衆などを始めとした傘下に入った海賊衆の代表も訪れて瀬戸内の東部から尾張国までの海域が織田家の内海と化したのである。
「先の事は水に流す。
今後は、織田家に誠心誠意仕える様に」
と筆頭家老の佐久間様が語り、この日殿は終始ご機嫌で海賊衆の代表達も安心して帰って行ったのであった。
「で、次はどうするのかな? 小一郎」
海賊衆が帰った後の事である。
其処には、殿に佐久間様・柴田様に九鬼君・九鬼殿・佐治殿が残っていた。(いや、集められていた)
その言葉に、全員の目線が小一郎に集まったが...
「殿、申し訳ございません」
そう言って頭を垂れた。
それには、参加者全員がおどろく。
今までなら、ご提案いたします!と言いニヤリと笑いながら、眼が点に成る作戦を戦術を語っていたからだ。
その小一郎の行動に少し、不機嫌そうな殿だが。
「では、どうする。このままだと手詰まりだが...」
と小一郎を含めて、佐久間様と柴田様に目を向けるも...
佐久間様と柴田様も行き当たりばったりの、作戦しか提案が出来ずに終始するのだ。
お二方の意見が出て、場が静まり返った頃を見計らって小一郎は、今できる事を提案する。
「殿、佐久間様や柴田様のお話をお伺いしましたが、やはり今は守りに徹して時機を待ちたいと思います。
そこで、取り敢えずですが織田水軍を動員して今川家を困らせる事をしてジワリジワリと首を締めあげるのは如何でしょうか!」
殿はいつまで待つのだと、言いたそうだがあえて言葉にはしなかった。
小一郎が待つと言ったら好機が訪れるまで、何年でも現状維持を貫くことを理解したからである。
小一郎は、ここ数ヶ月考え抜いている。
武田方に大義名分がない以上、攻め込んでくる心配もない(少ない)その上、東美濃が盾になるのだ。
そして弥七殿や服部殿からもたらされる情報を基に、戦術を立案しようとするが武田軍が強すぎる...困ってしまうぐらいだ。(武田家と互角の戦いをする上杉家も化け物であろう)
どう考えても、今の武田軍に勝負を挑んでも織田軍に勝ち目がない。しかし攻め込まなければ負けはしないのである。
その為に小一郎の提案は武田家ではなく、もう一つの敵対国である今川家の戦力を剥ぐ作戦である。織田水軍で今川水軍を壊滅させ駿河国沖まで制海権を得ようとするもので最終的に、殿の了承の下で作戦を決行するのであった。
水無月中頃
山﨑関所にて小一郎は書状を受け取っていた。
「ふむ」
そう言って書状に目を通す。
内容は、今川水軍との戦の報告で結果から言えば大勝である。
今川水軍は手も足も出ずに、鉄甲船を全面に押し立てた織田水軍はこれといった脅威を感じること無く完勝した。
そして今川家は自国の制海権を失ったのであった.....
つづく。




