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1569年-3

誤字報告ありがとうございます。

文月中頃


「木下様...」


山崎関所にノーアポで服部殿が現れた...

正直に言って珍しい。なにかトラブルでもと考えが頭をよぎる。


「安芸国に潜入させていた者達から、ご指示を仰ぎたいと」


まだ、噂話は広げてないとの事でそのまま作戦を決行してよいかの相談であった。

報告によると、毛利家は現在北九州の筑前国における立花山城などを巡る攻防戦などで軍を展開させているのだが、尼子勝久殿が隠岐から出雲国に秘密裏に入ると、尼子氏の旧臣の支援を得て出雲新山城に入城!月山富田城奪還に動き出したとの事であった。

そして、毛利家家臣団の中で秘かに石山本願寺に援軍や補給を大殿(殿)に奏上できないかと動いていたグループも、あきらめざる得ない状況になったそうだ。

そんな状況の毛利家に、無暗にケンカを売る必要はないのではないかと考え、指示を仰いだというわけだった。


(報連相ナイスですねぇ)と心の中で思いながら、頭の中を整理していく。

毛利家が北九州で戦をしている事を小一郎は報告まで知らなかったのだ。そして尼子殿を担ぎ出して二方面作戦ですか...毛利家はたまりませんねと思いながら、噂話を流すのを止めて推移を見守り何か変化があり次第報告をお願いしたのである。

そして織田信長様(との)が恐ろしい程の強運の持ち主である事を再確認したのだ。

その後、服部殿とは色々と報連相を行なったのである。

それでそんな時には来客のある時には続くもので、珍しい人が訪ねて来てくれて来るなり頭を下げるのである。


「木下殿、申し訳ない」


九鬼殿がワザワザ志摩国から山崎の関所までやって来たのだ。

書状で良い物を、今後の事もある為に報告に来てくれたのだ。

結論から言って、みんなやんわりと断られたそうだ。

今現在の実力から言って、九鬼殿と同じぐらいの勢力を誇っている海の民(海賊衆)であるその為に、陸上では圧倒的な力を持ち始めた織田家ではあるが、海の上ではまた別との考えが根底にあり今回の試みは無理であった。


「九鬼殿、此度はご無理を言いました」


素直に、言いにくい話を報告に来てくれた九鬼殿に頭を下げる小一郎。

しかし、頭を上げた小一郎の表情を見て"ゾクッ"と寒気が走る。


「時勢の判断が出来ないのは、仕方ないですね

 次回の時には、圧倒的な力の差で九鬼殿の配下に入る様に恫喝したいと思います。

 あっ...この話は御内密に」


其処には、ダークモードではなく冷酷に笑う小一郎が居たのであった。

冷酷な時ほど物静かで丁寧に言葉を紡いでいくのである。

小一郎を目の前にして別の意味で恐怖を覚える九鬼殿がいる。動揺や恐怖を表情に出さない様に必死に戦っていたのであった。

それと今回ポロッと少し話したが、海の民(海賊衆)を織田家の支配下に置くことは小一郎の中では決定事項である!それは何故かと言うと、小一郎の次の構想は紀伊水道!大坂湾!瀬戸内(讃岐国方面)を織田家の内海とすることを秘かに計画しているからだ!鉄甲船を旗艦とした織田水軍に三好水軍と各海賊衆を傘下に収めて支配下に置くつもりなのである。


「では、せっかくなので」


そう言って次の話に...

話が変わり切り替わった小一郎は先ほどまでの冷酷さは無く。むしろのほほんとした親しみやすい小一郎が九鬼殿の前に居たのであった。




葉月に入っても石山本願寺との籠城戦は続いていた。

ただ、水堀の内側にあった寺町(西側と北側)は投石機などの断続的攻撃を受けてボロボロになり、この頃になると大筒の運用にも慣れてきて、敵本陣(本堂?)にも安定して着弾している。

本堂の屋根には、かなりの数の大筒の着弾跡がありこれからの運用の手本に出来ると考えていた。

因みに、大筒は二門が壊れて尾張より補給しているのと、弾を真っ赤にしてからの火災狙いの攻撃は効果が無く。取りやめになった事も書き足しておこう(グスン)

それと、相手方水路の封鎖作戦だが敵方も命綱を切られたら大変と、一進一退の激しい攻防が続き封鎖には至っていない事をお伝えしておく。

また、この頃になると佐久間様の献策で織田軍2万5千人づつの3グループに分けてシフトを組みリフレッシュさせて戦意の維持を試みていたのである。

それと話は後先になるが、戦端が開かれた直ぐぐらいに浅井家(摂津国4万石)から家臣になりたい(父とは別の道を取る)と、分家当主の浅井政元殿から申し出がありこの度無事にその話が纏まったそうだ。四万石の大名として織田家に仕える事になったそうだ。そして役割として、浅井家旧臣を纏める様にと殿からのお達しがあり北近江国を走り回るのであった。

因みに、この話は秘密裏に進められて小一郎は一つも知らずに最後の結果だけが伝えられたのである。


そして織田家本陣...


「殿、提案がございます!」


本陣で諸将が揃っている時であり、皆が"ドキ!"としたのであったが殿は動揺を顔に出さずに「小一郎、申してみよ」と促されたのである。


「申し上げます」


そう言って始まったのは、皆が予想をしていなかったものであった。

対石山本願寺籠城戦への献策であろうと全ての諸将が思っていたが...


「殿!誠に申し訳ないのですが安土城の建設は計画(今は着工前である)は白紙撤回させて頂きます。

 そして、安土に織田家政庁を置き、織田家の政治経済の中心地となる街を建設したいと思います。

それで、新しい町では楽市楽座の考えを取り入れて、誰でも自由に商売ができる街として都市計画を行いたいと思います。

次に、安土を中心とした道路整備を行いたいと思います。

具体的には、主要街道を砂利で固めた道を整備、それと荷台などの物資流通用の車道(石道)を道の端に二つ作り安土から全ての領地に円滑な人物金の流れをつくりたいと「ちょっと待て」思って....」


殿が話を止めた。


「小一郎!」


「ハッ」


「今は、城攻めをしているのだ!この石山本願寺を攻略するかの話ではないのか?」


流石の殿も、戦後の話に目を白黒させていたのだ。


「はっ?、いやぁ~......

某は今の石山本願寺は熟した柿と同じで時が経てば落ちて来ると思っています。無理をして大事な将兵達を失うことは無いので、このまま包囲していけば、1、2年後には無条件降伏すると考えています。

最早、朝倉家が北国街道を使い南下してくることはありません!(小一郎仮定) 無理なく熟柿が落ちて来るのを待ちたいと思います。

ですから、今の話では無くこれから取り掛かる内政の話をさせて頂いているのです」


「ハッハッハッハッ!   小一郎の頭の中では、石山本願寺はもう落ちているか!

では、尋ねるがその道づくりはかなりの歳月がかかると思うが如何に!」


パンと膝を叩く音が響き!ニヤリと殿が笑う。


「はっ、お答えします。

 自分が思うに奇妙丸様のお子様がご当主の時代に完成出来れば早い方かと...

 ただ、尾張国から安土そして摂津国までの主要街道の一本を直ぐにでも着工!兵士達まで動員して数年で完成させたいと思っています」


そう話すと、頭を下げる小一郎であった。


「織田家100年の計か...生意気な(フッ)

 詳しい話は後日に詰める事としょう

 皆の者はどう思った?意見が聴きたいのだが」


・・・・・・


全員が殿から目線を外している...ダメだこりゃぁ。

いや、こんな話で意見が飛び交う?いや盛り上がるのは村井組(木下組)ぐらいであろう。



翌日・・・・


「小一郎、では打ち合わせをしようか?

 話したいことがあるのだろう」


「ご明察おそれいります」


山崎の関所に殿は予定をキャンセルして訪問をしてくれた。

殿の私室なら、あんな話では終わっていない事を読まれていたのだ。


「では、早速始めろ」


せっかちな殿らしい行動で、小一郎は話始めた。


「申し上げます。

 まずは対朝倉家戦を有利に展開する為に、いやらしい手を打ちます。

 具体的には、朝倉領の商人の入港禁止!と朝倉領の港に停泊した商船の臨検!それと朝倉領の特産品に取引税を課したいと思います」


「取引税とはなにか?」


殿が不思議そうに尋ねて来る。


「はっ、商品の譲渡を課税対象としその取引によって利益が生じたかどうかにかかわらず課税する制度であり、目的は敵国である朝倉家(朝倉領)に儲けさせないのが主目的で越前国の地場産品を締め出してしまう事です。それに伴い織田家領内や同盟国からそれらの代替商品を流通させて、同盟国と良い関係を一層築くことが出来ると推察しています」


「小一郎、それを行う事で対朝倉家では、何が起こると考える?」


「はっ、

先ずは、北前船の船主達が朝倉家離れを始めると思われます。なんといっても北の幸を持って帰って来ても、一大消費地である織田領内に入るときに疑われたくないですからな。その為に湊使用料などの税収の減少に伴う年貢不足。一向一揆と戦中の朝倉家の首をジワリと絞めつけていけると思います。

その為に、対応を誤ると朝倉家は信用を失う事になるでしょう!ただでさえ朝倉景敏殿と朝倉景鏡殿の仲が悪いのです。朝倉義景殿の腕の見せ所ですかな」


フフフと笑っている小一郎が居た。

ただし絶対零度の笑顔で!


「次に、安土政庁の件ですが!


"うむ"と殿の返事を待って語り始める。


「近江の国を押さえたのは良いのですが、堅田が面倒です。

 実際には延暦寺の寺町であり、独立自治の湊町で色々面倒ですからこれを機会に堅田の力を削いでいきたいと思い、安土政庁・楽市楽座の提案をさせて頂きました。

上手い事行けば、10年も待たずに堅田はさびれるでしょう!」


「具体的にはどうするつもりだ」


「はっ、

先ずは安土政庁と街作りに大規模な港を作り、織田領を通る商人達に荷揚げ(荷積み)は安土湊でする事を命じます。

その為の主要街道を砂利で固めた道の整備であります。

すると人物金の流れが、堅田ではなく安土に流れるようになり、それだけで堅田はゆっくりと傾いていきます(仮定)。その頃になると安土は一大消費地として織田家の政治の中心地として栄えて居ると思われます(仮定)。また、海賊行為に出て来たら大手を振って堅田に攻め入ればよいと考えていますが、あくまで戦うのではなく見えない戦争で屈服をさせていきたいと思います」


「見えない戦争とな!」


キラリと殿の目がひかる。


「はい、気が付いた時にはもう打つ手がない状態で、堅田は織田家に降るでしょう」


見えない戦争で反応した殿だが、もう現実に仕掛けているのである。それは斎藤家や武田家に対しての通商で、織田領内の関銭廃止の恩恵で両家国内の商人や他国の商人より安く良い物を提供できる状況を創り出し織田家商人達が両国に深くかかわっている。ただ両国の商人達にも関銭不要の許可は出しているが、資本力の差は埋められないのであった。そして今現在は織田家と友好関係を築いている丹波国の国人領主領が堺商人や近江商人のターゲットになっているのである。

また、堅田(実質上、比叡山の寺町)が臣従してくる事は、近江の海を内海化出来たという事でもあるし今後比叡山との間に話し合いで解決できない問題が発生しない(と思う)という事でもあった。

ただ今は、絵に描いた餅なので、じっくりと腰を据えてかかる事にしよう!


「殿!一つお願いがございます。

 アレを、ああして、そうして、こうしたいのですがご許可頂けますか?」


殿の目が笑っている。

こんな事を実行しようかと考えるのは、小一郎ぐらいだなと目で語っているのだ。


「構わん、ワシの名前を使っても良い。好きにしろ」


「ハッ!ありがたき幸せ、では早速手配させて頂きます。

 あと、お伺いしたい事がございますが宜しいでしょうか?」


深々と頭を下げてお伺いを立てる。

小一郎にとって聞きにくい事だからだ。


うむ、と了承のもとでお伺いを立てる。


「殿、千熊丸に嫁いでくるれ方はお決まりになられましたか?」


「其の件か、生半可な者を嫁がせては三好家を軽く見ていると言う者も出よう、三好家には織田家を支えるだけの有力な家臣になってもらわなければならん...そうなるとだ...

・・・・・・

・・・・・・  

 徳を嫁入りさせる

 良いな!」


「はぁ! (ギロリ)  はっ、ありがたき幸せ」


流石の小一郎も驚いた。一族の者を殿の養女として輿入れしてくれると思っていたのだが、まさかの徳姫様を輿入れさせるという事は、殿にとっても三好家を重要だと認識してくれているこのと現れであろう。

これは、今考えられる最高の状況とである。

あとは、千熊丸が徳姫様を上手く乗りこなせるかにかかって来るが、小一郎自身がさきに頭が上がらないのだ。ない物ねだりは止めておこう(寂しい)


話が終わると来た時と同様に、殿はあっという間に山崎の関所を後にする。

そしてその日の内に、ある男が小一郎と密談の後、越前国に向けて旅立ったのであった!



長月に入ると摂津国東成郡の一部であるうわさが流れだしたのだ。

織田軍が撤退する!と言う噂話だ。

噂話は稲刈りの時期だからいつまでも戦を続けることは出来ない。

近々織田軍も撤退するであろうと敵方にとっては希望のになりそうな噂が...

その噂話は、瞬く間に摂津国全体に広がった。勿論、石山本願寺にもだ!

そして噂話を信じた石山本願寺軍全体の士気が上がったと、山崎の関所の小一郎の元まで報告が上がってくると、口元が少し笑ったそうだ。

それから、中旬には兵士達が国に返してくれと頼み込んでいるとか、度々帰り支度を始めたとか様々な噂話が飛び交っているのであった。


その話は、織田軍の兵士達にも広がっていたが「俺達農民でないから関係ないんだが」とか「こんな嘘に引っかかる馬鹿はおるまい」と兵士達は相手にしていなかったのである。

ただ、服部殿からの報告では、石山本願寺ではその噂話を信じる兵士達が大多数おり、首脳陣も一縷の期待を寄せているそうであった。



神無月に入って、摂津国東成郡に別の噂話が流れだす。

その噂話とは、織田領の稲刈りが終わったと言うものであった。


"ギロ!"


この時、柴田様は前線の視察に訪れていたのだ。


険しい表情で石山本願寺を眺めて柴田様は"ピキーン!"と何かを感じた!

それは、一流の将が感じる戦の流れではなかろうか、石山本願寺方の士気が萎むのを肌で感じたのだ。

予定を取り止め馬に跨りすぐさま本陣に!佐久間様と話していなや、無理矢理話を飲ませて総攻撃が開始される!

本陣に詰めていた佐久間様には離れ過ぎていた為に、石山本願寺軍の変化に気が付かなかったのだ。

織田本陣よりほら貝の音が鳴り響き、織田軍2万5千人が一斉に各寺町(廓)に襲い掛かった。

寝耳に水の石山本願寺軍は、驚き、混乱が起こり士気は全く上がらず織田軍に押されまくる。

「最悪な時に、最悪な事態が くそー!」と呟く石山本願寺の将が居たそうだ。

厄介な本願寺方(雑賀衆などの精鋭)の鉄砲隊などには竹束を兵士達に持たせて無力化&織田軍の鉄砲隊で対応して黙らせると、激戦を制して西側の寺町(廓)と西北側の寺町(廓)を占領する事に成功したのであった!




「はひ?」


小一郎は山崎関所の執務室でおかしな声を出している。それもそうだ佐久間様の使者から石山本願寺の寺町(廓)攻略の報告を聞いたのだ。

事実は小説より奇なりとは、まさにその事であろう!

小一郎は嫌がらせ(人の心を攻める)の為に、織田軍が撤退するかもと噂話を流してから撤退しない。上げてから落とす方法で敵方の心を攻めたのだが...

まさかそこまで本願寺方が期待していたとは!そして、気落ちした状況を看破し攻略につなげてしまう柴田様は流石としか言いようがないのである。

そして、その寺町(西側)からは敵方の本堂(本陣)や居住区とは水堀を挟んで隣接しており、投石機で攻撃が可能な為、担当の小一郎に確認を取る為に訪れているのだ。

小一郎はニッコリと笑いながらふたつ返事でOK出して、投石機を移設させて相手方の心を攻め立ててくれる事を期待するのであった。




「木下様、ご足労頂きありがとうございます」


権六殿と太郎殿の織田鉄砲鍛冶の二人が出迎えてくれる。

それは、霜月の中頃に書状が届いたからだ。

書状には、お見せしたい物がございますとだけ書かれていたから、期待度100%で尾張国に向かったのであったが......


「おぉ、待ちかねたぞ!」


其処には、国友鉄砲鍛冶衆の名工である国友善兵衛殿、藤九左衛門殿、兵衛四郎殿、助太夫殿が居たのだ。(国友に帰らずに、ここに居ったんかい)と心の中で突っ込みを入れたのは秘密である。


木下殿(おぬし)に見せたいものがある。

 話は、其れからだな...」



「例の物を持ってこい!」


射撃場まで連れてこられた小一郎が射撃訓練を見たのだが...


「これは、やっぱり無理だったのか?」


表情が曇る。種子島の少音試作型の試射なのだが、小一郎(しろうと)にも分かるぐらい品質に違いがあるのだ。何丁もの種子島少音試作型の試射を見たが、安定性が少しも無い。良い銃と悪い銃の品質がハッキリしているのだ。


「木下殿...」


国友殿が代表して説明してくれる。それによると...

ライフリングした種子島小音型の成功例は素晴らしい鉄砲になるそうだ。

具体的には、威力・射程距離と照準が非常に良くなるそうだが、失敗作は空気が逃げて普通の少音型以下の性能になってしまうらしい。手作りで生産している種子島である。現代の工業製品みたいな品質には無理があるが、これにはどうしようもない思うが、皆が見ているから表情はいたって明るく振舞うのである。

申し訳なさそうに、話をしてくれる国友殿だが小一郎が少しも気にしていない事に安堵したのである。そして、そこからは魔改造された種子島の登場であった!

先ずは種子島中筒だが、バランスを見直し全体の重量の軽減と強化を行い威力と射程距離と照準が良くなり、取り回しが非常に良くなったと感想が聞かれた!勿論銃剣も装備が出来る。

次に、狭間筒だが此方も全体のバランスを見直し結果的に、銃身は長くなったが射程距離を延ばすことに成功する。そして何より驚いたのは種子島少音型が10連発できるようになっている事だった!

六人は一から問題点を洗い出し、少しずつ問題点を改善していき、10連発の種子島少音型を完成させたのだ!まだ手元にある一丁だけだが、これが安定生産出来れば織田水軍の主力武器になる事だろうと心を躍らせるのであった。


それと、通常の種子島にライフリングを試してみたそうだが......製造のおすすめはしないとの事であった。

その後、鉄砲鍛冶衆全員の労をねぎらい、清酒に焼酎に(果実酒)で大宴会をした事を付け加えてこう!




「奥方、ご無沙汰しております。

 木下様は御在宅ですか?」


宴会の翌日の午前中に、弥七殿が訪ねて来てくれたのだ。

一通りの報告の後に、周囲を確認した弥七殿が重そうに口を開いた。


「木下様、駿府の今川様(ご隠居)の体調が優れません。

 まだ、話は広がっていないのですが人前に出ていても体調不良を隠すことが出来なくなってきたそうです。」


「そうですか。

 ・・・

 ・・・

弥七殿、今川家ご当主の評判はどうですか?」


小一郎は少し考えこんだ後に、弥七殿に聞く。


「今川家ご当主ですか...

 中々油断のできない方だと思います。

 三河で起こっている一向一揆も、見事に家臣団を纏めて対応しており、もう少しで鎮圧される事でしょう。

 この事からも、先代に劣らぬご当主になる可能性すらあると思われます」


弥七殿の評価は非常に高く。

小一郎も、史実通りの御当主であると判断したのである。


「ですか...

 何か妙案を考えねばなりませんねぇ」


と呟き、今後の動向を監視してくれるようにお願いをして、弥七殿は帰って行く。

その後、小一郎の頭の中はフル回転していた。もし今川殿(ご隠居)が遠行されパワーバランスが壊れる事を危惧していた。

いくら今川殿(御当主)が大器の可能性があろうと、今現在では武田殿(御当主)にはおよばないであろうし、武田殿が野心を押さえる事が出来るであろうか?戦になれば多分だが北条家が今川方に付くだろうがそれも絶対ではない。また北条氏康殿がご存命の内は迂闊な動きはないと思われるが希望的観測にすがるしかない。ここは出来るだけ早く対石山本願寺と朝倉家との戦を、終わらせる必要が出て来たのである。


今回の事で小一郎の戦略の大前提である東側の安定はかくも脆い物でもあったと再確認が出来た。国の力だけではなく戦国時代を代表する人物達である武田信玄殿、今川義元殿、北条氏康殿、上杉謙信殿達の力関係で成り立っていたからである。此処に来て小一郎は戦略の大転換を迫られたのだ...いや桶狭間での今川義元殿の討ち死にを阻止してからここまで良く持った物であった!

それと、松平元康殿だが今川家ご当主と良い人間関係(一門衆と同等の扱い)を構築していて、今回の内戦でも三河勢を率いて活躍をされた事を書き加えておこう。

 

その後、織田信広様との報連相に始まり、九鬼君達造船組の叱咤激励に内政問題の解決や根回しなどで尾張国、伊勢国(中・北勢)を走り回り山崎の関所に大筒などの補給物資を持って帰ったのは年末を迎える頃であった。




つづく。




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