1568年-4
誤字報告ありがとうございます。
織田信長公が落馬で、意識が無い重体との話は恐ろしい速さで、全国に駆け巡った。
今や、畿内の覇者である織田家である。落ち着きかけた世の中(畿内)がまた乱れるかも知れないと不安を口にする人達が沢山いたそうだ。
そして、この情報を聞き活発に動き出したのが、三好家と朝倉家である。
三好家は捲土重来を期して、織田包囲網を築こうと重臣の篠原殿が動き出して各地の大名に使者を送っている。その相手は畠山家に松永家・丹波国の国人領主達に、浅井家、朝倉家、斎藤家、武田家、今川家に上杉家と比叡山に本願寺と多岐にわたる。そしてこの時とばかりに三好派の公家衆を動かして先の政権構想を、ダメなものと決めつけて帝に取り合わない様に圧力をかけて来たのである。
あからさまな動きは、殿が瀕死である事が全ての始まりであった。
また、朝倉家の動きも基本は三好家と同じ動きを見せていた。
「それで、三好家と朝倉家は同盟を結んで織田家に対抗して行こうと動いています」
服部殿の話してくれる。
今は服部殿と弥七殿の三人で密談中である。
「その二ヵ国と共闘しそうな勢力は・・・」
「家の中が割れているのは、畠山家と松永家です。ただ本願寺の動きが怪しいです」
服部殿の報告に「う~ん」と唸る。
(この時代でも敵となるのか本願寺と思ってしまう)
小一郎は殿に対して本願寺と比叡山には、いつの間にか逆らえなくする政策(3公7民や関銭の廃止に津料の引き下げなど)を行なっていて矢銭などの直接的な要求はしていないかった。
「今川家、武田家に動きはありません」
「ただ松平家に、訂正します三河国の酒井家にも接触しているみたいです」
腕を組み天井を見上げる。
松平元康殿を押さえていたら大丈夫と思っていたら、油断もスキもあったものでは無かった。
「どの勢力ですか?」
「本願寺です」
「そこにも本願寺ですか・・・」
確か三河国にも本願寺派の寺が沢山あり、三河武士達にも信者が沢山いたはずだその関係を使って接触したのかも知れない。史実でも一向一揆はかなり激しかったはずだ。どうしたもだろう難しい対応を求められるのであった。
「弥七殿、今後も酒井殿と本願寺派の動きは逐一教えて下さい。お願いします」
「はっ、かしこまりました」
「服部殿も本願寺派の動きを特に注意して下さい」
「了解しました」
そして、三人の密談は夜遅くまで続くのであった。
翌日・・・城内があわただしくなる。
伝令が飛び込んできたからだ。
「朝倉家、若狭国に出陣しました!
織田信光様率いる兵5000で守りを固めるとの事、至急援軍を!」
朝倉家が何故若狭国に軍を送れるか、後から分かった話ではあるが朝倉家と本願寺の間で和睦が成立、朝倉家の姫と本願寺の教如殿との間に婚約が1567年に成立したからであった。これで後顧の憂いなく軍を動かせるのである。
「斎藤家にこの事を伝えよ、そして斎藤家には越前国の国境まで軍を動かし朝倉家を牽制させよ!
また浅井家には、朝倉家が軍を引くように交渉してくれるように頼むのじゃ。
直ぐに掛かれ!」
「「「はっ!」」」
殿の小姓衆が殿の代理の信広様の言葉に素早く対応するが・・・・
「伝令!」
慌ただしく伝令の使者が飛び込んでくる。
「三河で一揆が発生しました。
農民と武士達が共に行動しているとの事です」
「何だと-!」
「伝令!
畠山家、松永家軍を起こして、大和国筒井城を強襲しました」
「・・・・・・」
「伝令!阿波の三好家が軍を起こし畿内に向かって出陣したとの事!
至急援軍を!」
「伝令!」
「今度はなんじゃ」
信広様の声にいら立ちが乗っている・・・
「はっ、浅井家で下剋上が起こり、実権を浅井久政殿が浅井家を掌握とした模様。
なお、浅井長政殿の生死は不明」
「伝令!」
まだ来るのかと顔に書いている信広様。
「石山本願寺が軍を起こしました」
「「「「&%$#$%&''&%$」」」」
大広間に集まっている諸将もこれには言葉も出なかった。
「四面楚歌」
誰かがポツリと言った言葉が、大広間に重い雰囲気をもたらしたのであった。
「伝令」
追い打ちをかけるように悪い話はやって来る。
「堺が中立を宣言しました!」
そう織田家を見捨てたのであった・・・
もはや大広間で言葉を発する者はいない。対策を打てる者がいなかったから、それはまるでお通夜で合ったが・・・ドカドカトガと聞きなれた足音、真っ青な表情をした諸将に血の気が戻る。
「「「「「「殿!」」」」」」
全員が驚きをもって殿を織田信長を迎えたのであった。
重体で、明日おもしれぬと言われていた殿がピンピンして現れたからだ。
「どいつもこいつも」
そう言いながら、全員の顔を見て回る。
今にも泣きそうなものまで居るのだ。
「兄者、皆の者、苦労を掛けた!」
殿を中心に織田家が、絶望の中に光を見出したのであった・・・・
「小一郎!お主の仕掛けた釣り針に、ダボハゼが沢山食らいついて来たぞ!」
"ハッ"と全員が驚き小一郎を見る。
それが策であったのかと!
「ハッ!」
「では、策を申せ!」
「ハッ」
小一郎は対策を語りだす。
「まず、尾張と三河国境の守りは、信広様と森殿に兵5000でお願いします。決して三河には侵入しないでください。
あくまでも、今川家内の内部抗争で終わらせたいと思います。
朝倉家には、信広様がおっしゃられたとおり斉藤家に国境沿いに軍を派遣してもらって牽制して頂きます。それと、進藤様・後藤様とに兵1万を信光様(兵5000)の後詰めで送り守りに徹してもらいます。また浅井家ですが、蒲生様と平井様と兵1万を国境沿いに展開して牽制します。またこちらにも斎藤家から軍を派遣してもらい不破の関辺りで、睨みを効かせてもらいたいです。」
「そして、松永家と畠山家ですが、内藤様平手様に兵5000を率いてもらい伊賀街道から進軍し要地にて対陣をお願いします。それと槙島城に橘殿・池田殿を兵5000と共に増援に向かわせます。それで本隊ですが山崎の関所に兵30000に着陣して本願寺の出方を伺います。また三好家対策ですが、柴田様と佐久間様には各兵一万づつで水際で迎撃して頂きたいと思います」
殿は力強く頷き。
「よし、では皆の者出陣じゃ!」
殿の号令一家、織田家が動き出す。
織田家全兵力10万の内、各関所などに常駐している兵力(1万人ぐらい)を除くとほぼ全力出陣であった!
「殿」
動き出した状況の中、殿を呼び止め書状をみせる・・・
「ご許可頂けますか!」ニヤリ
「うむ、許可する」ニヤリ
「では、手配いたします!」
其処には悪だくみをする小一郎が居たのであった。
「帝に奏上して頂きたい。
天下の安寧を妨げている者達です」
尾張国を出て三日後、関白様邸で殿と小一郎は面会をしているただし、二人とも六天大魔王モードとダークモードでだ!汗を滝のように流して、何時もの様にほほほと煙に巻く余裕もなく表情は固まっている・・・
「も もし、この件を飲まなければ・・・」
「織田家は畿内より撤退します。
あとは、ご自分達で治めてください。今後一切織田家は係わりません!」
こわごわ聞いて来る関白様を、小一郎はハッキリと恫喝しているのだ!
織田家が畿内を治めてからは、公家達の生活も落ち着き京の町も落ち着き平安がもたらされているからだ。
もはや力の無い足利家に天下を治める力はない。ただ足利家(平島公方)を旗頭にして足利将軍家が世の中を治める為に三好家達は兵を挙げた。それは三好家の傀儡としての足利将軍家だ。だったらそれを帝に朝廷に拒否させればよい!それが出来ないのなら、昔の様に極貧の生活をしたらよいだけの話だ。
ただ可哀想なのが、関白様いや帝と朝廷には織田家からの要請を断る事は出来ない。窮状を脱してやっと安心して生活が出来るようになったのだ。この生活は手放せない。どんなに文句を付けた所で選択肢としてはyesかハイしかなかったのである。
翌日・・・
疲れ切った関白様が山崎関所の殿を訪ねてこられた。
「織田殿の申し出を、朝廷はすべて認める事に至った事をお伝えする」
「申し出を認めてもらい、ありがたき幸せ。今後とも帝と朝廷の為に忠誠を誓います」
話が通った!あとは仕上げを御覧じろだ!
「皆の者に伝える、帝と朝廷はこの度の戦を敵対行為と認め、三好家・畠山家・松永家・浅井家・朝倉家と本願寺を朝敵と認めて頂いた!そして本願寺には禁教令を本日付で全国に発布された事を公表する物である」
この発表は畿内に全国に轟いた!
朝敵にされてはたまらない各家達は公家を通じて撤回させようと試みるも、使者が公家に到着することは無かった。いやこの頃から敵方の使者や伝令が届かなくなってきたのであった。
つづく。




