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1568年-3

誤字報告ありがとうございます。

「小一郎!大和国の筒井家から使者が訪れたぞ!

織田家の庇護を求めて、当主直々に来訪するそうだ」


そう、藤林様が工作を仕掛けていたのだが無事に実を結んだ。

松永家と畠山家の間にあって重圧にとうとう耐え切らなくなった。

(重圧を掛けていたのは藤林様かも・・・)

ただ敵対して来た松永・畠山両家に降伏する選択肢は無い。・・・だったら家臣達が進める織田家に降伏するしか選択肢が無かったのではあるが・・・


「殿、筒井殿を村井組に頂けませんか?確か出家されていると聞いた事があるので、前田殿(ぎりのあに)と一緒に寺社の対応をお願いしたいのです」


前田殿(ぎりのあに)を補佐出来る人材をずっと探し求めいたから渡に船で、是が非でも手に入れたい人材であった。最近は、各寺院の紐付政策で多忙を極めている為に、仕事環境の改善を相談されていたからなおさらであった。


「殿、ご提案がございます!」


口元の片方が少し上がり、ニヤリと笑う。

すると殿も一緒にニヤリと笑う。

二人の纏う雰囲気にドン引きする堀殿。その後密談をする二人りとそれを表情を引き攣らせながら見守っていたのであった。


「初めてお目に掛かる」


大広間には若狭国から武田元明殿が訪れている。当主自ら援軍の要請か?いや逃げて来たと考えるのが普通であろう。朝倉家が攻めて来る噂を鵜呑みにしたらしい。ただ家臣達も織田家に助けを求めようと言った声が多く今回の訪問に至ったみたいだ。それは百地様の多数派工作が上手くいった証でもあった。


しばらく話をした後に・・・

殿の雰囲気が一変!武田殿を始め若狭衆は目を疑うが、もう後の祭りであった。


「武田殿、若狭国の事はこの信長にお任せてくだされ!そして妻子を尾張に呼び寄せて心穏やかに過ごされるが宜しかろう」


「えっ・・・・・・」


絶句している武田殿。

そこには有無を言わせぬ雰囲気を纏った殿が、格の違いを見せ付けた。

口をパクパクさせている武田殿を横目に、殿は次々と指示を出していく!

若狭国に信光様を大将に家臣団+若狭衆と兵五千人と共に派遣、急ぎ防御を固める様に指示を出す。また朝廷と甲斐の武田殿に使者を出して武田殿が庇護を求めて来たので、武田殿を庇護して若狭国は織田家が治める旨を知らせる様に指示を出していったのであった。

その後、佐久間様が接待役にて尾張名物を大判振る舞い!食べ物に酒と若狭国で手に入らない物で接待しまくるのであった。

そして後日にはなるが、織田家に仕官した武田殿は重臣待遇の御伽衆に任命されて織田家に訪れるお客様の接待を一手に引き受けるのであるが、それは別の話であった。


殿からの号令一下、信光様達は若狭国へ。

若狭衆の先導の下に西若狭を掌握、特に小浜湊を確保を小一郎に頼まれていた信光様は後瀬山城に入城の後、直ぐに部隊を派遣して掌中に治めると朝倉家の迎撃の準備に掛かるのであった。




そして情報が東若狭に越前国に広がっていく。


「クソー」「やってくれた」「本当か?」


朝倉景鏡殿達の悔しそうな声が部屋に響く。鳶に油揚を取られた格好だからだ。

怒りに任せて宣戦布告しないだけ冷静な対応をとっている。

そして、一つの結論に足した。


「単独では無理だ!」


織田家は最早、大国朝倉家でも単独で戦が起こせる相手ではなくなっていたのであった・・・





「只今戻りました」


殿のお許しの下で三好家に使者として出向いてくれていた、前田殿と佐々殿が無事に帰って来てくれたのだ。


「三好家は、今回の申し出を非常に疑い深く受け取ったようです。

 おかげで、返事を頂くまで時間がかかりましたが来年度から参加せて頂きたいと返事をもらいました」


「それで、内情はどんな感じでした?」


2人がアイコンタクトを取ってから話始める。


「はっきり言って、敵扱いですね!

 特に、阿波国(四国)にいた者達は織田家何するものぞと、捲土重来を夢見ていましたが反対派もいてその筆頭が、三好長逸殿・三好宗渭殿・岩成友通殿の三好三人衆で織田家と戦った者達が中心でした。

 肌で、織田家には勝てないと感じていると思われます」


「また・・・」


「また・・・木下藤吉郎という方が接待役で・・・何でも小一郎殿の実の兄と言うではないですか?

 毎晩のように、酒をもって来ては尾張の話を聞かせてくれじゃ、小一郎はどうしているとか楽しい方でございました」


「はぁ~・・・確かに兄者ではあるが・・・」


・・・

・・・


「兄弟だから言える事だが、兄者は人たらしの名人で他人の心をすぐに掴む事が出来る。そして聞いた話を冷静に分析して、主に伝えているだろう」


「「まさか」」


「そのまさかじゃよ。

 油断大敵!木下藤吉郎という男は、そういう男じゃ。

 知恵と話術と人たらしの術でのし上がって行く人物だと思う」


「ただ、兄者らしいな」


どこか懐かしく、昔と変わらない兄者の行動に口元が緩む、帰ったらおかあに兄者が元気にしている事を伝えようと思う。

それと此処に来て、兄者が三好家内部で頭角を現しだした。面倒くさい事に成らなければ良いなと思う小一郎であった。





「お初にお目に掛かる。筒井順慶と申す。

 この度は当家の申し出を受けて頂きありがとうございます。

 今後は、誠心誠意お支えさせて頂きます」


筒井殿と家臣達が平伏しているのである。


「筒井殿や皆の活躍を期待している!」


「「「「「はっ」」」」」


その後は、大和国の内情から色々な幅広い意見を交換、また織田家に仕える為の事などを話して会談は終わりを告げた。

それからは、いつもの雇用説明会を行い筒井殿は直ぐに村井組に合流してもらう旨を伝える。

他の家臣達は3か月の研修の後に配属を決めると申し伝えて、全てが終わったのであるが、今回の事で松永家と畠山家には激震が走ったのだ!自分達の領地の横に織田領が爆誕したからだ。

佐久間様は会談の後に、松永、畠山両家に使者を送って経緯を説明して織田領になった事を知らせる。両家は何も言えずに認める事しかできなかったそうだ。

また、小一郎は服部殿に指示を出して、松永領以外の大和国の国人領主達に揺さぶりを掛ける為に噂話を広げていくのであった。(勿論、寺領にも噂話は広がっていくのである。フフフ)


動きがなかった京周辺の勢力図が動き出した。

若狭国武田家と大和国筒井家の臣従の後に、丹波国の波多野家とそのほかの国人領主達との接触に播磨国東部に勢力を築いている別所家と播磨国西部を治めている赤松政秀殿が傘下にと庇護を求めて来たのだ!


「ごめん、木下殿はご在宅かな」


服部様が訪ねて来てくれた。


「木下殿、予想外の事が三好家内で起こった」


困惑を隠さない服部様がいる。

揺さぶりの為に送った使者を、織田家は弱気だと勘違いをした阿波、いや四国衆は再び畿内を手に入れて、平島公方を旗頭にして三好家が天下を担うと強気な発言をしているのだ。ただ反対派(織田家と協調派)は三好三人衆が中心だが慎重な発言は弱気に取られて相手にされない。反対に尾張の弱兵に負けたと陰口まで叩かれる始末であったそうだ。


「もう三好家では・・・

 服部様、三好家は平島公方を旗頭に将軍就任を錦の御旗にして京を目指すと思われるか?」


「多分そうなるな」


腕を組み「う~ん」と唸りながら考えをまとめようとするも情報不足で答えが出ない。

それは服部様も同じである。


「服部様、三好家が何処に使者を出したか調べてもらえませんか?」


「そうだな、今はそれしか無いか。

 わかった、やってみよう」


服部様とわかれた後に、女中(みつと春)に三好家からの使者の出入りを見逃さない様に言付けをお願いしたのであった。




「殿、申し訳ございません。読み違えました。

 それを踏まえてお願いしたい事があります」


翌日殿を訪ねての第一声がこれだった。

すっと姿勢を正して頭を下げている。

今現在、織田領ではこれっと言って問題は無いはずだ、殿の情報網からもおかしな報告は無い。

それなのに、小一郎のお願いには悲壮感が漂っている。


「小一郎、話してみよ」


「殿、先日の三好家への使者は思惑通りに行かずに戦をやるきになっています。

 三好家の四国衆が織田家が弱気だと勘違いしたからです。

 その対策として、兵をはじめとした人員の増員と・・・・・・」


「と、なんだもったいぶらずにはっきりと言え!」


「はっ   殿、病気になって明日にはどうなるか分からない重病になって下さい」


「はぁ?」


「大怪我でもいいです」


「はぁ?」


・・・

・・・


「小一郎、お主何を考えている」


「作戦の失敗を逆手に取っての敵勢力の洗い出しです(ニヤリ)

ですから、殿!生死をさまよってください」


「失敗を逆手に取り、三好家以外の敵を炙り出すか。

 分かった、良きに計らえ!」


「とゆう事です。今回の件は堀殿にかかっています!」


いきなり話を振られて“ハッ”とする堀殿。

顔には(マジですか)と書いてある。


「殿の容態はどうだと、重臣方を含め家臣団全員から聞かれるだろう」


・・・・・・


「それを跳ね除け、または演技で欺いて欲しい。敵を騙すには味方からと言いますから。

 それに合わせて、領内の治安維持の為の見回りなどを強化して本当の事の様に織田家全体で騙しにかかりたいと思います」


「わかった、では落馬をして大怪我をするとしようか?

病気では無理があるからな」


そう言いながら、口元が笑っている殿。

今後の動きの大筋を話をして殿の私室を後にした。

その時、堀殿の顔が引き攣っていたのは見なかった事にしよう。


殿のお許しの下、常備兵、役人、工作兵の募集を発表!多数の申し込みを頂きてんやわんやの頃に、殿が落馬!大怪我をして意識が無い瀕死かも知れないと、噂話が織田領内外に電撃的に広がった。

ちなみに殿の落馬は小一郎と悪巧みをした二週間後で、長月に入った頃であった!





つづく。





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