1567年−2
誤字報告ありがとうございます。
「木下殿!準備完了しました!」
「権六殿、宜しくお願いします」
太朗殿や鉄砲鍛冶衆が見守るなか・・・・・・・
バァーーーーーーーーーーーーン!!!
轟音と共に種子島は火を噴いたのだ。
「成功だぁぁぁ」
権六殿と太朗殿を始め鉄砲鍛冶衆が大喜びだ!
なぜ大喜びか、それは三雲様や九鬼殿が輸入した硝石を使っての火薬の試射だったのだ。これで鉄砲隊の練度が上がる、今迄は最低限の練習で戦場に臨むしかなかったが、これから織田鉄砲隊は最強を目指して動き出したのであった!
「太朗殿、権六殿、よくやって来れました!」
小一郎の言葉にまんざらでもない様子の二人に恐ろしい言葉が投げかけられた。
「火薬の目処も付いたので、新型の種子島の開発に移りましょうか!」
「「エェェェェェェェェェェェ!」」
二人の叫びが射撃場に虚しく響くのであった。
因みに自家製の硝石の生産は失敗続きであった・・・トホホ
「殿、お呼びにより参りました」
「来たか・・・」
清須城の大広間にて会見中であった。
そして、そこには堺からの商人の代表が殿と面会をしていたのだ。
「こやつがこれから窓口をする、木下小一郎だ」
「小一郎、後は頼んだ!」
殿はめんどくさい話をすべて小一郎に振って逃げたのだ。
「織田家家臣、木下小一郎と申します」
「失礼ではありますが、お名前を教えて頂いても良しいでしょうか」
商人の代表団だが何かが違う、所作仕草が明らかに洗練されている。
只者では無い。小一郎に緊張が走った。
「納屋の今井宗久と申します」
(堺の大物がきたぁー)
表情には出さずに挨拶を交わした後に、目線が交差して腹の探り合いが始まる。
そして此処まで来た理由も分かる。畿内を平定して半年強!早くも堺はピンチに陥った。それは熱田・津島に伊勢・近江商人達が暴れまわり畿内での商売が出来なくなってきたからだろう。
「堺を代表される今井様が田舎の尾張まで、どの様なご用件でお越し頂いたのでしょうか?」
「しらばっくれるな!」
代表団の一人が噛みついて来たが。
「・・・」「失礼いたしました」
今井様の一睨みで詫びを入れる。
「木下様、供の者が失礼いたしました」
「ただ、彼らも困っているのです。織田様が畿内を治められてから我々には商売が非常にやり難くなってしまっていて・・・」
そして、今井様も小一郎に警戒をしている。見た目通りでは無い同年代のやり手の商人を相手にしている感じがしているのだ。小一郎も前世では伊達に社畜はしていなかったのだ。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
会話も無く、お互いが視線を合わせてせめぎ合いをしている。見るのもが見たら火花が散っているであろう。
「ふっ、敵いませんな・・・」
「・・・では堺を代表して、他の商人達と同じ条件で商売をさせて頂きたい!」
「「「「「今井さま」」」」」
頭を下げる今井様。
お供の商人達が叫ぶが、一睨みで黙らせた!
「・・・」
「・・・」
小一郎も困っていた。
海千山千の今井様が、織田領の商人達と同じ条件でと切り出されたが鵜呑みには出来ない・・・小一郎はより慎重になる。
「今井様、何を考えられているのですか・・・」
「納屋をはじめとした堺商人の生活ですかね」
「このままでは、じり貧ですから・・・」
再び、会話が途切れ視線が交差する。
この食えない大物に小一郎の心は揺さぶられてばかりであった。
「では、以上の条件で宜しいでしょうか!」
「はい、宜しくお願いします」
後日、今井様と会談を設定して条件で話を詰めだのだ。
あっ、自分一人では無く村井様と佐久間様も同席して頂いた事を付け加えておく。
そして、落とし所は今迄と一緒で今井様達が代表の合議制で治める自治領だが、今迄と違うのは織田家の臣下としての自治領となった事だ。商売の取り引きは自由であるが求められた場合には織田家を優先する事で話がまとまった!
すると・・・
「今井様にお願いしたい事がございます!」
「えっ・・・・・・」
雰囲気が全く違う、ダーク小一郎がそこにはいた。
これを見た今井様を筆頭にとした一行も口をパクパクさせて、言葉を失っていた。
(これだったのじゃな、木下様に感じていた違和感は!)
「さ さ 早速お願いとは?」
「はい、南蛮船の設計図と南蛮船の中を見学させて頂きたい。勿論代金は支払いします!」
「如何でしょうか?」
「無理な事を言っているのは判っているので、ダメでしたと連絡頂けたらとおもいます」
今井様の表情が”ダメ“と聞いたら一瞬だけ表情が変わった!プライドに火が付いたのだ。
「早速のご注文、ありがとうございます」
「堺にご用意出来ない商品はございません!お任せ下さい!」
今井様も分かっている。小一郎の挑発に乗った事を、しかし堺の商人である勝算が無い戦いはしないのであったが、その駆け引きを見ていた使節団のメンバーはハラハラしているのであった。
また今回の事で、織田領の商いは弱肉強食の戦国時代の突入する事を意味して、お互いが切磋琢磨していくのであった。
そして会談後に各地の商人達に、堺が織田領になった事を伝える指示をしたのであった。
「では、行ってくる!」
家族の見送りを受けて尾張を旅立った。滞在はひと月で都にトンボ帰りであった。
山城国に帰ってからも大忙しだ。溜まった仕事をこなし、河内国に摂津国の視察に山崎関所(仮)の現状確認の上に、帰って来たと分かったら遊びに来る関白様の接待と色々な事を話すのだが、関白様がポロッとある会談の話をしてくれた。
それは、伊勢虎福丸殿と旧幕臣が面会に訪れた時の事であったそうだ。次の政権(足利義栄様の将軍就任)でも伊勢氏が(自分が)幕府政所執事に就任する為の根回しに訪れたのだが、関白様が新政権の構想を話すと全員が激怒したそうだ。
自分達、伊勢氏と旧幕臣が無用の長物と言われたからだ。伊勢殿にとっては足利幕府は絶対で永遠に続く物なのだろう。それからは会っていないとの事だが小一郎が考えていない方面から反対派が現れたのであった。そしてなんということでしょう!呉越同舟と言ったら良いのでしょうか伊勢氏(足利義栄様派)と旧幕臣(足利義輝家臣)が手を結び動いている事を知る事が出来たのだ。やはり世の中は足利幕府が滅んだとは考えていないみたいで、足利幕府の権威に縋り付き立身出世を目指すのであろう。しかし果たしてどうなることやら。
それから関白様から話を振られた。
「小一郎、例の会議(帝を中心とた議会)の開催を何時にするかだが・・・」
「都の復興次第と思いますが、来年か再来年には開催したいと思います」
「それで、どこまでの大名に声を掛けるのですか?」
「それよのう」
「それはこれからの相談じゃの、ホホホホ」
「それから、関白様にお願いがございます」
小一郎のお願いに「ホホホホ」と笑いながらも目線は射抜くように鋭かった!
「何でおじゃるかの?」
「はい、それは琉球との交易をしたいと考えております」
「付きましては、朝廷からご許可を頂けましたらありがたいと考えております」
「そして、旨く行った暁には・・・」
「そうじゃの、水心あれば魚心と申すからな!」
「小一郎、お主も悪よのう・・・」
「関白様ほどでも・・・」
・・・
・・・
「ホホホホホホ」「ハハハハハ」
2人の笑い声が、虚しく響くのであった・・・
そんなことを話している小一郎ではあるが・・・あれ・・・また仕事が増えた?自分の構想だが社畜道に磨きをかける為に仕事に邁進するしかないのであった。
それは長月に入っての事だった。
あっ、あれを作ろうとアイデアを思いつき、思い立ったが吉日!仕事を任せて山城国の織田領の山の中に・・・
「この辺りがよろしいかと」
地元の者に連れられて、氷室の建設場所の選定に訪れたのだ。
来年?再来年?の会議の為に氷室を建設する。
(あれも試してみよう、ふふふ)
また、面白い事を考えながらも押し寄せる書類と格闘&視察&接待に追われて、社畜道を邁進する小一郎であった・・・
つづく。




