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1567年−1

誤字報告ありがとうございます。

「木下殿はおられるかな」


年が明けた睦月に三雲様が山崎関所(仮)の建築現場まで訪ねて来てくれた。

小一郎と親方二人そろって挨拶して、別室に・・・


「二人とも頑張っておるな」


「「はっ」」


「凄い物に取り掛かっておるそうだが?」


「はい、石垣を取り入れて山城国の守りの壁を作っております。

 幸いにして、近江に石積の穴太衆がおり仕事を依頼しました。そしてこれまでの常識を超えた関所にしたいと思っております」


「カッ カッ カッ 剛毅よのう。

 完成を楽しみに待つとしようかのう。

 でだ、おぬしら二人を尋ねたのは、昨年の年末に朱印船が帰って来て大成功だった事を伝えに来たのじゃ、そして、お主の睨んだとおり尾張産の種子島はあっとゆう間に売り切れたそうだ」


「良かったです」(ほっ)


「それで、次の手は考えておるのじゃろう」


そう言って小一郎を見つめている。


「いやぁ~まいりました。三雲様には隠し事は出来ませぬなぁ」


頭を掻き降参である。


「はい、次の手は今回の同盟国に朱印船貿易を一緒にしないかと声を掛けます。

 朝廷の許可の下、畠山家・松永家・浅井家・武田家・今川家・北条家・上杉家と勿論、北畠家も含めます。そして、折角纏まったのです。このまとまりを強固にする為に安全保障の上に、利益を乗せて協力していく方が美味しいと思わせたいと思っています。

 先程の大名家達も大手を振って貿易が出来るのです。この話に乗って来るでしょう」ニヤリ


「やはり、木下殿は面白い事を考える。

 利で大名家達を纏めるか・・・

 では、その話はわしの口から殿に話を通して進めて行こう。

 お主は忙しすぎるからな」


「はっ、助かります」


その後、色々な事を話した後に三雲様とは別れたのであった。




社畜道を極める小一郎は、何とか弥生に尾張に帰って来た。

約1年ぶりに自宅に帰ったら、千熊丸は大喜びではしゃぎすぎて(さき)のカミナリが・・・そして娘の初は(さき)から離れず、抱っこをしようとすると大泣きで淋しい思いをする小一郎である。グスン

翌日からは、農業試験場に行き作物の確認や養蜂の手配の確認など仕事は多岐にわたる。そしてメインイベントはサトウキビの収穫である。(現代でも収穫は12月から3月の冬のあいだにおこなわれています)

ほとんどが作付け面積を増やすために挿し木植えに使われるが、少量が殿に献上されるがその毒見の為に小一郎や親方達に弥七殿達や服部殿達と鉄砲鍛冶衆が体を張るのであった。

そんな悪巧みをしている時に、弥七殿が報告にやって来た。

挨拶もそこそこに、報告にはいる。


「では今川家から・・・今川家では、今回の朝廷の三好家討伐の許可そして錦の御旗を全面に押し出した事で激震が走り、打倒織田家から方針転換をしようとしています。そのトドメが朱印船貿易を一緒に如何ですか?と使者を送った事が織田家にとって良い流れになっています。ご隠居様も御当主の考えに賛同したそうです。

 次に武田家ですが、錦の御旗は驚きは与えましたが良い関係を両家が保っている為に容認するに至りました。また和泉国の海沿いの領地に朱印船貿易と織田家と組んで良かったと武田家御当主達首脳陣は考えているみたいです。それと武田家の家督相続ですが勝頼様がお世継ぎになり、義信様は今川家との関係を考慮され、出家の後に和泉国の領地に赴任される事が話し合われている見たいです。ただその場合でもお飾りである事が決定的だと思われますが・・・」

 次に斎藤家ですが、武田家とほぼ同じです。

 また北条家と上杉家は追って報告させて頂きます」


テキパキと報告していたのだが。


「それと申し上げ難いのですが・・・」


・・・

・・・

・・・


表情が一瞬変わったのがわかる。


「若手の織田家家臣達に木下様に対する嫌悪感が感じられます。身辺をご注意して頂きたいと思います」


「うそぉぉぉ」


小一郎は間抜けな声が出てしまう。

まさか、身内にこんな事を思われるとは・・・・


「そんな事では困ります。若手の家臣達は戦に出ないのに評価が高いのが許せないといっているのです」


戦での槍働きか・・・・・・「脳筋か!」

思わずつぶやいてしまう。

この時代にもやっぱりいるのか、全てを筋肉で解決しようとする人種が・・・いやこの時代だからかと一人納得するのであった。






「ご無沙汰しております。

 濃姫様!」


小一郎は、清須城である方に面会を希望して本日無事にお会いする事が出来た。


「して小一郎、珍しく妾に面会を求めて来るとは・・・」


「はっ、濃姫様に是非ともお聞き届けて頂きたい事がございまして・・・」


穏やかな雰囲気で上座に座られているが、目線が痛い。

正に蛇に睨まれた蛙の状態だ。

流石、マムシの子はマムシであった。

しかし、小一郎も引くに引けない濃姫様しかこの件では頼れないからだ。


「濃姫様、此方を・・・」


そう言いながら、脇の者にサトウキビを渡す。


これはとの問いに「甘蔗であります」と答えて「この茎の汁を絞り出して火にかけると砂糖が出来上がります。今の状態でも切り口をなめて頂ければハッキリと甘みを感じる事が出来ます」


「ふむ、それは良い。

 ただ、どうして妾の所に甘蔗を持ってきたのじゃ?」


「はい、其れは殿が甘党の為に献上すると、後先考えずに砂糖を食べるようになると思われるからです!

 何事も食べ過ぎは良くありませんし、大陸の言葉で医食同源と言う言葉もございます。ですから殿の砂糖の食べ過ぎをさせぬように、濃姫様に管理をして頂きたいのです!」


「・・・そうですか・・・確かに食べ物に関しては殿は家臣の言葉を聞かぬでしょう。ですから妾ですか」


「はい、是非ともよろしくお願いします」


頭を板間にへばりつけて、お願いしています。


「して、小一郎もしこの話を断ったらどうするつもりだったのじゃ」


「はい、最悪は献上するのを止めて、商人に全て売り払おうかと思っておりました」


「それでは、妾も楽しめぬという事じゃな」


「はい、その通りでございます」


「分かりました、この件お引き受けしましょう」


「はっ、有難うございます」


・・・(ほれほれ)

・・・(ほれほれ)


「・・・ほれ小一郎や、魚心あれば水心と言うではないか・・・」


扇子で口元を押さえて笑っている。


「おっと、これは失礼いたしました。

 此方をお納めください」


そう言って、桐の箱に入った尾張積木を献上し遊び方を説明した後に席を後にするのであった。

因みに、小一郎が去った後に濃姫様のお付きの者が「甘い」と言った濃姫様の小さな言葉を聞いたとか、聞かなかったとか・・・


「待たせたな」


殿の私室での面会である。

前田殿(ぎりのあに)と一緒に訪れている。大広間で面会しないのは密談の為でありまだ公表できる話ではないからである。

そして前田殿(ぎりのあに)から話し始めた・・・


「殿、尾張や伊勢志摩の各州の寺から援助をしてくれと嘆願が届きだしました」


ニヤリと笑う殿がいた。

お寺の力を削ぐ、宗教一揆などを起こされたらたまらないからだが、三公七民を提案(却下されてから)してから13年が経ち、やっと当初の目的を達成が近づいて来たのだ。


「次の手は?」


「寺領を放棄した寺院には、補助金(運営資金)を付けてひも付きにしたいと思います。

 あとは手綱を握れば・・・」


前田殿(ぎりのあに)の表情がダークに染まっている。誰かの影響を受けまくったせいかもしれない。


「良し分かった、後の事は任せる」


「はっ、かしこまりました」


「あと、話があるのであろう小一郎」


「ご明察、有難うございます。

 殿、ご提案がございます!」


ダークに染まっていない小一郎の提案には、殿も驚く事がなくなっている。


「朱印船貿易が大成功を治めましたので、二匹目のどじょうを狙いに行きたいと思っています。

 朝廷のご許可の上ではありますが、琉球との交易を始めたいと思います」


「意図を聞いても良いか」


「はっ、朱印船貿易よりも回数が行える琉球との交易により同盟国をより利で纏めたいと思っております。

 その上、補給基地となる、四国の大名家と九州の大名家ともよしみ(交易)を持てるのも強みになると思っております」


・・・腕を組み考えた後に。


「誰に任すのだ、三雲も九鬼も手一杯だぞ」


「はい、佐治殿にお願いできないかと考えております。

 最初は、朝廷の使者も同乗するでしょうが後々の事を考えれば、朱印船貿易が旨く行った今だからこそ打てる手ではないかと思っております」


「そうだな、では段取りはそちに任す」


「はっ

 それと、殿・・・一つお願いがございます」


「小一郎が珍しいな、聞こう」


「はっ、現在の村井組は人手不足で困っております。

 付きましては、人を頂きたいのですが、お願い出来ますか」


小一郎と前田様(ぎりのあに)の二人がお願いモードである。


山城国に摂津国、和泉国が領地として増えて、てんてこ舞いの状態だからだ。

この二国が安定すると、織田家は増々経済的に力を持つこと風出来るからだ。


「そうだの~」


殿も顎に手を当てながら考え込んでいる。


「小一郎、具体的には誰が欲しい!」


「はっ、お願い出来るなら、丹羽殿・太田殿・塙殿・中村殿を配置換えして頂きたい。

 これだけの人材が揃えば、山城国に摂津国の安定が速やかに計れます」


「う~ん・・・」


そこには思わず唸る殿がいる。

丹羽殿は無理とわかっていても、即戦力が欲しいと思う小一郎が思わず名前を挙げたのであった。


・・・

・・・

・・・


「善処しよう」


何とか言葉を絞り出して殿との会談は終わったのだが、その時には普段殿の私室にての会談時には小姓は同席しないのだが、今回初めて同席をしていた。後になって分かった事だがこの小姓は堀秀政殿で後に名人久太郎と呼ばれ殿が将来を嘱望した若者であった。




つづく。





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