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1565年-3

「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


京に到着した小一郎の第一声だ。

佐久間様から聞いてはいたが聞くと見るでは大違いで、応仁の乱で荒れ果てたとは聞いていたが地元の人に改めて聞いてみるとそれだけでは無かった。

1532年山科に本拠を置く本願寺が法華宗と争い炎上焼失。本願寺は大坂石山に本拠を移した。そしてこの時は勝者であった法華宗が、4年後には逆に攻め込まれ比叡山延暦寺の僧兵が都にナダレ込み法華宗の寺をことごとく焼き払い、このとき下京は全焼に上京も1/3が焼け落ちたそうだ。

そんなこんなで御所はホロボロで塀が崩れていて出入りも可能なぐらいで、こんな所で帝は生活をしているのだ。

その上、統治者がコロコロと変わり復興?それ美味しいの?状態でこの都は権力争いに巻き込まれたままで、そしてそれは力こそ正義の時代を表していたのであった。


驚きは小一郎だけではなく、親方も増田君・九鬼君も感じていたのだが・・・解決策が直ぐに見つかる訳無く“いま、出来る事をしよう”と4人で話し合い、重要地点の現地確認の他に京(上京・下京)の現状確認の仕事が増えたのであった。




霜月に帰国した小一郎達は、さっそく山城国を領地にした時の都の復興計画の草案を相談している時に殿から呼び出しが・・・


“お呼びですか?”村井様と一緒に急ぎ大広間に。

大広間は家臣達の言葉が飛び交っている。一体何があってこの様な事態に・・・

殿の側まで呼ばれて手紙を村井様に手渡された。

ざっと目を通した後に、村井様の表情もハッキリと変わる・・・そして殿とアイコンタクトの後に手紙を渡され急ぎ目を通す。


「殿・・・」


松永殿からの手紙の内容は今後の織田家の行末を揺さ振るものであった。

内容は、松永殿に三好本家(三好家当主+三好三人衆+重臣篠原殿)より絶縁状が届き三好家が内戦に突入する状況となり、その対抗策として織田家と松永家と畠山家の三国同盟を締結!共同戦線を張り三好家(御当主+三好三人衆+重臣篠原殿)に対抗しようとするものであった。


予想通りの展開だが一つ大きな問題がある。これをどうするかによって織田家の進む道が決まる!

殿の決断次第か?そう思う小一郎はすぐさま殿に決断を迫ろうとする!

普段と表情が雰囲気が一変しだした。ダークモードが発動したのだ。

そして、それに触発されて殿の六天大魔王モードも発動!他を圧倒する二人の存在感であれほど騒がしかった大広間に静寂が訪れ張り詰めた緊張感が場を支配した。

重臣方が息をするのも躊躇って、二人を注視している。


「殿、お伺いします。

 天下を狙われますか?それとも足利幕府の忠臣として織田家を導きますか?又は中立を保ちますか?」

(注 室町時代後期「天下」は元々の意味以外に京都を中心とした周辺地域という意味でも使われていた)


「殿!」


小一郎の決断を迫る問いに、ニヤリと笑う殿がいた。


「小一郎、天下を取るぞ! 策を示せ!」


「ハッ!  では、申し上げます」


殿の即答に小一郎は、半ば嬉しそうに語りだした。


「まず、近場の大身の大名に使者を出します。浅井家、斎藤家、武田家に上杉家、北条家、今川家あと・・・朝倉家に使者を出し不義を働いた三好家を打倒する為に兵を挙げる事を伝えて、出兵依頼(少数で構わないから)と同盟の締結を目指します。別に結べなくても良いのです。我が織田軍は義によって立つ事を広める為です。もし、反対を表明したなら"我々の代わりに三好家を討伐して頂けるのですね!"と"是非お願いします"と言って持ち上げて頂けたら結構です。その後の言葉は出てこないでしょうから!また、役割は都の治安維持の為と言って頂きたいです。今川家とはこの機会に、関係修復を図り同盟を結べたら万々歳ですね。そして、出兵は来年の農繁期に電撃的に行います。速やかに進軍して山城国入口に防衛拠点を建設して敵の援軍を阻止します。それとは別に三好方の各城を包囲して籠城戦を仕掛けます。兵の損耗は極力控える形で!それから都の奪取と治安の回復を最優先で!同盟国からの援軍は都の治安維持に当たってもらいましょう。先ずは山城国を支配下に置きたいと思います。」

「その後、錦の御旗を掲げて進軍、三好家(三人衆達)を畿内から追い出したいと思います」


「あと、この戦は織田家の国力を総動員しての戦いになります。細部に至っては重臣方で詰めて頂けれは幸いです」


「では、皆の者この作戦案に意見を聞こう!」


し~ん・・・

・・・

・・・


この様な展開を予想だにしていなかった重臣方は、何も答える事が出来ない・・・が。


「殿、小一郎の戦略は非の打ちどころがありませんな、後の戦術はこれから話を詰めなければなりませんが作戦はこれ以外ないでしょう」

「義の為に立つのです、同盟国や他国は我が織田家を責めることは出来ないでしょう。

 さすがは、織田家の張子房殿ですな!」


筆頭として佐久間様が発言されるが・・・張子房は前に殿が冗談で言った事であって持ち上げ過ぎである。しかし、後にこの話が広がって行き木下小一郎=織田家の張子房と呼ばれるようになるのであったが、小一郎はひたすら否定するのであった・・・


「小一郎「はっ」この後はどの様に動くのかな」


引き続き佐久間様の仕切りで、今後の動きを聞かれると・・・


「はい、まずは募集します。常備兵と役人・工作兵を大量に募集!織田家の兵力6万(内輸送隊5千人)役人も1000人と工作兵も800人は最低限それだけの人数にしたいですね。

 そして、これらの運用で天下を治めたいと思います」


「小一郎、堺はどういたす?」


村井様の質問である。


「はい、堺はそこまで気にしていません。自治を貫くもよし、織田家と同盟を結んでも良いし傘下に入れても良いと思っています。

 畿内が織田領になれば津島・熱田・大湊・松阪・近江の商人達が関銭無しの恩恵を受けて稼ぎまくるでしょう、関銭を支払わなければならない堺商人との競争力の差が直ぐに表れると思います。ですから気にしなくてよいと思っていますし、もし三好家と組んで畿内を奪還しよう物なら潰すまでです」ニヤリ


「「「「「「堺を潰す!!!」」」」」」


殿を含めた全員が驚きを隠せない。


・・・

・・・


「木下殿、宗教関係はどの様にいたす所存かな?」


少し間を取り雰囲気が落ち着いた頃に蒲生様から質問がきた。

比叡山や本願寺の事が頭にあるみたいである。


「はい、そちらとは敵対せずに気が付いた時には、織田家に従うしかない状態にしたいと思います。

 具体的には、寺領の年貢は6公4民か5公5民に門前町の税ですが、対して織田家の3公7民!これが普及すれば10年から20年後には寺領から民が居なくなり巨大組織は維持が出来なくなると思っています。事実尾張の寺院たちはもう既に青息吐息で寺の運営をしています」


これは岡本殿(ぎりのあに)からの報告で助けてくれと相談がチラホラと出て来ているからだ。


「では、言いがかりを付けられればどうする?」


「はい、その件は岡本殿(ぎりのあに)に窓口になって頂き、現在も対応して頂いているのでご心配は無用かと、もし逆上して力で現状の打開を図ってきたらこちらも力で押し返すのみですが、帝に奏上して禁教令を出して頂く事も考えています」


「「「「「「禁教令だと」」」」」」


重臣方に動揺が再び走った。小一郎がここまで思い切った事を考えているのか!そして皆が思ったこの男ならやりかねないと。


「小一郎殿、防衛施設を作り相手の援軍を阻止すると言っておったが、どこで作るつもりだ!」


今度は、柴田様だ。


「はい、防衛施設は山崎城の眼下に鳴海の関所を超える防御施設を作りたいと思っています」


「では、防御施設を迂回して来たらいかがいたす」


「それが狙いです。防衛施設を迂回する事は淀川の対岸に敵がいる事で、こちらに攻め入る時には川を渡る必要が出てきますが、川を渡る事が出来る浅瀬にて迎撃、敵方は進退に困る事でしょう」


「また、渡河をする事は、同盟国(予定)である大和国の松永殿の軍に背を向ける事となり、挟撃される恐れを抱いて戦をする事になるでしょう」


「其処まで計算に入っているなら、ここから細部を詰めるので問題無かろう」


それから色々な角度からの話し合いがもたれて、小一郎の示した戦略を戦術に落とし込み家臣団での意思統一を図る事が出来た。


「では、皆の者!先ずは人員の確保から動くぞ!

 そして、新年を迎えたら年始の挨拶で各国を訪問する、良いな!」


「「「「「「「「「ハッ!」」」」」」」」


「次に・・・」


殿の指示のもと作戦が動き出した!

家臣達の目がやる気に満ちている。殿の天下を目指す!その言葉に感化されているからだ。

その事で、巨大になった織田家だが向かう方向が決まり家臣達がその方向に走り出した。だからこの作戦は失敗が出来なくなってしまった。この作戦が失敗すると殿の求心力の低下を招き新しく召し抱えた家臣達の動向が怪しくなってくるからだ。知らず知らずのうちに小一郎には重いプレッシャーが掛かって行くのであった・・・



つづく。






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