1565年-2
「重大任務です。弥七殿、政秀寺の警護よろしくお願いします。
あと、武田家と今川家、斎藤家の動きもおかしいと感じたら報告して下さい」
“では”と言って消えていく弥七殿と見送ると入れ違いで服部殿がやって来た。
「お呼びですか?」
「ご足労かけます」
“早速ですが”と言って語り出す。
服部殿にお願いするのは、織田領に幕臣が覚慶様を探しに来たら捕獲の件である。
この四人の幕臣(細川藤孝殿、三淵藤英殿、和田惟政殿、一色藤長殿)が要注意人物である事を伝えてお願いする、。あと三好家領に人を入れて情報収集をお願いする。
ただ、結果をお伝えすると幕臣達は奈良の興福寺を訪れてた時には、覚慶様はどこかに連れ去られていたのだが事態の状況から三好家が覚慶様を抑えたと思い秘密裏に三好領を探し周ったそうだが空振りに終わる。しかし諦めずに捜索は続行されているらしい。ご愁傷様です。
そして、その頃になると各地の大名の反応が伝わってきた。上杉様や武田様に今川様は激怒!荒々しい言葉で三好家を非難したそうだが、実際の行動は何も起こさなかった。
三好家と隣接している領主達は反対に何にも反応をしていない、三好家のこれからの行動に神経を尖らせていた。勿論織田家もだ!どの家も三好家の動向を探る為に人を送り込むのである。
それから、帝が三日間のあいだ喪に服した。朝廷の対応は其れだけで足利義輝将軍と朝廷との冷めきった関係が垣間見えたのである。
「何かお探しかな?」
休みをとって千熊丸と一緒に津島に来ている時の事だ。
その漢はにこりと微笑んでいた。
「おぉぉ、九鬼殿!ご無沙汰しております」
千熊丸を紹介してから。
「千熊丸殿、ワシらの船を見に行かんか?」
ごっつい顔の海賊が優しく微笑んでいる。
九鬼殿は小一郎にアイコンタクトで話がある事を訴えているから、キラキラと目を輝かせる千熊丸に“いいよ”と言って九鬼殿の船に。
「野郎ども、出航だ!」
海賊達が親分の一声で出航へ、千熊丸は興味津々で目は増々キラキラと輝いている。
"千熊丸殿に色々教えて差し上げろ"と案内役を付けて小一郎と九鬼殿は船室に(密談するには最適です)
「木下殿、遅くなったが甘蔗の苗を10本手に入れる事が出来た。届き次第家に届けようと思う」
「有難うございます」
思わず出る大きな声、そして、手を握りブンブンと振って喜びを表している。小一郎には非常に珍しく九鬼殿も驚いていた。
「それでだ、倭寇の親方が今回の事を縁にして取引を持ち掛けて来たんだ・・・ど「乗った!」うする?」
「即答か・・・」
九鬼殿も呆れて言葉が出ないが、らしいなと思う。
そして、具体的な話を詰めながら、表の貿易は三雲様で裏は九鬼殿これで足りない硝石や珍しい南蛮品を手に入れて、武力に外交に力を発揮してもらおう。
「では、始めます!
只今より、新作の種子島のお披露目をさせて頂きます!」
織田家の射撃場に殿と重臣方(佐久間様・柴田様・蜂屋様・平手様・蒲生様・三雲様・後藤様・関様)が来られている。あっ信光様と信広様もいらっしゃってます。
信光様は面白い事が起こるとワクワクされていた。
事の起こりは、水無月に鉄砲鍛冶の権六殿と太朗殿が“例の物の試作品が完成しました!”と報告があり善は急げで今回のお披露目となったのだ。
「では、滝川殿お願いします」
ぱぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんと轟音を立てて発射せれる。
そして、的の鎧に見事命中!
「これが、新作(中筒)の威力です」
鎧を見ながら説明していると。
ワナワナと殿が震えている。殿も種子島を扱われるから解ったが貫通した穴の大きさが違った。そう殺傷能力が格段に上がっているのだ。重臣方は何が???の状態だ。
「小一郎ー!」
殿の大声が響き。
「こんな物を作って何をする気だ!」
「はっ、これからの種子島はこの大きさを標準にしたいと思っています。
今、使用している種子島は防ぐ手段がございます」
「なんだと!」
「はい、其れも何処の山でも手に入る物で対策が出来ます。ただ、その事に誰も気が付いてないだけなのです」
「それは、どんな方法だ」
“それは秘密にさせて頂きます”と会話を無理終わらせて滝川殿に合図をすると!
「では、続けます。着剣!」
「「「「「「「「着剣????」」」」」」」
全員が目を見張っている。種子島の先に一尺の刀を付けて短い槍になっている。
「ほぉ、おもしろい!」
腕を組み顎に手をやりながら唸る信光様。
今まで種子島に剣を取り付けする発想は無い。しかしそこが面白い!全員が個々に話している。
「次、お願いします」
別の新作種子島がお披露目されたそれは城での防衛専用の種子島である。
従来型より長くて重いが、射程距離が2倍から3倍ある種子島で城の狭間に依託して射撃する種子島である。
“こんなのもあるのか”と驚きながらも全員から好評を得る。
「では、最後をお願いします」
最後は普通の種子島が出てきた。
準備ができ“打てぇぇぇぇぇ”滝川殿の声が響くと・・・パアーン!と先程の火縄銃と比べるとかなり小さな音がした。最後の銃はシャンパンを開けた時の音より少し大きい発射音であり、火薬を使う火縄銃の爆発音とはかなりの違いがあった。
「これは、小音型の種子島です!」
“小音型”と皆がつぶやくと殿の目がランランと光り色々聞きたいと、目が語っているが。
「小音型の種子島に付いては、織田家の秘密事の為に詮索は無しでお願いします」
「殿にもか?」
「はい!」
ワシ・・・殿なのにといじける殿の顔が・・・
しかしにっこりと笑顔で返す。前代未聞の織田家当主にも話せない織田家の秘密である(笑)
さて、小音型の種子島と紹介した新型の種子島だが実際には空気銃であり、史実では、江戸時代に輸入され少数ながら生産、そして暗殺を恐れた江戸幕府が作る事を禁止した曰く付きの代物でそれを無理を言って形にしたのである。ただ小音型の種子島の長所は、雨が降っていても射撃ができ火薬を使って無いので煙で視界が悪くなる事がないだが欠点もある、それは威力が低いのだ現在織田家で使用している種子島(小型)より劣る事であった。それと現在の性能では一回の空気の注入で三発撃つ事が出来るが撃ち終わったら再び空気を貯めなければならず連射性能も要改善が期待がされるのであったが、それらを踏まえても織田家の秘密兵器であり、小一郎は小音型を配備した狙撃専門の騎馬鉄砲隊の創設を目指すのであった!
「では、これにてお披露目会を終了致します。
皆様、これは織田家の最高秘密です他言無用でお願い致します!」
深々を頭を下げてお願いして全てが終わると、三雲様に呼ばれて殿と会談に・・・
「木下殿、あんなモノを見せられてはワシも気張らんとな」
ガハハハッと笑い声が響く。
「ゴホン では・・・殿!貿易いや朱印船の準備が整いました。
あとは殿の許可だけです」
すっと、首を下げて殿の最終許可を願い出ると即答で許可!出航する事にその後貿易の件で殿に報告した後に、三雲様は退席していった。これで織田家による表の貿易の始まりであった。
「殿、ご報告が御座います」
三雲様が退席した後に物静かに話し出す。それは先日の九鬼殿から話のあった倭寇との貿易の話で表の貿易は三雲様が!裏の貿易を九鬼殿が!それで硝石を手に入れ種子島の運用を確実にしたいのだ。ちなみに輸出品は海産物、民芸品、日本刀に火縄銃である。殿達に種子島を輸出品にと話した時には驚かれたがこの時代でもメイドインジャパンである。倭寇の頭に試し撃ちをしたら違いが分かるから試射をお願いしてます。あっ輸出の種子島は今織田軍で使っている小砲です。はい。
あとは、帰ってくるのを楽しみ待つとしようか。
嵐の前の静けさか?将軍が不在でも何も変わらない、いや変わらなかった事に綻びが・・・
「木下様」
文月に入った頃に服部殿が報告に現れる。
「三好家が丹波国で敗退、三好家の重臣の内藤殿が討死されたとの事、この事によって三好家の丹波国での影響力が低下、波多野家などの国人領主が勢力を盛り返した模様」
「マジか・・・・・・」
腕を組み考え込んでしまう小一郎、それもそうだ内藤殿(松永殿の実弟)の討死など完全に知らなかったのだ。
前世の史実ではこれから三好家は畿内の主導権争いをして内戦へ・・・三好三人衆+重臣篠原殿vs松永殿で、確か畠山家が後に松永殿と同盟を組み参戦するして畠山家は河内国復帰をめざしたと思うが、内藤殿がいなかったとは・・・
ではどうする。松永殿と手を組むか?三好三人衆と手を組むか?中立?史実通りに進むとは思えない・・・服部殿には引き続き情報収集をお願いする。特に三好三人衆と松永殿の動きを探ってもらえる様に。
松永殿は最低でも同盟、戦況が悪ければ臣下になるから守ってくれと言ってくるだろう。
今から準備をしなければ、足利義栄様が阿波から畿内に来て松永殿の討伐令を出す前までに!
「では、行って来ます」
千熊丸とさきにおかあの見送りを受けながら、殿と村井様には無理矢理許可を取り付けて親方と増田君、九鬼君の4人で山城国の現地視察に出発するこれも転ばぬ先の知恵であった。
つづく。




