1565年-1
誤字報告有難うございます。
「さむい」
年が明けて、伊賀に向かっています。
メンバーは、自分に親方と九鬼君の3人で増田君はお留守番である。自分の代打で書類に埋もれてもらっています。九鬼君を連れて来たのは色々な経験をさせる為です。
「お待ちしておりました、木下様」
伊賀街道で迎えの武士が寒い中に待っていた。
もう行動が筒抜けです。(伊賀忍者恐ろしや)
「ご無沙汰しております」
大広間には、百地殿・服部殿・藤林殿の3人がいる。
嫌でも緊張してしまう。
雑談を少ししたあとに・・・
「ゴホッン!・・・
木下殿、そろそろ本題をお伺いしようか?」
百地殿の一言で場の緊張感が爆上がりだ。
緊張でゴクンと唾を飲み込む・・・
小一郎も百地殿・藤林殿・服部殿も緊張している。いや来るべきものが来たかそんな感じだった。
「では、お言葉に甘えて・・・」
改めて姿勢を正して、語り始める。
藤林殿、服部殿、百地殿の三人は来るべき物が来たと身構えた・・・
「当家では、情報収集能力向上の為に腕利きの忍びを家臣として募集いたします。
給金制にはなりますが、武士として取り立てます!
伊賀衆に仕官して頂けないでしょうか?」
「「「はぁ?」」」
反応がおかしい?ちらりと3人を見ると、肩透かしを喰らったみたいに目が点に。
・・・
・・・
・・・
「そっ そうか そうか」
何故か“ほっと”している3人に「どうでしょうか?」と再び訪ねてみると。
「そっ そっ そうだな非常に興味深い話だな・・・だが、これは全員での話し合いが必要かのぅ」
「「そうですな」」
少し動揺しながらも三人の意見が纏まり、翌日に返事をする事で話が付いた。
あっ、忘れずに雇用条件をしっかりと提示!三人の目がキラリと光ったのは確認済みです。はい。
その後に伊賀惣国一揆の全員で話合い?がもたれて・・・色々あったそうです。
それと、小一郎達は・・・女中方の熱い視線に負けてあんこ作りを始めたのであった。とほほ
「昨日の木下殿からのお話だが・・・」
次の日の朝早くから伊賀惣国一揆の代表が集まっている。皆一様どことなくソワソワしている。
代表して服部様が・・・
「正成を頭とした、伊賀惣国一揆の希望者を召し抱えてもらいたい!
よろしいかな!」
「有難うございます」
小一郎は、頭を下げて胸をなでおろす。
これで難題の一つが解決したからだ。
敵を知り己を知ればであるからだ。
正成殿とご挨拶させていただき、今後の事は後程打ち合わせでと話を切り上げると、代表三人が何か思いつめた表情でこちらを見て来る・・・
「木下殿・・・お伺いしたい事があるのだが!」
意を決して服部様が語りだす。
「織田殿は我らをどの様にする気かな?
これだけの大国になっても何も言ってこない。今までなら何かの圧力を掛けてきて傘下に収めようとするが、そんな事もない。織田様は伊賀を我らをどの様にお考えか?」
「その事ですか・・・殿は伊賀と仲良くしていきたいとお考えです。
自分も同じですが、伊賀国の伊賀惣国一揆がお望みならば織田家同盟を結びましょう!また、近江
の高島七家の様に傘下にと臨むならそのように取り計らいますし、甲賀郡中惣の様に家臣となりな
がらも甲賀郡の自治権を持ち織田家と共に歩んでいただけるならそのように取り計らいます。
本当に伊賀惣国一揆と良い関係を築きたいのです」
(だってその気になれば、織田方の武将はほとんど暗殺されるよね、怖くて言えないけど)
史実では、織田方の伊賀侵攻後には伊賀忍者は織田の仕事を受けていない。この事での情報収集能力の低下は大変な事であっただろうと容易に想像がつく。こんな問題は起こしたく無いのである。
「ですから、お心がお決まりになればご相談していただければと存じます」
そして、会談は終了して今度は服部正成殿と今後の打ち合わせをして伊賀を後にする。
今回もあんこ作りに頑張った成果が女中さん達の見送りである。甘味のおかげで伊賀に来ると待遇は非常に良いのだ!買収の成果はしっかりと出ている(笑)また今後伊賀の方向性を決める為に正成殿から相談があるだろう。
それから、甲賀に近江の中山城・三雲城・観音寺城に日野城などを回り内政の困りごとを解決して、如月の終わり頃に帰宅をする。すると、家族が一人増えていた。
実は、さきがお仕事に打ち込んでもらう為に、知らせようとしたおかあを止めていたのだった。
千熊丸が非常に嬉しそうで本人もお兄ちゃんになった自覚があるみたいで、おかあやさきから“お兄ちゃん”と呼ばれるとニコニコとしているのである。
ちなみに子供は女の子名前は初です。
千熊丸と一緒に元気に育ってほしいと強く思うのであった。
出張より帰って来ると、人事異動があって義兄村井貞成殿と義兄村井清次殿と九鬼澄隆殿が正式にチーム村井入りしたが、丹羽殿が殿付きとなり三人が慣れるまではまた大忙しだろう。
しかし、良い意味で予定外は起こる。小一郎がいない間に増田君が覚醒!内政のスペシャリストの道を歩み出したのだ。頼りにしますよ増田君。
内政を増田君に任せながら、塩水選のやり方に糸瓜の栽培の為に伊勢志摩の村々に人を派遣して説明会の開催を指示した。糸瓜の栽培に手を付けないと血を見ますね、商人は怖いから・・・あと近江にも広げたいが人手が足りない。塩水選は来年度に実施の運びとなった。
「木下様、よろしくお願いします!」
弥生に入って服部殿と御一行様が到着!早速仕事に・・・
「小一郎!」
仕事を抜け出した殿が逃げて来た。
「殿、丁度よかった。伊賀より仕官してくれた服部殿達です」
「信長だ!よろしく頼む」
「服部、小一郎の与力を命ずる!期待しておるぞ」
「ハッ」
早速、仕事に入ってもらう。
「では、早速だが仕事をお願いします。
京に人を入れてください。そして足利将軍の情報と六角家の当主や一族の動向を調べてください・・・
それと・・・覚慶様の所にも人を入れて何か異変があれば保護してください。
お願いします」
「奈良の興福寺ですか?理由をお伺いしても良いでしょうか?」
「心配のし過ぎだと思うのですが、念の為です。
それと大和国の状況も調べて下さい。アッそのついでに覚慶様の回りを固めてくださいだったね。
ワハハ順番が違いましたね」
あくまでも、大和国の状況が知りたい事にして"頼みます。でも引っ越しが済んでからでいいですよ~"と話してから別れた。
史実では、足利義輝は1565年に遠行(討死?)されている。助ける気はないが、その取り巻きが覚慶様を確保して将軍に祭り上げようとするだろう、それを防ぎ一生仏門で過ごしていただく14代様(足利義栄様)は確か・・・ご病気で長くないはず。だったよね。だから下手に還俗されて引っ搔き回されるのを避けたいのだ。
足利幕府がなくなり、朝廷の公家衆を親織田派で固めれたら、外交上有利な状況を創り出せるだろう。
そして、小一郎は弥七殿に頼み、今川家と武田家に人を入れてもらい情報収集を依頼。今後の為に先手を打ち情報収集に努めるのである。これで先日の大事の情報を見落とすことは減るであろう。そう思う。そうなればいいな。なってほしい。ですはい。あっ、あと伊賀忍者と饗談の西と東で棲み分けも完了しました。
「木下様」
走り込んでくる服部殿に焦りが見えている。
「足利将軍が弑逆されました」
落ち着かせてから事の起こりから話を聞く。
それは、永禄8年卯月(旧暦)の事で清水寺参詣を名目に集めた約1万の軍勢を率い二条御所に押し寄せ、将軍に訴訟取次ぎを求めて御所に侵入したとの事。そして三好側の意図は側近たちを排除を目的として政治的要求を行うために御所を包囲するいわゆる御所巻を行うが、その条件が吞める物ではなく戦闘に発展した可能性があります。
黙り込んで、報告を聞く小一郎。
「しかし将軍は後ろ盾も無く、最後は将軍の意地か・・・
それで、覚慶様は?」
「配下の者が、保護したと連絡が入っております」
「では、速やかに尾張の政秀寺に匿う、至急お連れしてくれ」
「はっ、では御免」
あっという間に音も無しに消える忍者服部殿、さすがだ!
急ぎ清須に登城、人払いをしてから・・・
「殿、至急お話したい事が・・・今しがた、忍びより至急の知らせが入りました!
足利将軍が弑逆されたとの事」
「・・・・・・・・・・・」
事の顛末を報告後、流石の殿も唖然とするしかなかった。
しばらくの沈黙の後で毅然とした態度で。
「小一郎、道を示せ!」
「はっ」
そう言って小一郎は語りだす。物静かだが強い意志を込めて!
「今は、このまま何もしないで織田領の充実に力を注ぐべきです。
「ただでさえ南近江を手に入れたばかりです。今は力を蓄えて、実った柿が落ちるのを待つのが得策と考えます。現状は覚慶様を匿って、三好一派や足利将軍の側近から切り離すのが第一です」
「では小一郎は時期が来たら、覚慶様を旗頭にして上洛!足利幕府を立て直した功労者を目指すのか?」
「いえ、覚慶様には一生御坊様としてお勤めいただき、もし機会があれば還俗し足利の血筋は残しても良いかと思いますが、足利幕府は寿命を使い果たしたと思っています。今後はまた新しい統治体制の確立に力を入れなければなりません」
「統治体制?」
「ハッ、自分の理想を申し上げます。それは帝親政の国です。
その下に公家と大名達の議会を設置して、この国の方針を決めて帝が承認する形でこの日ノ本を一つの国と考えて治めていきたいと考えています。
ただ、足利義輝様の側近達が覚慶様を見つけると三好家討伐を叫び、新しい将軍に覚慶様を付かせて権力の中枢に居座ろうとするでしょう。そして自分の構想を潰しに来るのが分かっている為に絶対に秘密にしなければなりません。あと、忘れてはいけない事があります。足利義輝様と側近達が六角家と北畠家をけしかけて当家を潰しに来たことを、ですから織田領に入り次第確保したいと思います」
殿は腕を組み眉間にシワをつくり流石に黙り込む、まさかここまでの話をされるとは思っていなかったからだ。
そして、帝と足利幕府による二重の権力構造の為に帝が禁止したキリスト教の布教を、足利幕府が認めるこんな事が二度と起こらない為の親政でもある。
あと、公家たちに山城国の一部を領地にして自分達で治めて貰おう。それをする事で統治の難しさを肌で感じてもらう。それと京は帝が統治するこれは大事な事だと思う。
そんな事を思いながら、殿との密談は続くのであった・・・
つづく。




