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1564年-1

誤字報告ありがとうございます。

「滝川殿、お疲れ様でした」


年も明けて寒い中、僕と滝川殿と親方と増田君の四人は甲賀郡中惣を訪れていた。

勿論、織田家に付きませんか?と引き抜きである。

ただ、甲賀郡中惣は自治組織である為に、合議で物事を決める為に時間が欲しいと言って即答を避けたのだ。

史実では、観音寺城の戦いの後に脱出した六角親子は伊賀の石部城を拠点に対抗するので、先に逃げ道を奪うのである。ただ、今日の感触はイマイチであったが拒否されるのではなく“えっ自分達に・・・”と驚きが勝っているみたいであった。まぁ急がずに行こうか(時間は無いけど)

甲賀の後は伊賀である。その足で伊賀に向かい伊賀惣国一揆の方々と面会、此方は非常にフレンドリーで(特に女中さん方に)穏やかに話は進むが肝心な所は濁した。交渉上手であるが伊賀惣国一揆に選択肢は無いのである。


「木下様・・・」


出張の後、帰って来るのを待って弥七殿がやって来た。


「六角家の六宿老家に接触を図り、手紙を渡せました」


「ありがとうございます。ではその事を一人づつ噂にしてください」


“えっ”驚く弥七殿にお構いなく誰々が裏切るとか裏切らないとかを、一人ずつ順番に噂話にして欲しい。小一郎曰く"裏切って貰わなくて良い"と言われて!?である。


「木下様何をお考えで・・・」


「観音寺騒動再び!」ニヤリ


悪い顔の男が二人、フフフと笑い合う。

その後、六角家の領地では重臣の○○が裏切るとか、織田方の調略があったとかありとあらゆる噂が流れるのであったそうな。



「殿、ご提案がございます!」


弥生も終わりの頃の話だ。

"おっ来たな"と言う表情の殿。

"お人払いを"お願いして殿と、清須に居た佐久間様の三人になると・・・


「殿、陽動作戦をいたしましょう、新兵の訓練も終わりどれぐらい仕上がったか確認しましょう・・・実戦で!」


「「はぁ」」


「はい、八風街道を新兵1万で進軍し、攻略目標は日野城でどうでしょうか?」


「それで落ちるか?」


「落とすのが目的ではありません、あくまで陽動です!」

「其れと、新兵の仕上がりの確認を兼ねて!」


「ふむ、それで・・・」


「落とす必要はありません、狙いは六角家の目線をそらす事で真の目的は千種街道整備と防御施設と仮設倉庫の建築です」

「あっ、東海道と八風街道の防御施設にも仮設倉庫を作ります」


「小一郎、倉庫など作ってどうするつもりだ!」


佐久間様の疑問である。


「それは・・・」


小一郎は話し出す。

対六角戦において、尾張や伊勢からは距離がありすぎる為に以前の北勢に攻め込んだ時や対北畠戦とは違い距離がありすぎ補給を円滑に行う事が不可能です。ですから街道の防御施設に補給基地を作り本気で六角家を潰しに行きます。


「小荷駄で大量に運べば良いではないか、又は現地調達(りゃくだつ)すれば良い」


佐久間様の言葉はこの時代の常識でもある。


「ではお伺いします」


と切り返す。勝ち取った後の六角領はどうなさいますか?


「治めるにきまっておろう」


当たり前の事をと表情に出ているが・・・


「恨みを持たれて何時裏切られるか判らない民を従えるのですね! 

 尾張からの援軍はすぐには来ませんぞ!」


と目を見据え語った。


「・・・・・」


言葉に詰まる佐久間様。そして再び語りだす。大国の六角家と戦う為の常備兵であり其れを下支えする為の補給基地です。佐久間様、想像して下さい。食料に武器や兵士が不足しない戦場を・・・季節に関係無く戦える戦場を・・・。六角家は大国です。この国とまともに戦っても我が織田家単独では勝ちきれないでしょう!その為の同盟です。三好家、浅井家と連携して今打てる手は全て打ち息の根を止めたいと思っています。


佐久間様はゴクリを何かを飲み込む。

この言葉を聞いて殿は・・・・


「小一郎お主・・・」ニヤリ


「ご了承いただけますか?」ニヤリ


「好きにやれ」


「はっ、ありがたき幸せ!

 ついでに、北畠家臣団の力も見て見ますか?」


「だな、佐久間出兵の指揮を任す!」


「はっ!」


それから二週間後に、佐久間様を総大将に兵1万で八風街道を堂々と進軍して南近江に攻め込む織田軍が居たが木下小一郎と蜂須賀殿と木造殿(工作隊副将に就任)の兵800は何処かに消えたのであった。

また、その知らせを受けた六角軍は直ちに軍を八風街道に動かし守りを固めるのであった。

(あっ・・・浅井家に連絡お願いするの忘れた・・・いけるかなぁ、大丈夫かなぁ、心配です同盟があるので!)


工作兵800人が土木作業に取り掛かった頃、佐久間様率いる織田軍は六角軍との戦闘に突入する。

相手方は、六角家重臣の進藤軍を中心とした部隊である。流石は進藤殿で佐久間様と互角の戦いをする。お互いが相手のスキを突こうと一進一退の攻防を繰り広げる。北畠家から従軍している諸将も前線で張り切っているが決定機を作るまでは行かなかった。また、佐久間様は1万の兵を5隊に分けて同じ部隊が常に最前線で戦わない様に工夫して死傷者を最低限に抑えるし休息もしっかりとれるので、街道での戦いでじりじりとではあるが前線を押し込んでいく、三か月訓練した常備兵達は十分戦力になる事を確認できたのだ。

そして、約一か月で陽動作戦は終了し撤退するのであった。


陽動作戦が終わり、本作戦が動き出す。

小一郎と親方と増田君に滝川殿は甲賀に向かう。

そして・・・・・


「我等、甲賀郡中惣は多数決の結果に従い織田家に敵対しない事を約束しよう」


「「「「ありがとうございます」」」」


その後、和やかになった雰囲気の中での会談が終わり急ぎ伊賀へ。

伊賀惣国一揆の答えは“黙認する“と答えを頂いた。これで今、打てる手は全て打った!後は賽の目次第に、人事を尽くして天命を待とう!




「では、始めろ」


「ハッ!では始めます」


作戦会議で僕を含めて、清須城の殿の私室に殿に信光様、信広様に始まり佐久間様、柴田様、村井様、内藤様、蜂屋様、平手様の織田家首脳陣が揃っている。


「今回の出陣は、浅井家との共同戦線になります!」

「・・・・・・そして以上が作戦の骨子になります」


「小一郎“はっ”三好家の参戦はどうなっておる」


「その件は某から」


佐久間様が当家(みよしけ)の理由で参戦出来ないと回答があったと答えてくれる。

後で分かった事だが、この時、三好長慶殿の体調がかなり悪かった事を。


「ご質問はございませんか・・・

 では、作戦通りに軍事訓練と言う事でお願いします」


大々的な事はしない、敵を騙すにはまず味方から・・・と言う事で作戦が開始される。

清須から出陣して行く。陣容は本隊兵六千人殿自ら率いて八風街道を四日市まで進軍要地に陣取り守りを固めてもらいます。副将に蜂屋様が付く、あっ丹羽殿に森殿出陣してますし親方に工作兵300を率いて同行してもらっています。

第二陣は佐久間様、副将に内藤様で兵六千で千草街道を進軍して日野城攻略をお願いしています。

伊勢衆から雲林院殿と細野殿も参加していますし木造殿に工作兵300を率いて同行してもらっています。

第三陣に柴田様、副将に平手様が付き東海道を進軍、山中城・三雲城を落として、あわよくば草津まで進軍して要衝の確保をお願いしています。伊勢衆から家城殿、鳥屋尾殿、藤方殿が参陣しています。

そして、第四軍で浅井軍が佐和山方面に進軍予定です・・・

そして小一郎は工作兵200と供に千草街道の防御施設で補給の指示をする事になっていますし、増田君も東海道の防御施設で柴田隊の補給担当です。八風街道の防御施設の担当は関殿で本隊の補給担当です。




そして水無月に入ったら・・・


観音寺城に伝令が恐ろしい勢いで走り込んで来た!


「御注進!、織田軍が八風街道を進軍してきています」


「なんだとー! 草の者は何をやっていたのだ」


当主である六角義治殿は激怒である。

それもそうだが、油断もあったのだ・・・"まさか同じ年に二回も攻めてくるとは今まで聞いた事も無い"そんな事を思いながら、城に詰めている重臣達(平井殿以外の宿老)を集め対策を話し合うが・・・


「御注進!織田軍が千草街道を進軍、迎え撃った諸将はことごとく敗退したとの事です」


苦虫を噛み潰した様な顔をする六角義治殿「ごくろう下がって休め」と蒲生殿が声を掛けるのが精一杯だった。誰も言葉が無く重苦しい雰囲気が支配する・・・と。


「御注進!浅井軍が佐和山を目指して進軍中」


「なんだとぉぉぉぉぉ」

「浅井まで、舐めおって!陣触れをだせぇぇぇぇ出陣じゃぁぁぁぁ!」

「兵を集めれるだけ集めろ!」


真っ赤な顔に血管を浮かび上がらせながら、大声で命じるが宿老達は首を振る卯月に陣触れを出している上に、水無月は農繁期だ。農民が二回目の徴兵に応じるはずがないし無理やりの徴兵になると思うからだ。1人喚き散らしている殿を尻目に、対応策を個々に考えていると・・・


「御注進!織田軍が東海道を進軍、山中城落城、三雲城を目指して進軍中との事!」


表情の変わる三雲殿、対照的に怒気に任せて怒りまくる六角義治殿がいた。

ひとしきり怒りまくり冷静さを取り戻してから・・・


「対応策を申せ」


宿老に問うも、沈黙しか流れないのであった・・・そして・・・


「御注進!」


本日五回目の使者が・・・


「日野城、敵軍に囲まれました至急援軍を・・・」


走り込んできた使者は、倒れ込みながら援軍の依頼をするが、観音寺城の大広間には沈黙しか流れないのであった。





つづく。





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