1562年-1
誤字報告ありがとうございます。
「六角家、凄い大国だなぁ」
情報収集の為に、京・大和・南近江・北伊勢に饗談を派遣して情報を集めて改めて確認するとため息しか出ない。
(伊賀に甲賀には恐ろしくて派遣できない。命大事である)
しかも現在は畠山家と組んで三好家と戦っている。
昨年から軍を動員して今年に入り、三好家を京から追い出しているし・・・六角家のご隠居様はやり手である。
特に先陣を切る蒲生殿の強さは恐ろしい、柴田様クラスであろうし大軍の指揮には柴田様より一日の長が蒲生殿にあるかもしれない。
「正面から戦いたくないなぁ~」
そんな愚痴を言いながら大の字になるのだ・・・
「あなた弥七様がお越しです」と弥七殿を招いて伊賀から持ち帰ったお茶を飲みながら密談の開始だ。
「六角家のご当主の様子は?」
「はい、もう一押しかと、かなり疑心暗鬼になっています。
実際、重臣達は弟君の義定殿を推しています」
「では次の手を打ちますか」
それから六角家の領地では、両藤が義定様をご当主に据える為に、義治様の廃嫡に動いているとうわさが流れる・・・
弥生、卯月と三好家対畠山家・六角家の戦は畠山家側が優勢に事を運んでいたが、皐月に入り丹波からの援軍が着陣すると、膠着状態からやや三好有利の状況に変わって来ていた。
ここで攻勢に出ないと、京から追い出される状況となる。
その報告を聞くとピキーンと閃きが!
「弥七殿ここで勝負です!」
危険な任務を弥七殿にお願いする。
六角の居城、観音寺城に潜入しようとしてワザと見つかり密書を落とすのである。
そして流石、弥七殿であった。
助演男優賞物の迫真の演技で見つかり、追跡されて密書を落としたのである。
そして、取り返そうと数回打ち合うもあきらめて帰るという任務を全うしたのだ!
数刻後・・・プッツンしたご当主が観音寺城内の後藤丸に滞在している後藤賢豊と後藤壱岐守の父子と後藤家の重臣達を殺害する暴挙に出たのだ!
「旦那様、弥七様から連絡が有り、波風が立ちましたと!」
みつの言葉を聞き「合い分かった」そう言って、清洲城に走って行く。
「殿~、波風が立ちました」
挨拶もせずに、結論だけ話すと・・・
「でかした!」第六天魔王モード発動!
「者共!出陣じゃぁぁぁぁ!」
皐月の初頃に、一気に動き出す織田軍がいる。
「小一郎、村井と一緒に清洲城の留守居役を命じる」
「そんな~~~ぁ」
情けない声に対して。
「お前は今川家に対する抑えだ!」
そう言われて無理やり納得するしかなかったのである・・・ぐすん。
今川家の抑えには、鳴海の関所は織田信広様がそして沓掛城には平手様を置き万全の体制を引く。
殿に抜かりはない。
そして、遠征軍が出陣していく。
陣容はこうだった、大将・ 殿 ・兵2000
佐久間様・兵3000
柴田様 ・兵3000
蜂屋様 ・兵3000
内藤様 ・兵3000
4部隊を各方面に出陣させて六角家に従属している北勢四十八家の城(館)を電撃的に落とし、二部隊が関家の伊勢亀山城を包囲籠城戦に、他の二部隊は神戸家の神戸城を包囲し籠城戦で速やかに落城させる作戦である。
六角家からの援軍は無いし、小谷城下に六角軍に出陣の気配在りと噂を立てるように指示している。
これが両家に伝われば迂闊に兵は動かせない・・・これで北伊勢から南近江東部に進出できるだろう!
決して伊賀には手を出さない・・・これ大事!
そして、各諸将が率いる部隊が北勢四十八家の城(館)に奇襲を掛けていく。
「かかれぇぇぇぇぇ!」
腹の底から出る声に、常備軍の兵士達が反応!戦意を掻き立てている。
流石柴田様である。
佐久間様と内藤様は無難な用兵を見せて、国人領主の各城(館)を落としていく。
ただ、織田軍にはバーサーカーが居た、いやサイコパスか?
「さぁ皆さん、獣になりましょう!」
「いくぞぉぉぉぉぉぉぉ!」
大声で叫ぶと共に大将自らが豹変!先陣の先頭で突っ込んでいく戦闘狂がいた・・・蜂屋様だ。
先頭で突撃していくバーサーカーに率いられるオオカミの群れ!敵方はその襲い掛かってくる姿に、鬼の軍団が出たと恐怖に慄く間も与えられずに、雪崩にあった様に蹂躙されていくのである。
殿は各部隊を監督しながら指示をだし落とした城(館)に人を派遣、確保していく。
殿の横には、丹羽殿がいて滞りなく手配していく。
また、丹羽殿からの報告で村井様が予備兵力の派遣や食料の輸送の指示(津島、熱田含む)をだして円滑な軍事行動を下支えしていた。
お留守番の僕は、増田君と村井様のお手伝いです。はい。
えっと、親方は出陣のあと出発して神戸城をめざして移動してもらう。タイミングを合わせてから何時もの作業に入る事になっている。
電撃的な織田軍の侵攻は成功、北伊勢を占領!神戸城と亀山城の包囲を完了した。
すると殿はすかさず決断し、佐久間様(親方含む)に二つの城の包囲を一任し本体より1000人を佐久間様の部隊に加えて、軍を再編して南近江に進軍を開始した。
「佐久間様、木下殿より依頼された作戦の実行のご許可を・・・」
親方が直談判し、実行へ・・・
小一郎が託した作戦とは、対今川の籠城戦で使用する為に準備していたがその機会には恵まれずにお蔵入りしていた物だった。
「良し、始めろ」
プン・ブンブンと縄をもってツボを振り回すハンマー投げの要領で・・・
「うぉりゃゃゃゃゃ」とリリースして、城の中に・・・パリーンと割れて中身が・・・
「うぇぇぇぇ」と叫び出す敵兵達、お構いなしに10発ほど投げ込んで撤収した。
これを二つの城で行い、臭撃を掛けたのだ。
ツボの中身が気になる?
仕方ないなぁ、説明しよう対今川戦で使用予定で仕入れていた八丈島産のくさや汁であるが、今現在はそれが発酵いる。効果は・・・敵兵に聞いてほしい・・・チーン。
そして、時間の惜しい今回はシフトを組み24時間激しく攻撃いや口撃や種子島の空撃ちなどをして精神的にドンドン追い込んでいくのであった。
その頃殿は・・・
兵500を森殿に預けて、東海道の伊勢国境付近に布陣し、敵方の援軍に対しての備えを指示、ただし甲賀郡には攻め込む事はならんと厳命して送り出す(甲賀の里ですね、怖いですねぇ)
そして、本隊は八風街道を進軍して南近江(蒲生郡)に攻め込むために進軍をしている。できれば城を落として橋頭堡としたい所なのだが、あの蒲生殿の本城であるなかなか難しい所であろう。
しかし、包囲している間に支城を落としていき最悪、毒林檎(三公七民)を民に知らしめてから撤退、今後の運営に致命傷を与えたいところだった。
そして佐久間様が神戸城と亀山城を落とし北伊勢を掌握し、本隊が日野城を囲んで籠城戦を開始した時に使者が現れたのである。
時を少し戻そう。
出陣中の六角家ご隠居様の所に火急の知らせが入る。それはまさに京から出て三好軍を迎撃に出ようとした所である。
「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁ」
文の内容を見て絶叫するご隠居、プルプルと震えながら蒲生達重臣に文を渡すと重臣方も声にならない。
ドラ息子がプッツンして後藤達を誅殺したと書かれていたからだ。
最早、出陣どころでは無い直ちに帰国をと考えがよぎった時に・・・
火急の知らせが届く・・・
「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁ」
再び大絶叫である。織田軍が傘下にある北勢に出陣とある。
再びプルプルと震えながら蒲生達重臣に手紙を渡すと重臣達は天を見上げた・・・
完璧に織田家に出し抜かれたのだった。
「永原、至急将軍様に面会の段取りを付けよ!
三好と織田と わ わ 和睦せねばなるまい」
プルプルと震えながら声を絞り出し、我が子のバカさ加減に頭を抱えるのである。
そんな事が起こり、三好軍対畠山軍・六角軍の構図は崩れ三好軍対畠山軍で決戦が始まる、畠山家から何度も来る出陣の督促を握りつぶした結果、畠山軍は壊滅的被害を受け二度と立ち上がる事が出来ないぐらい大敗をしたのであった(教興寺の戦い)
そして幕府の仲介で三好家と和睦、条件は京よりの撤退で話がまとまる。
その後、幕府の使者が織田軍本陣に訪れたのであった・・・
「お初にお目に掛かる三淵藤英と申す」
「お初にお目に掛かる細川藤孝と申す。
大樹の思し召しで、この戦の仲裁を行う」
上から目線の二人の使者に内心(なにふざけた事言っとるんじゃワレー!)と思いながらも、お話をお伺いしたいと思います。
殿は小一郎から耳にタコが出来るぐらい、幕府か朝廷が仲介に出て来たら受ける様にと言われているからだ。
小一郎からは「戦は終わらす事が難しいと」ただ、北伊勢の領有が条件だが・・・
交渉は難航、幕府は六角家を後ろ盾に三好家と対抗したいから全て還せと言い張り話はつかない。
そんなこんなで、幕府の使者と交渉中は停戦となり(日野城の包囲は実行中だ)手持ち無沙汰になった織田兵の一部に命じて街道の補修に始まり、民の陳情を聞き対応して織田家にいいね!と言ってくれる民作りに励む、だから青田刈りも今回はしていないのである。
3週間後・・・
「では、全軍転進!」
織田軍が帰っていく、蒲生郡に見える楔と見えない楔を打ち込んで。
そう和睦は成立したのだ。
上から目線で始まった和睦交渉は失敗、六角家と織田家の間を行き来していた三淵殿と細川殿兄弟はただのメッセンジャーになり果てた、結局は交渉の末に北勢の領有を認める事で話は纏まった。いや、六角家側が折れたのであった。
戦を起こした織田方を責める六角当主にたいして、ケンカを売って来たのは六角家重臣の後藤殿だ。
詳しい話は、後藤殿に聞けと突っぱねるとピクピクと怒りを表すご当主がいたらしい・・・死人に口なしであるが織田家側は何も知らないのである。
そして、日野城に帰って来た蒲生殿は愕然とする、きれいに整備された街道・日野城に至っては堀は埋められて防御施設は取っ払われて実質的には裸城の状態にされていたのだ。
そして、これから何かと織田家と比べられドツボを踏んでいく蒲生殿であったがこの停戦が、織田家VS六角家の第二ラウンドのゴングでもあった・・・
其れとは別に、織田軍が帰って行くのをどこか懐かしそうに眺めている、猿顔の小男が居たそうな。
つづく




