1561年ー1
誤字報告ありがとうございます。
「殿にお願いがあります。
家臣を1人召し抱えてください!」
2人が平伏してお願いしている。
「よいだ・・・・ポン!
小一郎、お主家臣がおらぬであろう、お主が召し抱えろ」
「はぁ?・・・はい?」
殿の決定に従い(断れない)僕が召し抱える事に・・・
その分の給料は上げてもらった。
「増田長盛殿、僕の家臣で構わないだろうか」
「はっ、ありがたき幸せ」
「では、よろしく頼む」
年明けの睦月に初めての家臣が出来た。
名を増田長盛と申して、昨年の感謝状を配っていた時に増田村で出会い元服を待って連れて来たのであった。前世の五奉行の一人内政の達人を部下に持てたのだ今からしっかりと仕込んでいこう!
(仕込めれば楽が出来る)と考える僕がいたのは秘密である。
そんな中、小一郎は忙しく働いている。
今まで、構想で終わっていたものに着手、新しい尾張の産品である歯ブラシに舌ブラシにコタツ、それと綿花を使った半纏に敷布団と羽毛を使った掛け布団の制作である。あっ忘れてた代碁も生産開始であった。そして、瀬戸焼の大将を呼んで、清酒にあうおちょこに徳利の生産の相談、色や柄に絵などを使った良い物を尾張の名産で猛プッシュしたいと思う。
その為に、民芸部を創設総勢500人と役人を200人に増員してスタート、建物などは織田家工作隊+@で速攻で建築してしまった、先程の物の生産に乗り出す。
また、清酒と焼酎も上中下とランク分けをした酒の生産に着手、広く取り込もうと今から手を打って行った。
この辺りには工作隊の本部、酒蔵、鉄砲鍛冶などもあり尾張の新製品の開発拠点と生りつつあった。
そんな忙しい弥生に"木下様"と呼び止めてくる"大橋屋さんお世話になります"大橋屋のご主人であった。
「頼まれていた、例の物が手に入りました。
堺に入って来た物のこれは何?と大店達が困っていたのを掻っ攫ってきました」
笑い声と供に、してやったりと顔に書いてある。
「ありがとうございます、これで尾張の食料事情が改善されます」
そう話しながら、納品されたサツマイモとジャガイモを見つめて"ニヤリ"と笑う小一郎であった。
「村井殿、木下殿これをどうにかしてくれ」
この頃、良くお坊様が訊ねてくるようになった。
殿が問題を此方に丸投げしたのだが、尾張にある寺領は織田家の管轄外で6寺4民で治めている為に農民が織田領に引っ越しをして、良い生活を始めると雪崩を打ったように寺領から人々がいなくなっていくのだ・・・
「木下殿!」
御坊様はお怒りモードだが・・・
「そちらの寺領でも3寺7民で治められては如何ですか?
年貢が高ければ農民の生活は苦しいのです。今回の事は仏のお導きと拙者は考えますが・・・」
「話に成らんわ!」と激怒して席を立つ御坊様、僕は心の中でニヤリと笑う。
3公7民はお寺の力を弱らせる為の作戦でもあるのだ。
仏敵とか言って一揆なんかおこされてはかなわない。慎重に行きましょうね、なんて考える小一郎が居たそうな!
「しかし、ご住職のあいては骨が折れる、専門家にお願いできれば話も進むと・・・」
・・・
・・・
・・・ポン!
「村井様、義兄の前田様に仕官してもらえないでしょうか!
専門家で信用できる人物でうってつけの人材だと思うのですが」
さきの姉である梅が前田玄以殿に嫁いでいて、今は尾張小松原寺の住職をしているのである。
仕官してくれたら、宗教関係を任せる事が出来るので助かるのだが・・・ここは村井様に期待する事にしよう!
宗教関係にも手を打ちながら平穏な日々を満喫しながら、仕事に勤しむのであった。
「木下様」と聞きなれた声が・・・弥七殿である。
「先日の依頼の件、問題なしです」
「ありがとう、これで安心して次に進める」
そう言って鉄砲鍛冶の権六と太郎の所に・・・
最近では弟子も増え、生産も軌道に乗り出していた。そこで温めていたプランを実行する為に二人の所を訪れる。
「これは木下様」と出迎えてくれる弟子達、親方の所まで案内をしてくれた。
挨拶がてらたわいもない話をした後に「権六殿と太郎殿に話があるのだが」と話すと、僕の雰囲気が変わった事で、権六殿の背筋が伸びた。
太郎殿も合流して、権六殿の屋敷で・・・・
「「はぁぁぁぁぁぁぁ」」
2人の表情には"なんてことを考えるんだ"と書いて有る。
それだけ突飛な考えだ。そして「ここをああしてこうしてこんな風に出来ないだろうか?」とひざ詰めで話をしてから。
「頼めないだろうか?」
2人はお互いを見つめて、目と目で何かを語っている・・・すると。
「この話、お受けします」
「こんな面白そうな話、受けない訳には行かないしな」
「よろしくお頼み申す」
と二人に、新型の種子島の製作依頼を受けてくれて安堵したが果たして製造できるか・・・この二人に賭けるしかないのであった。
「木下様ぁぁぁぁぁ」
と一人の役人が走り込んで来る。
その話は、戦の無い平穏な日々は予想外の角度から破られる。
それは水無月の事だった・・・伊勢国との国境沿いの村々が織田家に年貢を納めたい(織田家の傘下に入りたい)と打診があったのだ。
今迄、伊勢との国境沿いには服部党の領地があり領地が接する場所が無かったが、現在では国境を接しており今までと違う対応を取って来た。それは戦国時代を強かに生きる為の方策である。
事実、国境を接している地域では年貢を半分にして両家に納める事もしているし、徴収側もそれを暗黙の了解で認めていたのだ。
ただ、今回は鞍替えである北伊勢の国人領主にとっては寝耳に水の話でどの様な対応して来るかも分からない・・・・・・
ただ、隣が大国(国人領主から見て)で3公7民の税率のうえ兵役の義務なしと6公4民で兵役の義務ありどちらの方が良いかは一目瞭然であった。
「木下様ぁぁぁぁぁ!
現地調査に行った役人が襲われケガ人が出ましたー!」
話を聞くと、この話を聞き直ぐに現地調査に入ったとの事、そして国人派の農民が知らせ出て来た国人領主の家臣と争いが起こったらしい。
「殿にご判断頂かなければ」そう言って、清洲城に走り込むのであった!
「もうそろそろかの」
床几に座り、余裕の表情の佐久間様がいる。
此処はどこか?と言うと、先日の当家役人が襲われた村である。
そして、相手方と話し合いで解決してこいと殿のご命令で佐久間様が・・・そして何故か僕と親方まで一緒だ。殿曰く何事も経験だと。
相手は千種家のご当主だ。
北勢棟梁であり、一筋縄ではいかぬ人物ではあるが佐久間様はお見事であった。
立て板に水を流すがごとく相手の主張を論破していく。
何とか食い下がろうとして来るも。
「村々も領主を選ぶのだ。そしてお主等は選ばれなかったのじゃよ。
それだけの話だ」
と言って話を切り上げる。しかし・・・
「この土地も先祖代々守って来たもので・・・」
心の叫びが聞こえるが・・・
「ご納得いただけないのであれば、今度は戦場でお会いしましょう」
「では、ごめん」と床几から立ち上がろうとすると・・・
「わかり申した、希望する村々は織田家の領地に・・・」
言葉と共にうなだれるご当主であった。
「佐久間様、お見事でした」
僕が見事な話術に感心していると。
「ほほほ、此れぐらい出来なければ織田家の筆頭家老は務まらぬからな」
褒められてどこか嬉しそうな佐久間様であった。
因みに、今回の事で国境沿いの村、石高1000石ぐらいが織田家の領地となり北勢に橋頭保を築くのだった。
しかしその事で、ある人物が織田家を訪ねて来たのだ!
六角家の両藤の後藤賢豊殿だ。どうも千種家のご当主が泣きついたのだ、元々傘下の国人領でありまた、半独立勢力のポジションを取っていたのだが。
そして第一声がこれだった「おいたが過ぎるうつけ者が尾張に居ると聞いたので顔を見に来たと」殿も「うつけ者は民に慕われてたいへんですわぁ」と返して、目の前で火花が散っていたそうだ。
そして帰り際に、今後この様な事が起こったら六角家がお相手いたそう!そう言い残して帰っていったそうだ。北勢にはおかしい事をするなよと当家に釘を刺して帰ったのである。
もう、激おこぷんぷん丸状態の殿は怒りが収まるまでかなりの時間がかかったそうだ。
「小一郎!」振り向くとそこには脱走して来た殿がいた。
殿に促され、親方に目配せしてから作業場を離れた。
「聞いているな!」
「はい」
「では、やるぞ」
殿の目が燃えていた。
いくら相手が大大名だって、ナメられっぱなしでは終われない。
「では我が張子房よ、作戦の立案を命じる!
必勝の作戦を頼んだぞ!
それと、相手を騙すにはまず味方からで、相談は許さん!」ギロリ
「では、曹孟徳様お願いがございます。饗談の増員をお願いします」
「・・・う~ん」「では、饗談の全員を子房の指揮下とする」
「有り難き幸せ。
しかし殿、張子房は言い過ぎですよ」
「いや、そんな事はない美濃に今孔明が現れたし良いだろう!」
そうなのだ、美濃に今孔明と噂される少年が現れたのである。
その名は、竹中半兵衛重治!かの有名な天才軍師である!
そんな事は置いておいても、殿の無茶ぶりが炸裂したのであった。
頭が痛いです・・・・・・
つづく。




