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1560年-2

誤字報告ありがとうございます。

感想ありがとうございます。


時は少し前後する・・・


「では、始めるか!」


今川義元は、遠江勢・駿河勢の投入を決断!

織田軍主力をこちらに引き付ける為の作戦を決行に移す。

その作戦は、本隊に朝比奈隊と服部党に美濃斎藤家の軍勢で攻勢に出て、織田家を蹂躙する作戦である。

報告に、服部党の抑えに織田軍1000人が布陣しているがそんなのは関係ない、攻勢に出て足止めせよと命じている。

本命は斎藤軍である。ほとんど尾張国内に予備兵力は無いと見積もっているのだ。この作戦で那古野に清須と一番大事な、熱田に津島を手に入れて尾張半国を我が領土とする!その為の攻勢である。

これで先代(おやじ)を越えると力強く手を握り締めるのであった。







「どうにか間に合いましたな」


「はい、これも蜂須賀殿をはじめ役人の皆に、特に集まってくれた農民達に感謝です」


「木下殿、農民では無くこの国を守る戦士達ですよ」


と注意を軽く受けながら、農民ではない死線を乗り越えて来た男達の顔が並んでいた。

事実、この時代の農民は戦を皆経験しているから、戦士としては小一郎より頼りになるのである。


「では、大将!戦士達に檄を飛ばしましょうか!」


にこりと怖ろしい言葉を告げられると・・・・・(フリーズ)


・・・

・・・


ポリポリと頭をかきながら(ダメだこりゃ)と大将の檄を省略したのであった。


しかし、これだけの人数がよく集まった物だと思う。

兵数にして12000人!に1000人の常備兵の大軍だ。

美濃方もこれだけの大軍が待ち構えているとは思わないだろう。

ただ、正直言って張り子の虎である、人数はいるが将兵がいない、組織的な交戦は出来ないのである。だから土塁と空堀で攻め手の手段を限定させているのであるが・・・心配は尽きない。


「大将!・・・稲葉山城を敵軍が出陣したと・・・」


「大将は?」


「名目上は斎藤龍興殿だな・・・

 実質は斎藤飛騨守殿が差配しているでしょう」


「それで兵力は?」


「4000から5000だそうだ。

 どうにかなるだろう」


「ご注進、第二陣兵三千到着いたしました」


「「はぁ?」」


まだ来るの、眼を白黒させる二人。

食料など諸問題があるから大変なんだけど・・・


「なお、第三陣は用意が出来次第出陣するとの事です」


「えっ・・・マジですか?それ?」


小一郎の檄文は予想以上に農民たちに届き、自分の生活を守る為に立ち上がってくれたのである。




その頃、殿本陣では・・・・


「何だと―!

 それは誠か!」


「ハッ、斎藤義龍殿は遠行、斎藤道三殿死亡!嫡男の側近に殺害された模様!

 そして、尾張国境を侵す準備をしているとの事です」


「ご苦労、下がって休め」


筆頭家老が「殿ここは軍を分ける事は・・・」今川方はこの作戦の為に強気な攻撃をしていると「くそー」と悔しがるしかない。

まさか、義龍と道三の間で何かありまさかのピンチになるなんて・・・


「小一郎を呼び出せ!」


「殿、木下小一郎は陣を離れております」


「・・・では、尾張国内を蹂躙される前に、今川本隊を攻め落とし取って帰って斎藤軍と決戦を「ご注進」いどむ・・・え?」


「村井殿から伝令が参り、美濃国境の防備万事抜かりなく!

殿におきましては目の前の敵を滅ぼされたしと」


「具体的に申せ」


「ハッ、木下殿を大将とした兵12000が国境に向かったとの事、また順次第二陣・第三陣の援軍を出陣予定との事です」


最早、首脳陣は???である尾張国内の予備戦力は1000人小一郎が率いた部隊12000人計算がおかしい、おかしすぎる「なんだその人数は」殿もあきれ顔だ!


「だが、助かった。

 では皆の者、尾張(うしろ)は小一郎に任せるとしよう」


「ハッ、我らは今川勢に槍や弓矢を馳走したいと思います」


柴田殿の言葉にニヤリと笑う殿、戦線はまだまだ荒れそうであった。

しかし、小一郎は一体どうやって・・・と考え込む殿がいた。

そして、策が防がれたと知らない今川勢の猛攻はもう少し続くのであった・・・・





「青いですなぁ~」


しみじみと語る蜂須賀殿、其れもそうだ斎藤軍は動揺真っただ中にいたのだ、今川方が兵を引きつけるから背後から尾張に攻め込んで織田軍を挟撃しようと意気揚々と出て来たら・・・目の前に16000人の織田軍が準備万端で待ち構えていたのだから・・・そして・・・


「鬨の声をあげよ」


蜂須賀殿が「エイエイオー! エイエイオ!」と腹の底から発した言葉が、木下軍に広がっていく。

そして、16000人の鬨の声が斎藤軍に襲い掛かる。

そして、この時13才(数え年)の斎藤龍興は恐怖に慄いた。

16000人の殺気を受けたからだ。

龍興だけではない、圧倒的大軍を前にして美濃の兵達も最早戦どころでは無かった。

皆自分が生きて帰る事だけを考え出したのだ。

16000人の鬨の声にはそれだけの圧倒的な威圧感があったのだ。


「いや、若勝ち目はありますぞ!」


一人だけ心が折れてはいなかった。その男は斎藤飛騨守殿であった。


「敵の本陣にしか馬印はありません」

「本陣を強襲、壊滅させればそれだけでこの戦勝てます」


斎藤飛騨守は木下軍の弱点を冷静に分析、勝機を見出していた。ただ、本陣に強襲を掛けるにも土塁や空堀の防御陣の突破が大前提ではあるが・・・そこに抜かりはない。

斎藤飛騨守が戦いを主張した時にタイミング良く、第三陣が到着!斎藤軍の横っ腹を付ける位置に3000人の敵軍が現れたのだ。


「敵援軍が現れましたー」


この報告で斎藤軍本陣は恐怖に支配された・・・ここで敵に攻められれば全滅が必死の位置に敵の援軍が現れたからだ。


「くっ、これまでか」

「全軍、隊列を乱さずに転進せよ」

「乱れれば、織田軍に食いちぎられるぞ!」


悔しそうな表情をしながら撤退の指示を出した斎藤飛騨守は、憎らしそうに織田軍を睨みつけるのであった。




「引きましたな」


「そうですね、助かりました」


追撃の指示は無い、そんな事をすれば収拾がつかなくなるからだ。


「では、全軍転進!

 三河国境の救援に向かう」


腹の底から全軍に響く蜂須賀殿の掛け声に、「「「「「おぉ!」」」」」と全軍から返事が・・・実際は清須にて解散(予定)だ。

ただ、この援軍(ダミー)が三河国境に向かうと仮定したら今川義元はどうするだろうか・・・

今川軍の忍びが監視していると思い、蜂須賀殿はわざとらしく援軍を演出して見せたのだった。

これで何か動きがあるだろう。


そして常備兵1000人を守備に残して、三河国境に進軍する振りをしたのだった。





報告を受けた今川義元は慌てだした。


「殿、美濃勢戦いをせずに兵を引きました」


「なんだとぉぉぉぉぉ!」


激おこである。


「尾張の国境を守る尾張勢19000を前に勝機無しと判断した模様」


「19000だとぉ!」


こめかみをピクピクさせながら今度は驚きの声だ。


「その19000の援軍が此方に向かう模様で進軍中であります」


「・・・・・・・・・・ご苦労」


これはもう負け戦だ、これ以上の戦闘には意味が無いと。

では、どの様に戦を終わらすか・・・兵を引けば追撃があるだろう、西三河もかなり織田領となると思われる。これはもう頼らねば仕方が無いか・・・と考えをまとめると。


「関口!」


「ハッ」


「急ぎ武田殿の下に使者として向かえ、そして和議の斡旋をお願いしてくれ!

 武田殿と同盟を結んでいる織田も武田殿の話を無下には出来まい」


「ハッ」


そして、今川義元は武田晴信殿を頼りに18000の援軍が来る前に停戦できればと考えるのであった・・・




3週間後に武田家の仲立ちで今川家との停戦と国境線が確定した。

尾張を織田が治める事で話がまとまったのだ。

尾張の二大商業地の熱田の安全を確保出来た事に万々歳であるし、松平元康殿の独立の目を潰し武田家の駿府の占領の目も消せた。これで東は安定するだろう(して欲しい)と思う。

その知らせを清須城の執務室で聞いた僕は、小さくガッツポーズをすると再び、戦後処理に没頭していく。

ただ、今回の今川家との間に武田家が入ってくれたので、話は収まったが斎藤家とはにらみ合いが続いている。


今回の戦ででた死者の家族とケガをして軍務に付けなくなった者達を、どの様にして報いるかを村井様と丹羽殿と話し合っていたのだ。

そして、僕はある提案をする。


「負傷して軍務に付けなくなった者達に、関所の役人や武田家の定期便の護衛をお願いして継続的に織田家で雇用したいと思うのですが」


「織田家の為に戦い死傷した者達です、またその家族は大切にしたいと思います」


この戦国の時代に甘いと思われるだろうが福利厚生は外せないと思ってしまう、これも織田家の為になると思うからだ。

それと、残された妻子達にも希望する者には仕事を斡旋する、その為に新しく食堂などを新規オープンする予定だ。

あれ?また仕事が増えている・・・

その為には、まず杜氏達に相談だ!




「お呼びにより、参りました」


「うむ」と難しい顔をしながら殿がいる執務室に・・・


「小一郎、知恵を出せ!」


行き成りの一言に、斎藤家との難局を物語っている。

重苦しい雰囲気の中殿の意向で、話し合いで解決しようとしているが話に成らない。

濃姫様からも「甥っ子をよしなに」と言われてしまっている殿は詫びで決着を付けようとしている(実害が無い為)が、話に成らないのである。

佐久間様や村井様に柴田様や蜂屋様・内藤様・平手様の面々はお手上げであった。


・・・

・・・

・・・


「申し訳ございません」

「手が思いつきません」


そう言って平身低頭する。

無理だよ無理、戦は終わらす事が一番難しいのに、今川の策に踊らされて考え無しに戦なんかされたら最後まで行くしかないじゃないか!

そんな考え無しを相手にして、どうにかしろと言われても、無理だよ無理と心の中で斎藤家に愚痴を垂れながらも表情は変わらない。


「そうか」と殿は静かに呟いた。


重苦しい空気が流れる中で時間だけが過ぎていった・・・

重臣方にも良い手は無いのだ。

そんな中で小一郎はあきらめて言葉を発した。


「・・・殿一つだけ策がございます」


ギロリと視線が突き刺さる。


「中美濃、西美濃をお取りなさいませ!」


「こちくぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」


ヤング第六天魔王モード発動、殿の回りの空気が変わる。


「濃姫様の元に避難して来た斎藤利治殿を旗頭として、父と兄の敵討ちの為に出兵なさりませ。

 美濃の国人領主も二人共(義龍殿・道三殿)が亡くなっているとは思ってないはずです。

 そして斎藤飛騨守に全ての責任を取らせて、殿が後ろ盾となり美濃斎藤家を再興しましょう!」


「龍興殿はどうする?」


「・・・仏門に入って頂くか、・・・島流しか・・・思いつきません」


「・・・それしかないか」


ヤング第六天魔王モードの殿は決断された。


「佐久間」


「ハッ」


「美濃国人領主達を利治殿の名で内通させよ。義龍殿、道三殿の死亡は伝えて構わない。

 それで、斎藤飛騨守達が悪の権化だと伝えよ」


「かしこまりました」


「では、準備が整い次第出陣とする」


「「「「「ハッ」」」」」


織田軍が再び動き出す。

全軍の内、三河国境に2000人の守備軍と服部党の抑え1000人を除く7000人を動員、美濃国境沿いの防御陣地は再び人・人・人であふれかえっていた。





その頃(文月から葉月に入った頃)西美濃三人衆を筆頭にはじめ国人領主達がお家騒動の全貌を知り奔走、全てを終わらせてから代表として西美濃三人衆が、織田方の国境沿いの防御陣地を訪れる事となった。

三人衆の話によると、事実確認をした後に少数で稲葉山城に潜入し首謀者を一網打尽にしたそうだ。その後の話し合いで斎藤龍興殿は出家!斎藤飛騨守を筆頭とした側近達とその一族は打ち首となり、今回のお家騒動は幕を閉じたそうだ。

あと、斎藤家はお家騒動の時に難を逃れ、お濃の方の下で保護されていた実弟の斎藤利治(末子)に跡を継いで頂き、それを西美濃三人衆を筆頭とした国人領主達で盛り立てていく事となった。


それと、西美濃三人衆の安藤殿から衝撃の申し出が・・・


「織田様、斎藤利治様(との)に織田家の市姫様を正室に迎えたいのです。

 ご一考していただけませんか!」


その言葉と共に、西美濃三人衆が板間に額をこすりつけてお願いして来た。

西美濃三人衆の行動に対してキラリと殿の目がひかり、即決で了承する!

「ありがとうございます」と喜びと安堵の声が響く中で、その場にいた一人の大男が非常に動揺したのは可愛い話であるが、とりあえずは、婚約で美濃国内が落ち着いたら正式に輿入れと大枠の話は決まったのであった。


そして、今回のことで美濃との繋がりがより一層強くしたのであった。

その後は尾張西部に転進、服部党を潰すべく全軍7000人を向かわせると・・・

それまで守備軍と小競り合いが続いていたが「これまでか」と呟いた服部友貞は一族を率いて落ち延びていった。

最後はあっけなかったが、殿は尾張平定を果たしたのである!





ドカドカと近づいてくる足音、3、2、1


「小一郎!小六を呼び出せ!」


執務室に入って来るなり、殿の大声が響く。

来るべきものが来た。

斎藤道三殿の家臣である蜂須賀殿が織田家に仕官しているからだ。


「蜂須賀小六、参上致しました」


「斎藤道三殿の家臣であろう」


「元で御座います」


ギロリとヤング第六天魔王モードの殿が睨みつける。

平伏したままの小六殿、殿から発する殺気を真正面から受け止めている。

息をするのも苦しい時間が流れる・・・・・・


「フン、太々しいものよ」


「恐れ入ります」平伏したまま応えを返すと。


「面をあげよ、此度の働きは見事!よって褒美を取らせる。

 何なりと申してみよ」


「では、お言葉に甘えて、このまま工作隊の親方のままで」


「はぁ~ぁ?」


「亡きお屋形様(どうさんこう)が婿殿が面白い事を始めようとしているから、小六見てまいれと命じられましたので、織田家で一番面白い木下殿と仕事をしあの世で報告したいと思っています」


「フン、好きにいたせい、では木下小一郎の与力を命じる」


「ハッ、喜んで!」


目が点になる小一郎。


「では、小一郎此度の戦の一番手柄は其方である、褒美を取らせる好きにものを申せ」


「では、お言葉に甘えて・・・・・・感謝状が頂きたいです」


「そんな事で良いのか、わかった」


「殿は勘違いをされています。この度の戦に出兵した全ての村に感謝状を書いて下さい。

 此度の戦の一番手柄は尾張国の民です!」


平伏してお願いしている。


「・・・おっ わ わ わかった、では感謝状を褒美といたす」


ニヤリと笑いながら「ありがとうございます」お礼を言い終わる前に、消える殿であったが・・・

その後、花押を書くのに必死になる殿(ノッブ)と文章を必死に書く祐筆と小姓達がいたとかいなかったとか。

そして書き上がった感謝状を各村に届ける仕事(小一郎が配達、殿の仕返し)に追われて、激動の1560年は暮れて行くのであった・・・・・・





つづく。






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