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第19話 元最強パーティー、困惑する

「どうなってる……どうなってるんだよ!」


 夜の冒険者が集う酒場で、ヌールドがテーブルを叩き、眉間に皺を寄せて叫ぶ。


「そんなのこっちが聞きたいところよ。なんで私たちは3回連続で仕事をミスしたのかしら?」


 酒場でヌールドたち4人は、悲壮な表情でここ数日仕事を連続して失敗していることを話し合っていた。


「何で俺様たちは、トロールごときに……ミノタウロス程度にも負けちまったんだよ?」

「だから、それが何でかって話をしてるんでしょ?」

「……敵が急激に強くなったとかか?」

「それなら、私たち以外の冒険者のみんなだって焦るはずよ。だけどみんなはいたって平然としているじゃない」


 周囲を見渡すと、暗くどんよりとした自分たちとは違い、楽しく愉快な様子の冒険者たち。

 純粋に飲みの場を楽しんでいるようだった。

 それが余計に彼らを腹立たしくさせ、ギリギリと歯を噛んだ。


「じゃあその逆なのか? モンスターが強くなったんじゃなくて、俺たちが弱くなった」

「……そんなことありえるか? 急に弱くなるなんて考えられねえけどな」

「…………」


 ネリアナは自分たちに何が起きたのか、思案していた。

 何も答えないネリアナに、ノードがイラついて声をかける。


「おい、ネリアナ! どうだと思うよ?」

「うっせーな! 私だって今考えてんだろうが、この木偶の坊!」


 ガヤガヤ騒然としていた酒場が、ピタリと静かになる。

 全員の視線がネリアナに集中していた。


「なあ聞いたか? あいつら最近、仕事がうまくいってないらしいぜ」「最強クラスだったはずなのにな。この間なんてミノタウロスに負けたらしいぞ」「え? ヌールドたちがミノタウロスに負けるか?」


 自分たちの話をされていることに、抑えきれない苛立ちを覚えるネリアナとヌールド。

 ノードも込み上げる怒りを抑えながら、二人を落ち着かせようとする。

 単純細胞のノードではあったが、意外とこういう冷静な部分があるのだ。


「落ち着けよ、お二人さん。今俺様たちがやらねえといけねえのは、原因究明だろ?」

「…………」


 そして冒険者の一人がこんなことを口にした。


「もしかして……アレンの呪いとか?」「まさか。あいつは仲間を恨むような奴じゃねえよ。それに呪いをかけるような間柄でもねえだろ、あいつら」


 『アレン』。

 そのキーワードを聞いて、ヌールドがぽつりと呟いた。


「……俺たちが強くなったのって、ネリアナが……アレンと一緒に俺たちのパーティーに加入してからだったな」

「ああ。それまでは俺様たち大したことなかったけど、急に開花したからな」

「……私たちが弱くなったのって、いつから?」

「……ア、アレンがいなくなってから……?」


 ヌールドは自分たちの弱くなった原因がアレンにあるのではと一瞬考え「まさか」と言葉を漏らし、青い顔をしていた。

 だが、ノードはそれを笑って一蹴する。


「ガハハッ! アレンは関係ねえだろ! そりゃ、不思議なタイミングではあるが、なんでアレンがいることで俺様たちが強くなって、いなくなったことで弱くなるんだよ!」

「そ、そうよね……バカな考えだわ」

「……呪い」

「の、呪い……?」


 珍しくハリーが声を出したのと、呪いというおぞましいキーワードに声が裏返るネリアナ。


「さっきあの人も言ってた。アレンの呪いだって」

「そ、そんなわけないじゃない。アレンが私を呪うわけないでしょ? あいつ、私のこと大好きだったんだから」

「大好きだったのに、裏切ったろ?」


 ヌールドの言葉にカチンときたネリアナは、声を荒げようとした。

 が、ノードがそれを制する。


「落ち着け落ち着け。呪いなんてことはねえだろ。呪いだったら、もっと大変な目に遭ってると思わねえか?」

「……そうよね」


 ネリアナはヌールドを睨みながら冷静を保とうとしていた。

 

 くだらないことを言って、彼女との距離が開いてしまったか。

 ヌールドはそう自分の言った言葉に後悔していた。

 だが今はそんなことより、なぜ急に弱くなってしまったかだ。

 その原因を突き止めるのが今一番やらなければならないこと。

 それが分からなければ、また同じようにモンスターの討伐に失敗してしまう。


「だけどよ」


 ふと、ノードはアレンがいた時のことを思い出し、話し出す。


「アレンのドリンクは美味かったなぁ……」

「え? ああ、エナジードリンク……ね……」


 ネリアナの思考が一瞬止まる。


 まさか……まさか。


「エナジードリンク……もしかしたら、あれが関係しているの……かも」

「……はぁ!?」


 ノードは突然のことに、素っ頓狂な声をあげる。


「今思い返してみれば……ヌールドたちと出会う前、急に強くなった時期があったの。あれは……そう、アレンがエナジードリンクを完成させた頃だった……」


 急速にネリアナの顔が青く変化していく。

 その様子を見たヌールドとノードも顔を引きつらせている。


「ま、まさか……あんなものにそんな効果があるわけないだろ」

「そ、そうだ! ドリンク一つであれだけ強くなってたまるか!」

「でも……僕たちが強くなったのはアレンのドリンクを飲んでからだ……」


 ハリーの声に言葉を失う3人。

 

「……嘘だろ……」

「俺も嘘だと思いたい。あんなドリンク一つで、華麗に戦えていたなんて信じたくもない……だけど」

「だけど――私たちは弱くなった。アレンがいなくなってから。もう考えられるのはドリンクぐらいしかない……」


 ノードはハッとし、みんなに訊ねる。


「ドリンクは……どこだ?」

「……たしか、リュックの中に入ってたはずよね」

「あれは……アレンの頭と一緒に体ごと崖から落とした……」


 真っ青になったヌールドが唖然と話した。

 頭を抱えるネリアナとノード。

 ハリーは青い顔をして震える声で聞く。


「あ、あれが無かったら俺たち……」

「……どうなるんだよ、ヌールド」

「……終わりだ……俺たちの美しく輝かしい未来への道は閉ざされた」

「だ、だから僕はアレンを殺すことに反対したんだ」


 ネリアナはダンッと机を叩き、鬼の形相でハリーを睨み付ける。


「てめー、今になって何言ってんだ? お前だって賛成してただろうがっ!」

「そ、それは……」


 ネリアナの怒声に下を向いて委縮するハリー。


「……取ってこい」

「……え?」

「迷宮に行って、あのリュック取ってこい!」

「…………」


 ハリーは何と答えればいいのか分かなくなり固まってしまった。


「ネリアナ、冗談はほどほどにしとけや」

「冗談じゃないわ。あの迷宮に行って、リュックを取ってきて、ハリー」


 優しい笑みを浮かべ、甘ったるい声でネリアナは言う。

 無茶難題をハリーに振る。


「そ、そんなの……ムリだろ」

「ムリならムリでいいわよ。その代わり、ハリーがアレンを殺したって言いふらすね。あなた見た目は暗くて怖いから、脅されて黙ってたって泣いて訴えかければ、みんな信じてくれると思うし」

「ひ、卑怯だ……」

「卑怯なのはあなたでしょ? 急に責任転嫁しだしたんだから。アレンの件はみんなで決めたことよ」

「…………」


 ハリーはネリアナたちに何も言えなかった。

 彼の表情が暗いのは、ただ単に根暗だからだ。

 言いたいことを言えない、ただ彼女たちに従う従者のような存在。

 外面は抜群にいいが、内面が女王様のネリアナに対してはとくに。


「ハリー。ネリアナの言うことは聞いておいた方が身のためだぞ」


 ヌールドはネリアナのために、彼女の側に立つと決めている。

 今回も当然のように彼女の味方をし、低い声で脅すように発言していた。


「ほら、どうするの?」

「……行って来る」


 天使のように眩く微笑むネリアナ。


「行ってらっしゃい。ハリー」


 トボトボと酒場を出て行くハリー。


「本当に取って来れると思ってんのかよ?」


 嘆息し、ノードはそう聞く。


「まさか……でももし、奇跡的に取ってこれたらそれはそれでいいんだけど……迷宮で死んでくれたらそれでいいの」

「だけどよ、あいつ、迷宮に行くと思うか?」


 ネリアナはクスリと笑い、ヌールドに話を振る。


「お願いヌールド。あいつが迷宮に行くかどうかを監視しててほしいの……それで迷宮に行かなかった場合は……ハリーを殺してきてちょうだい」

「……ネリアナ」


 ハリーはいつか口を滑らせる。

 そのために今のうちに死んでもらう。

 あるいは殺しておくのがベストだと考えたネリアナはヌールドに暗殺をさせることにした。


 ヌールドが追いかけていることを知れば、ハリーは迷宮に向かわざるを得ない。

 向かわなかったとしても、ヌールドに殺してもらえばいい。


 なぜヌールドに頼んだのか?

 それはヌールドが自分に好意を抱いていることを知っていたからだ。


 そして、自分のためにならなんでもしてくれるのかを見定めるためにも、ハリーの暗殺を振ってみた。


 この話に乗らないのならそれはそれでいい。

 だが乗ってくるのなら、これから先、ヌールドは私が幸せに生きて行くための駒として使える。


 なので期待半分、諦め半分の気持ちでヌールドの答えを待つつもりだった。

 しかし。


「行って来る」


 ヌールドは迷うことなく、ネリアナの願いを聞き入れた。


 甘い笑みの裏で、邪悪な笑みを浮かべるネリアナ。


 こいつは使える。


 今回私の話を受け入れたということは、これから先もきっと受け入れてくれるはず。

 一度首を縦に振ると、次からは断りにくくなるものだ。

 

 ヌールドは私にぞっこん。

 私のためになら、何でもしてくれる。


 自分の傀儡となってくれるヌールドを手に入れたネリアナは、最大級の微笑みを向け、甘い甘い声でヌールドを送り出す。


「行ってらっしゃい。私のヌールド」

「い、行ってくるよ」


 ネリアナの魅力に胸のときめきを抑えきれないヌールドは、駆け足で酒場を後にする。

 

 自分の容姿の良さ、魅力を再確認したネリアナ。

 目の前に置いてあるワインを飲み干し、ニヤリと口の端を吊り上げていた。

読んでいただいてありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 普通に考えたら、周りの冒険者の声がヌールド達に聞こえるように、 特にヒソヒソ話しをしていた訳でも無いヌールド達の声も周りの冒険者達に聞こえている筈だよな。 怒声を上げて注目を浴びない訳…
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