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第116話 アレンと七人の美女

「アレン。わらわと散歩に行くぞ!」


 俺はテレサに抱かれながら、山の中にいた。

 途中獣が出ようがモンスターが出ようが、テレサのオーラにでも気圧されるかのように踵を返して逃げて行く。


「あのさ、別にここにいてもいいんだけどさ、魔王城に帰らないつもりなの君たちは」

「だって城に帰ってもつまらんのじゃもん。アレンといた方が楽しいのじゃ」


 魔王らしからぬとびっきりの笑顔で俺を抱きしめるテレサ。

 おこちゃまのくせに良い匂いがするな……

 膨らみはないけれど悪くはない、かも。


 テレサたち魔王軍幹部の一同は、北の果てにある魔王城に帰ることなく、俺たちの屋敷に住むついてしまった。

 もう勇者もいるし魔王もいるし、色んな種族も集まってしまったし、よく分からない集まりになって来てしまった。

 って、傍から見たら、俺が一番理解しがたい存在なのだろうけど。


 ま、トラブルさえなければいいかな。

 天気もよくて気持ちいいし……


「テレサ様!」


 なんて言ってるそばからトラブルの香りが……

 突然空から現れたキリンが、テレサから俺を奪い取る。


「危険でございます、テレサ様! あまり彼と接しすぎると、〈魅了(チャーム)〉をかけられてしまいます!」

「んなアホなことがあるか。こやつは〈魅了(チャーム)〉など使えぬ様子だぞ? まぁそんなものなくても……可愛らしいけどな!」


 キリンから俺をひったくってギュッと抱きしめてくるテレサ。

 ムムッと眉を寄せてキリンは続ける。


「そ、それが〈魅了(チャーム)〉なのです……やはり危険です! 彼のことは私に任せておいて――」

「ちょっと。なんで魔族がアレンを連れて歩いているのよ……」


 いつの間にかイースが、腕を組んで俺たちの背後で立っていた。

 怒りにピンッと尖った長い耳をピクピクさせている。


「べ、別にアレンのことなんてなんとも思ってはいないけれど、私に寄こしなさいよね」

「ツンデレか、お前は」

「誰がツンデレよっ!」


 怒鳴るイース。

 それと同時にドドドッと砂煙を上げながら一人の女性が接近する姿が目に映る。

 アカン……騒ぎが大きくなっていく……


「ちょっとちょっと! アレン返してよ! アレンは私の旦那さんなんだからね!」

「いつからあんたの旦那になったのよ、アレンは。彼は私と結婚するんだから、邪魔しないでくれない?」

「エルフと結婚などするわけないだろ」


 イースの影からドロンと現れたケイトが、テレサから俺を奪い取る。


「あっ! 白髪女! アレンを返すのじゃ!」

「これはお前の物じゃないだろ?」

「俺は物じゃないぞ」

「これは私の物だ。気安く触らないでほしんだけどな」

「だから俺は物じゃないぞ」


 当然話は通用しない。

 周囲の空気がピリピリし出し、デットヒートしていく。


「まず初めに言っておくけど、アレンは私の旦那さんなんだからね!」

「妄言は寝てから言え。アレンは私と結婚すると言っていたぞ」


 いつそんなこと言ったんだよ。それこそ妄言じゃないか?


「悪いけど、占いの結果、彼は私と結婚することになっているそうよ」

 

 イースが胸を張ってそう言った。


「それは悪徳占い師に騙されているんだ。浮かれさせて金を奪うのが目的なんだよ」

「い、言っとくけど、エルフの中でも有名な占い師なのよ! 評判は間違いないんだから!」

「だったら、間違えているのは占い結果だな」

「どうでもいいけど、彼は魔王。前にも言ったけれど、魔王は魔族と結ばれるべきです。だからアレンは私と生涯を共にするの」

「それなら魔王同士で結婚するか! わらわはアレンとなら結婚してもいいと思っておるぞ!」

「もう魔王じゃないだろ、お前……」


 ボソッとケイトが呟く。

 それにムッとするテレサ。


「ナ、ナエに疑似魔魂石創ってもらったから、また魔王になったもん!」

「結局偽物じゃないか」

「みんななんだかんだ言うけれど、最終的には幼馴染と結婚すべきだと思う! だから私の旦那さんになるのがごくごく自然なことなの」

「不自然だろ。おまえみたいな妄言ばかり言う女と一緒になるのは」

「自然この上ないぐらい自然ですぅ! だからアレン、今すぐ結婚式をしよっ!」

「しないってば……」


 俺は呆れて深い溜息をつく。

 すると屋敷の方から、ナエとトレイニーが歩いて来る。


「何やってるんですか?」

「あんたたちは、アレンと誰が結婚したら一番いいと思う?」

「…………」


 ナエは恐る恐る無言で手を挙げる。

 それを見て、全員がナエに敵意を込めた視線を送った。


「ひっ! すいません! 私程度の女が調子に乗ってしまって! すいませんすいません! 私なんてゴキブリと結婚するぐらいが丁度いいのに!」

「あの……私、いい考えがありますよ」

「何だ?」


 トレイニーはニコリと笑い、穏やかに俺に語りかける。


「アレンさん。私のこと好きになって――」

「「「やめろ!!」」」


 ケイトたち全員は、猛スピードでトレイニーを取り押さえる。

 トレイニーは「冗談です」なんて言ってペロリと舌を出した。

 この子の冗談は冗談じゃなくなるから……本当によく分からない冗談はやめてね。


 俺はみんなが激しく言い合っている最中に逃げ出し、一人屋敷に戻って行ったのであった。

 頼むから、穏やかに過ごさせてくれ……

読んでいただいてありがとうございます。


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