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第8話 愚者②

――とまぁそんなことがあり、俺はこうしてここにいる。

 ネリアナたちに裏切られ、ケイトと出逢い魔王の身体と同化させられ現在にいたると言うわけだ。


 そして現在、リバイロードの迷宮を彷徨うこと4日目。

 正確な時間が分からないので、多分4日目としか言えないが……

 とにかく現在、最下層から10階ほど上がった場所にいた。


 モンスターがいるここまでのフロアでは、ケイトと交代で睡眠を取りながら進んでいたが、このフロアはモンスターが一切出現しない。

 ありがたいことに、休憩ポイントが設置されていたのだ。

 嬉しすぎて感覚的に丸一日ぐらい寝てしまっていた気がする。


 これまでに俺は――


 スライム、ゴブリン、ゾンビ、ガルム、オーク。

 リザードマン、マンドラゴラ、ミイラ、スパイダー、ローパー。

 オーガ、ヴァイパー、アックスピーク、ゴースト、ドレインバット。


 計15匹のモンスターを倒していた。


 おかげさまで色んな能力を得ることができた。


 例えば、〈液状不定形(スライムボディ)〉。

 スライムのように体を伸び縮みさせたり、粘着性を出したりできる。


 俺は高い天井に前足をビヨーンとゴムのように伸ばし、再度縮めた。

 前足は天井に引っ付いたまま、ブラーンと垂れ下がる。


 まぁ、これ以外にも使い道は無数にありそうだよな。

 その時その時で使い道を考えていこう。


 天井から降り、俺はケイトがいる方向に視線を向ける。


 彼女は俺が眠っていると思っているのであろう。

 岩の隙間から吹き出している綺麗な水で、水浴びをしていた。


 薄暗くハッキリとは見えないが、白い髪が、美しい肢体が水に濡れてこの世のものとは思えないほどの神々しさを放っている。

 暗いはずなのに、光を感じるのだ。

 俺はゴクリと固唾を飲みながら、視線を外そうとした。


「え……?」


 ケイトは俺の視線に気づいたらしく、珍しく驚いた表情をし、真っ赤な顔をした。

 何その顔。可愛すぎるんですけど。


 普段は冷たい表情をしているので、乙女のように恥じらうその姿は破壊力抜群だった。


「み、見ないでくれ……」

「あ、ごめん……」


 ケイトはバッと屈みこんで自分の体を手で隠している。

 何その反応。可愛すぎるんですけど。


 後ろを向いて、ケイトが水浴びを終えるまで待つことにした。


「ケイトの言ってた通りだ」

「何が?」

「俺、思ってたより強いんだって。ここまで苦戦せずに上ってこれたしな。猫のクセに」

「だから言っただろ。あんたは十分強いって」

「うん。まぁそうなんだけど……こんな姿でそんな話信じろってほうが難しいだろ?」


 だって猫だよ?

 愛くるしさに定評はあるが、強さなんか皆無だと思うじゃん。普通。

 それが、モンスター相手に楽々勝てるなんて、常識的に言えば考えられないだろ。


「見た目なんて世界においては大した意味はないよ」

「そう?」

「そうさ」

「でも、ケイトは可愛いと思うけど」

「…………」


 髪を洗い流していた音が止まる。


「意味は無いかも知れないけど……人によっては大事だったりするんじゃない? 癒されたりときめいたり……うん。俺はそういうのも必要だと思う。例え意味が無かったとしても」

「そ、そう……お前がそう思うなら、そう思っておけばいいさ」


 体を拭いているのだろうか、静かに優しくこする音が聞こえてきた。

 その次に頭をゴシゴシと拭き、服を着ているのだろう、布がすれる音がする。

 視界に入っているわけではないが、なんか緊張するなぁ。

 

「もういいよ」


 振り向くと、まだ髪が湿っていて頬を染めているケイトの姿があった。


「もう睡眠も十分だろ? 先に進もう」

「ああ」


 睡眠は十分だけど、もう少し水浴びの現場を堪能したかった。

 なんて、こんなことケイトに言ったら怒るだろうなぁ……


「…………」

「ど、どうしたの?」

「だから言っただろ。あんたは考えていることが顔に出るって」

「……すいません」


 バレてた。

 情けないほどに筒抜けだった。


 俺はほんのちょっぴり気まずさを感じながら、彼女が入れてくれたドリンクをチビチビ舐める。

 体が温かくなり、力がみなぎってくるようだ。


「よし。行こう」



 上のフロアへ上がる階段を見つけ、トコトコと上がる。


「これ、どこまで続くんだろうな」

「知らないの? 外までだよ」

「そんなことは知ってる。外までどれぐらいあるかって聞いてんの」

「さぁ……後半分とか?」

「……ケイト、最下層までどうやって行ったんだよ? 階段で下りてきたんじゃないのか?」

「まさか。私もお前と同じ崖から下りたんだよ」

「そ、そうなんだ……」


 よく生きてたな。

 俺は……すでに死んでたけど、生きて下りれないだろ、普通。


 と、会話をしながら上がった階段の先には、人間と同じぐらいの大きさで悪魔の翼とするどい爪を持つ石像がある。

 それは――ガーゴイルだった。


「……気のせいかも知れないけど、急に敵のレベルが上がったような気がする」

「大丈夫。気のせいじゃないよ」

「そこで大丈夫なんて言葉は適切じゃないから!」


 叫ぶ俺に気づき、ガーゴイルは石像から生身に変化し、俺に向かって飛翔してきた。


「!」

「頑張りなよ」

「やっぱ一人で戦うんだな!」


 ケイトの援護は期待できない。

 正直敵の迫力にビビッてるけど、やるきゃない!


 俺に接近したガーゴイルは、激しく爪を振り下ろす。

 だが俺はそれを、〈幽体回避(ゴーストムーブ)〉で回避する。


「!?」


 ガーゴイルの爪は、半透明となった俺の体をすり抜け、相手は突然のことに驚いている様子だった。


 〈幽体回避(ゴーストムーブ)〉は、その名の通り幽体となり、物理攻撃をやりすごすことができる能力だ。

 炎や氷などマナを使用した特殊能力は避けることはできないようだが、これのおかげで単純な物理攻撃に関しては無敵となった。


 たじろぐガーゴイルを一気に仕留めるために、俺は攻撃を繰り出す。


「〈触手攻撃(ローバーテンタクル)〉!」


 俺の右前足が数本の触手となり、敵に巻き付く。


「つ・ぶ・れ・ろっ!」


 そのまま力の限り敵を締め付けてやると、相手はいきおいよく四散する。

 

「…………」


 もう完全に動かなくなったのを確認して、俺はため息をつく。


「敵は強くなったみたいだけど、まだまだなんとかなりそうだな」

「ああ。しかしアレンはどんどん人間離れしていくな。姿は猫だし」

「……だよね。俺ももっとまともな能力が良かったよ」


 モンスターの能力とか、ちょっと見た目がエグいからなぁ……

 せっかく手に入れた力ではあったが、自分が感じているほんの少しの不満を吐き出しておいた。


 もっとカッコいい見た目がよかったです。はい。

読んでいただいてありがとうございます。


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