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幕間 魔王が去った後で その3

ユニークpv数が10000を突破していました!ありがとうございます!これからも頑張ります!


※冒頭において、宗教について記述されている場面があります。この作品に出てくる宗教は現実のものとは一切関係しない完全なフィクションであり、記述されている描写や表現は全て作品を盛り上げるための演出に過ぎません。予めその旨を伝えておくと共に、ご理解とご協力のほどよろしくお願いいたします。その点を踏まえた上で、宗教を連想させる描写に不快な思いを抱いてしまう可能性があると少しでもお考えになられる方がいらっしゃいましたら、即座にブラウザバックすることをお勧めいたします。

 宗教ーー。


 それは、自分を苦しみや死への不安から逃がしてくれる絶対者の存在を信じ、信仰する心の持ちようのことだ。また、そのための教義や制度体系のことでもある。


 そして宗教は、時に人の心の拠り所になり、時に争いの火種となるものであるのだ。


 宗教が生まれた後に人が信じたいものを神格化したのか、超常的な力を持つ神格化されたものが現れたから宗教が生まれたのか。


 その問いに対する正確な答えは分からないし、分かろうとする必要もない。


 大切なのは宗教の教えや信仰によって救われる人間がいるという事実のみである。


 しかし、これは宗教のみならず全ての物事の概念において言えることだが、何事においても決して全ての人にとって救いとなるものなど存在しないのだ。


 ある者が救いの女神かの如く拝んでいる存在を、別の者は親の仇の如く睨んでいるかもしれない。


 概念が、存在が、信念が、認識が、表現が、信仰が、全ての人の価値観と合致するとは限らない。


 宗教もまたそんな正の認識と負の認識の両方を受けるものの一つである。


 だが、少なからずそれによって救われる人間が存在する限り、その概念はどこにでも存在する。


 例えば、ある者が風呂に入ることを嫌い、世界中から風呂という概念の消失を望んだとしよう。その者は何か超常的な力を持っていて、風呂という概念そのものを消すことに成功した。

 しかし、この場合それは一時的な状態としかなりえないに違いない。


 例え概念ごと消されても、風呂という物を望む誰かがいる限り、また別の何者かによってその概念は生み出されるのではないだろうか。


 結局のところ、物や事というのは基本的に何処かの誰かの欲求によって存在するのだ。


 そして、この世界でも人の心の拠り所として宗教というものは存在する。


 救いを求めた誰かの願望が、宗教という概念を形作ったのだ。



 ヒュミニリヒト教。



 それがこの世界における最大の宗教の名前である。


 人族至上主義を唱えるこのヒュミニリヒト教は、他の人間種族は全て人族から派生しただけの劣等種に過ぎないと信じている。


 人族の創造神であり守護神でもあるとされる神"シャローム"を唯一神と崇めるこの宗教は、大陸内で最も数多く存在するのが人族であることもあり信仰が厚い。


 逆に人族以外には酷く毛嫌いされているのだが、熱狂的な人族の信者が数多く存在するおかげで、ヒュミニリヒト教の価値と宗教的地位が揺るぐことはない。


 そんなヒュミニリヒト教が最も根強く信仰されているのが、ヒュミニリヒト教の総本山とも呼ばれるエピナント神皇国である。


 位置的にはガスマン帝国の西側に隣接し、国としての規模はそこそこ大きい。


 人族至上主義を教えとするこのエピナント神皇国を帝国皇帝サヴェリオは好ましく思っていなかったのだが、ガスマン帝国内にもヒュミニリヒト教信者、通称"ヒュミスト"が多く存在するため、混乱や暴動の可能性を考えるとうかつに攻め入ることもできないという状況になっていたのだ。


 その結果、ヒュミニリヒト教とエピナント神皇国は規模の拡大は更に進み、いつの間にか大陸最大の宗教とその総本山である大国という座を手に入れていたのだ。


 そしてここはエピナント神皇国の首都である"神都メーヌ"へと続く道の一つである。


 そこにはどこかで見たことがある屋台が一台、陽気な音楽を奏でながら一頭の馬に引かれて進んでいた。


 もしこの場にディロがいたら、彼は「あっ!」と大きな声で叫んで驚きを露わにしたことだろう。


 なぜなら、その屋台ではこう書かれたのぼり旗が風になびいていたのだからーー。



『黒羊羹』




 □



 ガタゴトと揺れながら進む一台の屋台。


 その屋台と共に馬に引かれる荷台の上には、五つの人影があった。


 その中の一つの持ち主、褐色肌で目の周りにラメのようなキラキラするものをつけた牡丹色の髪の少女ーーパーモは可愛らしい口を開けて、好物である黒羊羹を堪能していた。


「あむっ。ん~~!やっぱこれじゃん!?黒羊羹サイコーだし!☆」

「はっ。お口に合いましたようで何よりでございます。姫様」


 そしてパーモに寄り添って付き従うような振る舞いを見せているのは赤髪の眼鏡をかけた女性。赤髪の女性は懐から白いナフキンを取り出し、パーモの口元を拭う。


「ありがとだし!ベレっち気が利くじゃん!☆」

「はっ。お褒めいただき光栄でございます」

「でもさ?もっと気安く接してくれていいし?ベレっちチョット硬すぎじゃん?」

「はっ。気を付けます」


 しかし、言葉とは裏腹に甲斐甲斐しく世話をするのを止めない赤髪の女性にパーモは少しばかり眉をひそめる。


「無駄であるぞい姫様。なぜなら、そやつのバカ真面目は今に始まったことではないからであるぞい」


 そこに響くはしわがれた声。その声の主は大きな鼻が特徴的な背の低い緑髪の老爺だった。


「でもさ、フル爺?ウチはもっとベレっちと仲良くしたいんだし!☆」


 老爺にそう言葉を返すパーモだったが、一方の赤髪の女性はその話が進んでしまうのを嫌がるかのように別の話題を即座に振った。


「ところで姫様。エピナントに行くのは久しぶりでございますね」


 新たな話題を振られたパーモだったが、彼女は心底嫌そうな表情を見せた。


「ウチ、あそこキライなんだよね?☆なんかこうさ?人の欲とか薄汚れた部分がハッキリ見えんじゃん?だからね、チョー居心地悪いんだし☆」


 パーモはそう答えたのだが、返答を受けた赤髪の女性はその感覚をあまり理解できていないといった様子であった。


「そうでしょうか?愚かだと蔑みことすれ、居心地の悪さは感じないですが……」

「それは君の~♪感覚がおかし~な気がするなあ~♪」


 そして、そんな赤髪の女性の言葉に反応したのは荷台にある五つの人影の内一つの持ち主である中性的な顔立ちのブロンド髪の青年だ。


 先ほどまでギターを手に陽気な音楽を奏でていた彼は、持っていたギターを置き、トランペットに持ち替えながらそう言った。


「そのとぉり……。醜い。あぁ醜い……」


 青年に同調するような声を小さく上げるのは、全身の皮膚が爛れ、所々ドロドロに溶けてしまっている紺色の長髪を持つ男である。男は背を丸め、体を幽鬼のように左右に揺らしながらそんな風に呟いた。


「何を言っているのかであるぞい。お前さんが姫様以外を醜い以外の言葉で評しているところなんて見たことがないのであるぞい。しかし、今回ばかりはお前さんの意見に賛成であるぞい」


 そして、老爺までもが賛同した。


「やっぱし!?みんなさすがじゃん!☆」


 そんな周りの反応に対し、パーモは目を輝かせた。


 一方、自分の劣勢を悟った赤髪の女性は、もう一度話題を変えるべく口を開いた。


「そういえば、一つ気になることが」

「なんだし?☆」

「あの者のことはどうするのでしょうか?」

「あの者って誰のことかわかんねーんだけど?」

「ルクハレで姫様に気安く接してきたあの無礼者のことでございます」

「あ~~~!ディロっちのことじゃん!☆」


 赤髪の女性が振った話題は、数日前にルクハレという街で自分の主人が興味をもった一人の魔族ーーディロについて。


 彼女がその話題を振ったのは純粋な好奇心からであったが、彼女はパーモのディロへ抱いた興味の大きさを理解しきれていなかった。


「ああ。そんな名前でしたね、奴は。それで、どうされるので?」

「ん~~…………。どうもしないし!☆」


 パーモがそう言った刹那、荷台に乗っていた残りの四人に加え、馬車を引いていた馬までもが振り向いた。そしてその誰もが驚きの表情を浮かべていた。


「本当に、何もしないのでございますか……?」


 赤髪の女性は確かめるように再度問う。


「そう言ってるじゃん?何度も言わせないで欲しいし☆」

「それは……あの方達にもお伝えになられないということですか?」

「当然じゃん!アイツらがディロっちみたいなレアもんのことなんて知っちゃったら、殺すかモルモットにしていじくり倒すのが落ちに決まってるし!ウチ、それはちょっと気に入らないんだよね?☆」


 パーモのその言葉に、そこにいる全員が息を飲んだ。


「みんなはさ、ウチのやってることに反対するし?」


 続けてパーモはそう質問を投げかけた。しかし、その質問には先ほどまで動揺していたのが噓のように赤髪の女性は即答した。


「いえ。そんなはずもございません。我々は姫様に忠誠を誓う身でありますれば」


 代表して答えたのは赤髪の女性だが、ほかの者達も瞳の中に迷いの色はなかった。


「ハハッ!☆みんなならそう言ってくれると思ってたよ!☆」」


 その様子を見て、パーモは嬉しげに笑う。


「ですが、一つお聞かせください。何故、あの者をそこまで気にかけるのですか?」


 赤髪の女性は心底不思議そうに自分の疑問を投げかけた。


「ハハハハハハッ!☆」


 その疑問に対し、パーモは嗤う。その様子は恋する乙女のようであり、生贄に悦ぶ悪魔のようでもあった。


「そんなの簡単だよ。ウチ、前も言ったじゃん?」


 そこまで言ってパーモは笑みを更に深めた。



「ウチはね、ディロっちが気に入ったんだ!☆それももうメチャメチャ気に入ったの。だってあんな面白いモノ見たことないんだもん!だからね、ウチは見たいんだ。ディロっちはどうするのか。ディロっちがどうなるのか。そして、ディロっちによって何がどう変えられるのか!本当に、ただそれだけなんだよね!☆」



 パーモは笑う。どこまでも愉快そうに嗤う。


 クスクスと。ケラケラと。


 大きな声で、笑い、嗤う。


 彼女が見据える先に何があるのか。それは彼女にしか分からないのだ……。

閲覧ありがとうございました!


かなり長くなってしまいましたが、今回で幕間は終了です。主人公以外に焦点を当てた三人称視点の幕間は書くのが楽しくてつい色々とかきこんでしまうんですよね……。

さて、最後はパーモさん達にスポットを当てた回でした。また何人か新キャラが登場しましたね。彼女達の今後の動向にも注目です!

次回は登場人物紹介を挟んで第三章へ参ります。お楽しみに!


最後になりますが、広告下側にある【☆☆☆☆☆】の欄の星を押してポイントを入れて応援していただけると嬉しいです。


感想・ブックマークも含めてわたくし武介にとって大きな力となりますので、どうぞよろしくお願いします。


また、誤字・脱字があればご報告お願いします。


次回の更新日は【7月23日(木)】です。


ではでは!

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