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第二話 蜘蛛の遺跡

第二話 


自分が乗る潜水艦はとっくに敵駆逐艦を撃沈していた。

多分、煙草を彼とくわえてる時には海の藻屑となっていただろう。


彼はもう他の部屋に行ってしまった。

自分のベットの周りに人が戻り始める。

自分のベットの上にも人が乗った。物理的なものと違う重みを感じた。


二段ベットの欠点にふれてしまった。

なんと言ったら良いのか、居心地が悪いのだ・・・



彼と煙草を吸って二日目、やっと目的地に到着した。


そこから車窓の旅が数時間あり、駅から徒歩で十分。


結構田舎だな、と自分は思う。

放牧とかをやっている家が数軒、見えた。

後は畑か草むらだろう。  

少し離れた所に飛行場が見える。

きっとそこだろうと思い僕は駆けた。




基地に入り、基地指令室を目指す。


ドアが自分の視界に入る。

ドイツ語は独学で勉強していたからドアの字を読む。

「基地指令室。大丈夫だ」

自分を安心させて、いざ入る。金属の鈍い音と木の音が混じる。

そこに居たのは女性だった。

僕の二つ程上の階級だろうか。年も二つ程上だ。

彼女はイスに座り、黙々と書類を眺めていた。彼女の胸には階級章とドイツ空軍のマークが輝いていた。       「今日、配属された 三木 薫です。」

僕はそれだけ報告が済めば問題ないと思い、

話したら此処を立ち去ろうとした。

なぜなら彼女の仕事を邪魔したく無かったからだ。

彼女は仕事に浸っている・・・そのぐらいの事は見て分かる。


「待って!」

強い口調で僕は呼び止められた。「部屋を案内しなければいけないから」

「あっ、はい」

僕は立ち去ろうとした足を戻した。


基地内を歩いていると

古い基地なのが十分に分かる。

擦りガラスに蜘蛛の巣が張ってある。

その下には蜘蛛たちの滅亡を物語る繊維質の遺跡が残されていた。

僕は不意に彼女に質問をした。さっきの仕返しに匹敵する質問を・・・


「貴方は何故、軍人になったのですか、女性なのに・・・」

返答はすぐに帰ってきた。

「貴方と同じです。名パイロットの息子、或いは娘・・」

「あっ、そうなんですか」

あっけなく会話は終了した。

「飛行機・・好き?」

今度は彼女から質問される

「どちらかと言えば好きです。」これが僕の率直な感想だ。「私は好きだよ。」

「何故?」僕は聞く。

「空を飛んでいる時、美しい景色を楽しめる事。」


        「そうですか・・・僕は別に・・理由なんてないです。きっと遺伝的理由ですね。」


「もしかして、キミ、自分を使い捨ての駒とかなんかと思っていない?」


「なんで、その答えが出るんですか。」

本当の事を言えばそうだった。

遺伝子操作じゃないけどそんな感じだ。運命を決められて居るような。

誰かの子だからで軍に入れさせられた。


辛く、抜け出せない僕の過去だ。


「私達、同じ境遇でしょ、」


彼女は立ち止まると深刻な顔をしてこっちを向いた。


      

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