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~人間~

第1話 インゲン豆の美味しい季節



三連休の後の火曜日の朝は色々と吹っ切れている。


通常毎日働くべき仕事からありがたく3つもお休みをいただいた、そんな錯覚から不思議と活力が湧く。口では『行きたくない』だとか『休みたい』だとかのたまうが頭の方は冷静で会社に着くころにはしっかり仕事モードに切り替わっている。そして夕方ごろにはまた休みが恋しくなるのだ。うまく出来ている。社会の歯車。今日も回しますよ。ええ、回せばいいんでしょう?

そんなことを考えていると、隣のデスクから声をかけられた、田島だ。


「相変わらず暗い顔してますね先輩、おいしそうじゃないですよ」


何をバカなことを言ってるのか、お前だけには食べられたくねえよ。こいつは田島雄介。後輩で軽口が多いがそれなりに仕事はできる。コミュニケーションお化け。誰とも仲良くなれるがいかんせん俺から言わせれば軽い。本当に深い付き合いの奴は数えるくらいだろう。


「先輩は連休明けも変わりませんね。休みボケとかないんですか?」


「ねえよ。金もらって仕事してるんだ。それぐらいの仕事は常にしろ。お前は波がすごい」


「連休明け早々に説教はやめてくださいよ、まだなんにも悪いことしてませんよ」


「おいまだってなんだよ」


「なんでもないですよ~」


こいつはいつもそんな感じだ。まぁ職場が明るくなるからいいか。すると同じシマの端っこから急に声が聞こえた。


「ちょっと職場でイチャつかないでくれる?ったく懲りないわねほんと」


あ~宮島さんか。宮島雪穂、一つ上の先輩にあたる。あの腐り方を見るとまた街コンダメだったようだ。これを直接言うバカはいないが。


「もしかして週末の街コンまたダメだったんですか?」


「あ?何言ったお前」


田島はバカだったようだな。骨ぐらい後で拾ってやろう。


「はいちゅうも~く!お前ら。朝のミーティング始めるぞー」


土橋課長のバカでかい声だ。ほんと体格並みにでかい。ザ・体育会系。救われたな田島。さて今日の伝達事項はなんだ。


「今日は色々あるんだが、まず初めに伝えなくてはいけないことがある。この部署に新入社員が入る!」


あーもうそんな季節か。全体の研修期間二か月だっけかこの会社。


「お前らいじめるなよ、俺がしてやったように優しくしろ?わかったか?」


わからないがそうなんだろう。


「じゃあ入ってきてくれ」


そういうと一人の小柄な女性が入ってきた。その女性は童顔なことも相まって、もしランドセルを背負っていたら小学生といっても過言ではない、そういった女性だった。


「わ、私は須野海未と申します!これからよろしくお願いします!」


そう言うと体を勢いよく前に折り曲げた。声も小学生みたいだが、本当に成人してるんだろうか?そんな疑問も浮かぶほどだ。まぁ真面目そうでいい子そうだ。周りも色々助けてやってくれるだろう。


「お前ら須野さんだぞ、色々教えてやれよ。教育係はそうさなぁ、あ、お前やれ」


そう言って土橋課長は俺を指さした。


「はい?俺ですか?」


「そうだ、お前が一番自分の仕事と両立できそうだからな。頼むぞ。仕事量は減らすなよ?」


どっちの心配をしてんだよこの課長は。まぁ命令とあれば仕方ない。俺は社会の歯車であり会社の歯車だからな。


「わかりました。できる範囲で頑張らさせていただきます」


そうするとやっと須野さんが折り曲げた上半身を元に戻して俺のほうを向いた。


「そういうわけでよろしく、須野さん」


「はい、これからよろしくおねが、ええーーーー!!!」


須野さんは急に驚くほど大きな声を出してそのまま話し続ける。


「なんで、なんでインゲン豆がしゃべってるんですか!?」


季節は梅雨の六月、インゲン豆が美味しくなる頃だった。

初投稿です。勢いで書きました。反響あれば二話以降も書いていきます。

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