11月6日 ビルト城内 某所
すうっと風が吹き抜ける。
午後少しだけ雨が降ったので訓練を早目に終わらせて・・・
と思ったら向こうからダリとクラウがやってきた。
笑顔でこっちに手を上げる。
と思ったら、ダリだけが馬を返して、向こうに行ってしまう。
クラウが呼びかける。だが聞こえていない。
いつのまにか隣に来ていたジャンが、厳しい顔でダリの行く先を睨んでいる。
呼び止めたい。
そっちに行っちゃダメだ、と。
だけど、声が出ない。
クラウが泣いている。
ジャンは表情を変えない。
ダリの姿は草原の向こうに、どんどんちいさくなって
ふいに、消えてしまった。
呼びかけたい。
待って、と。
でも、声が出ない。
なんで追いかけないの、クラウもジャンも・・・
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目が覚めた。
汗。
腿と肩の痛み。
他にも打ち身が沢山ある。
頭痛もひどい。
「あ、目が覚めたね、大丈夫?」
よく知っている声。
前にも聞いたことがあるフレーズ。
少しカサついた手が髪を撫でてくれる。
夢の余韻を辿る。
酷い事があったのを思い出した。
涙があふれる。
ずっと忘れていた涙の感触。
心が熔けて流れ出ているような感覚。
このままぜんぶ熔けて、空っぽになってしまえばいいと思う。
しゃくりあげる。
そのたびに、体中が痛む。
痛むって事は、まだ生きているって事。
この頑丈な体は、逃げるのを許してくれない。
「まだ動かないほうがいいね。
おいしい物用意しておくから、あとで一緒に食べよ?
・・・だからいまは、もう少し寝なね。」
また、いつか聞いたフレーズ。
優しい声。
優しい手。
今度も、マイが付いててくれる。
だから大丈夫。
もう少し、寝よう。





