11月5日 午後 ビルト城外 5
人より、馬と気が合う。
ずっとそんな気がしていたが、今日ほどそれを強く感じたことは無い。
ここが勝負所という場面で、この馬は普段以上の力を出した。
そして今こいつのおかげで、敵の弓使いが目の前にいる。
腕のいい弓使いだ。
ただ狙ったところに打てる、というだけではない。
戦の呼吸・・・いや、狩りの呼吸のようなもの。
例えば地面から片足を離した瞬間。
物音に気を逸らした瞬間。
息を吐き切った瞬間。
そういうところに矢を撃たれると、わかっていても躱せない。
それを無意識に感じて矢を放ってくる。
そんな相手だった。
剣を振りかぶって改めて相手の顔を見る。
黒い肌、充血した目。
何かに疲れたような顔。
諦めの表情。
ああそうか、お前は初めから、死ぬ覚悟だったのか。
だから、俺の突撃を正面で受けることが出来た。
生に固執すれば、逃げ腰になる。
逃げる準備をしてから放つ矢は俺には刺さらない。
黒い男が太刀筋に弓を掲げた。
剣は弓では受け止められない。
それは誰でも知っている事なのに。
自分の意志とは関係なく、体が反射的に受けようとするんだろう。
「良い矢だったぞ。」
なぜか口走っていた。
「知ってるよ。」
黒い男が答える。
そう、この男は自分を知っている。
惜しい。
しかし。
ここでこの男を討ち漏らせば、この戦はまだ続けざるを得ない。
俺は深傷を負った。
兵も減った。
これ以上長く戦えば、全滅しかねない。
そしてそうなると、向こうも全滅する事になる。
この男はそれが解っていたのかもしれない。
俺が死ねばそっちの勝ち。
お前が死ねばこっちの勝ち。
そういう「戦の落としどころ」を作ろうとしたのか。
剣を下ろす。
弓が真っ二つになる。
刃が黒い体を抉る。
体を真っ二つに両断することもできた。
しかしこの男にそれをする事は、ひどく残酷な事のように思えた。
だから、暫く生きて仲間と話せるような斬り方をしてやった。
どうせ殺すなら苦しませずひと思いに殺してやるのが温情だと思ってきたが・・・
そうでない相手もいるのだな。





