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透明の黒
「……お腹空いた。……食べさせて」
腕の中にある細い肩は小さく上下していて、寝息は規則正しく繰り返されている。
月の明かりに照らされた肌。
もっと見たくてお月様色の髪を除ける。
首元に唇を這わせ、歯を立てた。
どれほど力を入れれば肌に跡がつくか。どれほどなら肌を破って血が出てくるのか。
もう充分知っているから、柔らかく、柔らかく歯を立てる。
もぞもぞ動いて逃げようとしている。
出ていかないように、囲って腕に力を込めた。潰してしまわないように、やさしく。
「……なぁ……お腹空いた」
もう一度首元に柔らかく噛み付くと、ふふと楽しげに息を吐き出した。
ぐるりと寝返って、晒された真っ白な喉笛。
噛み付いてから舐め上げると、ぐしゃりと髪の毛をかき混ぜられた。
「食べていい?」
笑った気配がしたから、顔を上げる。
持ち上がっている口の端を見て、同じような顔になる。
柔らかい唇から食べてやることにした。