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異世界の薫り  作者: 噛ませ犬
山から街へ
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いつも通りバイトに向かっている最中だった。


周りには小学生がちらほら見える。

夕方からの出勤だから下校時間と被ったんだろう。


少し前方に子供がいるのが見えた。

どうやら道路を横断しようとしているようだ。


近くに横断歩道があるのにも関わらずそうじゃないところを渡ろうとする。

俺も昔はやっていたことだが幸い事故には合うことはなかった。

それは運ではなく何故か安全を確信していたからだ。


しかし誰もがそうという訳じゃない。

案の定その子供は無邪気に道路を横断する。


そしてそこに車が走ってきた。

このままでは間違いなく轢かれるだろう。

まるで因果そのものだ。


そのとき俺は子供の真横まで来ていたが、

それを助けようとは思わなかった。

普段から他人なんてどうでもいいと思っていた。

あの子供がどうなろうと俺には関係ないし何より自業自得だ。

それにどうせ間に合わない。

現実は漫画やアニメとは違う。


そして甲高いブレーキ音が聞こえたかと思ったら車は俺の目の前まできていた。


そしてとてつもない衝撃の後、糸が切れたように俺の意識は途切れた。



目を覚ました俺は真っ暗な空間にいることに気づいた。

まるで街灯も何もない田舎の道路のようで少し懐かしい気持ちになった。


「起きたようだね」

「・・・」


誰かが話しかけてきたが姿は見えない。


「何か話してくれないかな」

「話せと言われてもな。用があるのはそっちだろう」


俺はあの時確かに死んだ。

それなのにまだ意識があるということは完全には死んでない。

そしてそれが声の持ち主だという事が安易にわかる。


「まず自己紹介させてもらうよ。僕は輪廻を司る神だよ。次に君がここにいる理由だけど、その前に一つだけ質問させてもらうよ。君は何故あの時子供を助けなかったのかな?」


「お前が誰なのかはまぁ興味ない。次に質問の答えだが義務ではないからだ。あの子供が生きるか死ぬかはあいつ次第だし危険だとわかって道路を渡ったのもあいつの意志だ。それに間に合わなかっただろうな。」


「いいや間に合ったよ。君があの子を助けに行けば君は死ななかった。あの子はあの後軽傷で済んだよ。皮肉なもんだね君がもう少し他人に関心を持てば死なずに済んだのに。」


「簡単に言えばあの子供の無責任な行動が原因で俺は死んだということなんだろ?回りくどいぞ。要点だけを言え。それにまだ肝心なことは教えてもらっていない。なぜ俺をここに呼んだのか答えろ。」


「そうだね。君は死ぬ予定は無かった。そしてあの子供のせいで君が死んだのは事実だよ。それから君をここに呼んだ目的はお詫びをしたいと思ったからかな。」


「そうか。でお詫びとはなんだ?」

「えっ?それだけ?こっちのミスで死んだんだよ。もっとなんか無いの?」

「そう思うならまず謝罪くらいしたらどうなんだ?神だかなんだか知らないが謝罪くらいできるだろう。」

「そうだね。すまなかったよ」

「で?お詫びとは?」


「はぁ、わかったよ。説明するよ。まず君には別の世界で生きてもらうよ。君が次に生きる世界は前の世界とは違うんだ。具体的には魔法や魔物が存在する世界で君の世界に存在する異世界ラノベと言ったらわかりやすいと思う。あっでも、ステータスとかスキルは無いよ。次の世界で生きるのに必要な条件はなんかあるかな?」


「なるほど、まぁ断る理由は無いな。年齢は20がちょうどいいだろう。見た目、慎重、体重はこのままでいい。あとは身体能力、魔力は高くしてくれ。それにアイテムボックス的なものが欲しい。条件はこのくらいか。」


「わかった。その条件ならちょっとやそっとじゃ負けないだろうね。あと説明する事といえば魔法に関してかな。魔法は火、水、風、土、光の五つの属性が存在するよ。光は回復魔法の事で雷や氷なんかはそれぞれ風、水に当てはまるよ。」

「わかった。あと最初のうちは色々と面倒だから人がいない山奥に送ってくれ。」

「そうした方が良さそうだね。あぁ、それと武器や防具はどうする?」

「そうだな。防具は頑丈なローブがいいな。ゴチャゴチャ着込んでも仕方ない。それから武器だが、樵が使うような斧を少し大きくしたものがいいな。そして刃の付いていない方をメイスのように使いたい。」

「うーん。わかった。だけど剣とか刀じゃなくていいの?刀とか憧れるんじゃ無い?」

「あんなの素人が使えるわけないだろ。力任せに切ったり叩いたりの方が強い。」

「そ、そうだね。条件は以上でいいかな?」

「あぁ、あとは足りないものがあったら自分でなんとかする。」

「じゃあ、送るよ」


真っ暗だった空間が光に包まれた。

しかし声の主の姿は見えなかった。


そして俺は今、森の中にいる。


「これが異世界の薫りか…」



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