見えだした本領、そして始まる戦闘
はなちゃんの帰宅後しばらく時間が経った。
俺は夕飯の支度をしていた。
メニューは俺が好きな麻婆茄子と、中華スープと言った感じだ。
先ほど家事の役割分担について話したところ、彼女は料理はできないということだった。なので食事やその片付けを俺が担当し、洗濯物類は彼女にやってもらうことになった。
完成した夕食を、食卓へ運んでいると彼女はすでに座っていた。エサを待っている子犬のようで可愛かった。
「なぁ、俺はお前のことなんて呼べばいい?」
これから生活して行くうえで呼び名は大切だろうと思い聞いてみる。
「華さんと同じように雪代でいいわ。」
素っ気なく返事をするが、麻婆茄子が口にあったのか相変わらず無表情のくせに頬が赤く目が輝いているのでわかりやすい。
「わかった。雪代、これからよろしく。」
「ええ、私も春宮くんと呼ばせて頂くわ。」
「ああ」
夕飯を終えたあと、彼女へお風呂に勧めた。
こういうのはレディファーストが大事だろう。
別に美少女の入った残り湯に期待していることは断じてない。うん…ない。
ちなみに今日彼女はデニムのズボンに白いTシャツという格好だった。和風な装いをするのは仕事の時だけだそうだ。
しばらくすると彼女がお風呂からでてきた。薄い水色のガウンに腰に日本刀をぶら下げた格好だ。
今日の午前中、彼女の荷物が届いたがダンボール2箱と日本刀という異質な組み合わせで戦慄したのは記憶に新しい。
彼女は剣を使って戦うようだ。
俺はお風呂をあがり寝る準備終えたあと、一日中ずっと雪代の気を使い続けたことに疲れたのか案外すぐに眠れた。
ーーー
「ついてこい。」
翌朝10時、時間通りにやってきたはなちゃんは俺たちを車に乗るように指示した。
ってか教師の仕事はどうしたんだろうか。吉沢にSNSで聞いたところ臨時の担任がついているそうだ。吉沢は俺にいろいろ質問を投げかけてきたが、スルーしておこう。あいつにだけには美少女と同居していることがバレるわけにはいかない。
はなちゃんによって連れられた先は天神という場所のオフィス街にあるビルのひとつだった。地下に駐車場があるようで、そこで俺たちは車から降りた。
「私は先に上に連絡を入れてくる。この場所で待っていろ。」
はなちゃんはそういって俺たちを残してさっていった。
はなちゃんが居なくなり5分ほど経ったころ、俺はとても気まずい時間を過ごしていた。理由は簡単、雪代も俺も終始無言だったからだ、何を話せばいいかわからない。
今度の夕飯の参考にでも好きな食べ物を聞いてみようか…そう考えた時のことであった。
思わぬかたちで静寂は破られる
パァンっ!ギンッ
ものすごい音がした。
気がつくと俺の前に剣をぬいた雪代がいた。
「銃撃よ」
彼女はそう告げた。
どうやら守ってくれたようだ。
「すまん。ありがとう。」
「ほう。今のを止めるか…しかも刀で、これは期待できそうだ。」
声のする方を向くと、そこには黒髪でオールバックで口髭を生やした50歳くらいの男がいた。
「坊主、お前気づいてただろう?なぜよけなかった?」
プロのようだ。まさかバレるとは思わなかった。
「威嚇のつもりだったんだろ?あの軌道じゃ当たらない。」
俺は質問に答えた。雪代は俺に驚いているかのように目を見開いたがすぐに男を見つめる。
「ははっ面白い。軌道まで読まれるとはな。将来有望なお二人さん。悪いが俺の組織はお前達が邪魔なようだ。ここで殺させてもらう。」
おっさんは拳銃をこちらに向ける。
雪代は剣を構え直した。
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