プロローグ②
プロローグ②から、物語は始まります。
「いいなぁ、俺も能力欲しいぜ…。宿題を一瞬で終わらせれる能力とかねぇかなぁ」
クラスメイトでよく話す吉沢友樹が俺に嘆く
「お前そんな能力でいいのかよ。」
2人早朝の教室で春休みの課題を黙々とこなす。もちろん今日の朝のホームルームで提出だ。
一夜漬けならぬ当日朝漬けの2人は答えを写しながら、時々わざと間違えながら、雑談しながらも手は異様な速さで動いている。
2人ともプロである。
「でもよ〜。俺達は適性がないんだぜ。手から火をだしたりかっこいいことはできねえんだからよ〜。せめてそれくらいの能力欲しいぜ」
「手から火か、それはA級能力だろうな…。そんな能力手にいれてお前は何に使うんだよ…。」
「は?かっけーからに決まってんだろ。ほら、バーベキューのめんどくさい火起こしも一瞬じゃねーか」
「知ってたけど、お前馬鹿だな」
現在能力にはA~Cの3段階の階級が存在すると言われる。
だが、能力者の99.9%はC級でありC級の能力と言えば、1日に1リットルの水を大気中から精製するという程度である。
あってもなくても生活していくうえで、さしたる影響ないレベルの能力がC級に分類される。
「なんだと!おまえええ」
吉沢は、席を立ち俺の後から肩を掴んでゆらす。
気がつけば、当たりは登校してきたクラスメイト達で溢れていた。
「そんなことしてていいのか吉沢?もうホームルーム始まるぜ」
「しまった!謀ったな!」
「はっはっは、そしてトドメだ俺は終わった☆」
「貴様ァ………嘘です。すいません我が心の友よ。なんでもしますから写させてください。」
キーンコーンカーンコーン
吉沢…お前の勇姿はしかと見届けるぜ…
ガラッ
チャイムがなった直後担任の道家 華が入ってきた。
クールな先生なのだが、生徒達から「はなちゃん」と呼ばれ慕われている。
「では、早速だが15分後に始業式が体育館で行われる。各自宿題を提出し体育館へむかえ、なお吉沢、このあとすぐ私のもとへこい」
「はひっ」
何もかもお見通しである。
俺は、さっさと課題を提出し教室を出ようとしたら、はなちゃんはこっちを向いた
「春宮…。間に合ってよかったな。」
「………はい……」
…何もかもお見通しである…コワイ…
教室を出ると1人のクラスメイトの女子生徒が近くに寄ってきた。
「ヒロくん、また朝にやってたの?1年生の時もずっとじゃん!何回一緒にやろうよって言っても来ないし」
「悪いな。その日は吉沢と釣りに行ってた」
「もうっ!1日中家にこもってたの知ってるんだからね!」
俺達のやりとりを周りの男どもは恨めしそうにみる。
彼女の名前は、真中聖愛。
俺の幼馴染にして、眉目秀麗、学力は学年一位、スポーツ万能の完璧超人である。
もちろん、その誰にでも優しい性格と合わせて学校内でとても人気である。
聖愛は頬を膨らませて俺のカッターシャツの脇腹の部分を引っ張っている。
そんな様子を見た周りの男どもは一瞬、温かい目になるが、すぐに羨ましそうな目や恨めしそうな目に変わった。
体育館へつくと、そこには既に多くの生徒がわいわいと雑談し集まっていた。
俺達は自分のクラスの集合場所へ行こうと歩みを進めると、聞きたくもない鬱陶しい声が聖愛に話しかけてくる。
「聖愛、今日もそいつと一緒にいるのか。そんな問題児なんかより僕と話さないか?B級能力者の僕こそが君にふさわしい」
彼の名前は御神勇成、イケメンなうえに彼の言うようにB級の能力者である。
それゆえ、かなり斜め上の思考をしているが、たいていの女の子は彼に憧れ受け入れるため、本人は自分の頭のおかしさに気づいていないようだ。
「あ、御神くんおはよー」
聖愛は彼にそう言ってクラスメイトの女の子の方へ向かった。
完全スルーである。
「おい、お前。あまり聖愛に近づくな。お前と一緒にいると聖愛の品が下がる」
そこまで言われるとさすがの俺でもイラッとくる。
「悪いな。俺からじゃなくて、聖愛の方から絡んでくるんだ。そういうのは聖愛に言ってくれ」
と煽る
「言われなくてもそうするさ」
御神は不機嫌そうにそう言って去っていった。
彼の能力は身体強化だ。
全ての身体能力を最大2倍まで引き上げられるそうだ。
俺も実際に100メートル走を6秒台で走ってるのをこの目で見たことがある。
能力発現の検査を受けたあと、マイナンバー等の個人情報とともに能力も役所に登録される。
その後自分の能力を隠すも公開するもその個人の自由である。
御神はもちろん後者だ。
始業式が始まり、しばらく経った時。
司会進行役の先生がコールする。
「生徒代表、真中聖愛」
「はい。」
名前を呼ばれた聖愛は、よく通る綺麗な声で返事をし、壇上へ向かう。
その声に反応するように、それまでずっと下を向いていた生徒達は聖愛へと視線を向ける。
「春の暖かな陽射しが…」と聖愛が生徒代表の挨拶を始めた、その時のことであった。
ダンっ!
突然体育館中の灯りが消えた。当然体育館内はざわつく。
「きゃっ!」
体育館でのざわめきはみんなが知ってる女子生徒の叫び声で急に静かになる。
「聖愛っ!」
声の正体への異常を悟った俺は、彼女の名前を呼ぶ。
だが、彼女からの返事はない。
体育館は壁の下方の小窓から外の光が漏れているが、ステージ上は幕が落ちているのか様子が見えない。
「聖愛、僕が今行く。」
雰囲気から異常を察した様子の御神が人間離れした速度で壇上へと向かう。
俺も、遅れてあとをおう。
御神より、数秒遅れた俺は、壇上の降りた幕を押し上げ中に入る。
そこに聖愛も御神もいなかった。
題名にあるSAPに関わるのはプロローグの後半から1章までの間の予定です。
読んでいたたきありがとうございます。