正しい行い
くっせぇぇぇぇぇ!
この話は自己満足文の匂いがプンプンするぜぇ!
ただのゴブリン退治のつもりが思わぬ大物が釣れた。
モンスターを操る技術を持った野盗の集団…これは管理者パワー全開で捕縛したが問題は得た情報だ。
はっきり言えば手に余るものだ。
制約の首輪の技術を転用したモンスター使役方法…これは自衛にも武器にも…まだこちらの戦争というものは知らないが恐らく代理戦争のコマに最適だろう。
渡す相手によっては他国への毒、暗殺、テロ等々私程度でもこれぐらい出るならば頭の回る奴らはもっとえげつない手を思いつくだろう。
「不幸中の幸いは…この技術が一般的でなく、特定の人物のみしか施せないという点くらいか…」
野盗の頭を締め上げて吐かせた情報では奴隷商の横流しで手に入れた『制約の首輪』にとある人物が改造、改変を施して『制約の首輪・改』になったとのこと。
その人物は不明だが、奴隷商のツテで何度か取引を行っていたという話だ。
奴隷商の名前はブタール……あれ、どっかで聞いたような?
奴隷商は置いといて、その『制約の首輪』もゴブリン用、オーク用と種類に分けられ、別途に『制約の首輪・改』を改め『強制の首輪』として大型モンスターに特化させていたとも…。
「実験…と見るのが正しいのかなぁ」
恐らくこの野盗らはモルモットで、奴隷商が窓口…となれば誰かが後ろにいると考えるのが筋だろう。
手ごろなコマに首輪を買わせて効果を確認し、実用の足掛かりといった所か。
他に考えられる可能性としては、こいつら以外に駒がいるかどうか、だ。
当然だが駒同士を接触させたり叩き売りして大手を振って売る商品でも無いだろう。
「…ダ…ムさま……アダム様? アダム様!!」
「ん、おっとすまん」
考え事に集中し過ぎてマルダの呼びかけを無視する形になってしまっていた。
まだここは敵陣、といっても制圧した後なので危険は皆無だが。
監視と後始末の為に後方で待たせていた4人を連れて来たのだ。
もちろんハチとシロは撤収済み。
「どーするんすか?こんだけの数の野盗とモンスター…」
「野盗はまとめてギルドか、国に引き渡そうと思うんだが…持っている情報が少々厄介でな。どうしようかと考えていたんだ」
「モンスターは駆除で?」
「……恐らく首輪の解除は出来る。だが、開放しても人を襲わない…なんて事は無いだろう?」
「…そうっすね」
「モンスターの駆除は私がやる。マルダは3人を連れてオースに戻ってくれ」
「野盗回収の手続きと輸送手段の確保っすね。了解っす!」
言わずとも伝わる安心感。
オースまでの道中であれば危険も少ないし任せて問題ないだろう。
さて…気は乗らないが仕事はしなければならない。
「苦しませるのは本望ではない…眠らせて一気にやるか、即死魔法的な何か…」
モンスターにも意思があると知ってしまえば手も鈍る。
日常で肉を食べている人が屠殺場を考えない事に近いかもしれない。
自分の食べている肉は生きてる動物だったモノで、それは誰かが殺して切断して―――
「はぁ…自分たちの食卓が誰かの仕事の上に成り立っているって分かってはいても、する側に回るのは堪えるな」
とりあえず眠らせるのは確定させるとしてあとは止めの手段だ。
う~んう~んと唸っていると後ろから声がかかった。
「…あんた冒険者だろ?何をそんなに悩んでるんだ?」
声を掛けてきたのは野盗の頭だ。
モンスターという害獣を身近に育ってきた人にはこの気持ちは分かるまい…というより私が異端なのだろう。
「モンスターなんざ日頃嫌って程殺してるだろ?」
「…モンスターも生きている、という事を考えたことはありませんか?」
「はっはっはっはっ!そんな高尚な事考えたこと無いね。相手が人だろうが亜人だろうがモンスターだろうが躊躇すればこっちがやられる。そんなこたぁウチの半人前ですら分かってることだよ」
「…そうですか」
やはり『そんなこと』を気にしている自分が異端だと思い知らされた。
だが、そんな私だから出来る事があるかもしれない。
「モンスターという存在に罪があるとは言いません。ですが無抵抗の相手を切るのは私の主義に反しますので」
「無抵抗なら好都合だと思うがね。ま、俺ぁは負けた身だし口しかだせねぇがな」
そう言って檻の中にゴロンと寝転ぶ。
命のやり取りであれば相手が無抵抗なら自分の勝利は固いはず。
「…そうは言ってもどうしたって気乗りはしないさ」
なるべく聞こえないよう振り向いて呟く。
反論が聞こえなかったのは向こうの自重か、冬の風のお陰か。
「デスゲイル」
即死効果を持つ旋風を吹かせて相手の命を奪う魔法。
効果は相手の耐性の高さによって左右されるが持ち前のバフのお陰で成功率は気にしなくてもいい。
最初は眠っているゴブリンに使うと、数秒も置かずに規則正しく動いていた胸の動きが止まった。
検死なんて技術は無いし人の体とモンスターでは構造が違う。
確実なのは首と体を分断、粉みじんにするか種類によっては核となる部分を砕く事だが、私はマップで確認するだけでいい。
「……気軽に、指先一つ動かさずに命を奪うって怖ぇなぁ…試そうとも思わないけどフレンドリーファイアだってあり得なくも無いし今後はなるべく物理で行こう…」
全てのスキル、技術、魔法を習得しているこの身ではパッシブバフだけで下級魔法が上級にもそれ以上にだって成り得る。
特に今回の範囲指定の即死魔法なんてその気になればマップの見える範囲全て…およそ5km程だろうか…街で使った日には大量破壊兵器すら生ぬるい状況に出来てしまう。
下級から中級でも使うのを躊躇するレベルであれば上級、最上級となれば世界を壊しかねないのでは?
これならばまだ剣の届く範囲に限定できる物理的なスキルのほうが安心して使える。
「…ちゃっちゃと終わらそう」
今は不要な考えを頭から押し出しオーク、トロル、ウルフの檻で順にデスゲイルを使い眠ったまま逝かせてやる。
ギルドに危険視されているガルムも例外ではなかった。
せめて苦しまずにというのが私なりの思いやりであるがそれも所詮自己満足、人に綽名すのであれば駆除するが害にならないなら殺さなくても問題ない?
そんな事が可能なのか?
意思疎通のできる高位の存在のみ残す?
なら下位の本能のままに生きる存在は排除するのか?
この世界に置いておそらくモンスターは生態系の一部。
ではゴブリンとて大きな循環の一部、ならばその歯車を勝手にとって良い訳では無い。
いくら世界の管理者として役割を投げられたとてそこまでの権利があるのか?
押し出したはずの疑問、疑念がこんこんと湧き出てくる。
「…そんな簡単に答えなんか出るかよ…」
むしろ誰に明確な答えを貰いたい。
子供のころのように「先生ー!」と聞けたらどれほど良いか。
だが、答えを貰ってしまえばそれがそのまま『自分の答え』に置き換わってしまう可能性もある。
正義の反対は悪ではない。
正義の逆はまた別の正義なのだ、と何かで聞いた気がするがそのようなものだ。
少なくとも私の今の行いはこの世界にとっては正義なのだろう。
だがこれは私の求める正義ではない。
「管理者ってのは正義の味方だと思ってたけど案外違うもんだなぁ…」
次回はちょっといつもより遅れそうです(当社比




