付き添い その3
前回のおさらい!
フルー、レッタ、イロエ、マルダとゴブリン退治に来たら思わぬ副産物を見つけたよ!
「あそこで手を出さなくて正解でした。これだけの数に攻められたらと思うと流石に…」
依頼された現場の農場から移動する事1時間ほど、雪と木々に隠れるように偽装された野営地を見つけた。
野営地といっても中々巧妙に偽装されていて大きな白い布で陣営を囲んだり、木々の移植など手が込んでいた。
見える範囲から得られた情報では、マルダからの念話に通りにゴブリン、オーク、トロル、ウルフ…野盗らしき人物達が居た。
「徘徊するモンスターの中を闊歩する人らか…」
言葉に詰まったのはどうしても拭えない違和感があったからだ。
ゴブリンをはじめ外を歩いているモンスターが10匹ほどで種類はバラバラ、それとは別に檻の中にも同種のモンスターが入っているのが見受けられた。
どれも暴れている様子も無く、人種が傍にいるのに襲う素振りも無い…むしろ従順に従うような…。
「ふ~ん……げぇ!?」
「大声を出すな」
「あっ、すいません…でもあれ! 奥の大きい檻見て下さいよ! ガルムですよガルム!」
そう言われて視線を一際大きく、頑丈そうな檻に移すと中には通常のフォレストウルフ等の狼型の数倍の大きさのモンスターが入っていた。
ガルムというらしい…フェンリルのシロを見ているせいか「大きめな狼だな~」ぐらいにしか思わなかったがマルダらにしたら結構な相手みたいだな。
3人娘もゴクリと生唾を飲むほど緊張した面持ちを見せている。
それが大人しく檻の中で丸まって寝ているようだ。
「アダム様は規格外なんで分からないかもっすけど、アレが出たらギルドで討伐隊が組まれるレベルっす…当然アタシもソロでは勝ち目は無いっすね」
「へぇー」
「そんな凶悪なガルムが大人しく寝ているというのもおかしい話では?」
「う~ん……モンスターを飼いならすことは可能か?」
「無理っす」
「無理です」
2人がハモるくらいには不可能な常識らしい。
という事は村にいるグレイとかは例外なのかな?
「だが、この状況…どう見る?」
言葉に詰まる面々、人を襲わないモンスターと使役しているような人種。
どこか見える所にヒントでもあれば…
「ねーねー、あのゴブリンもブタももじゃもじゃもみんなお揃いの首輪してるねー」
「ファッション…じゃもちろん無いよなー」
「!!」
見えるゆえに見逃す。
下手な先入観があるからこそ気づかないポイントというのもある。
自分で書いた文章では間違いに気づかないような…。
そうだ、あの首輪は見たことがある。
「制約の首輪だ…」
「奴隷に使われるあの?」
「モンスターに使える物でしょうか?」
「同じ物かは分からんが、見た感じでは使えるんだろうな」
3人娘だけではここへ辿り着いたとしても報告に戻るのが関の山だろう。
そういう意味では付いて来て正解とも言える。
後は…
「焼き払うのは簡単だが、まだ奴らが悪人と決まったわけではない」
窃盗は立派な犯罪ではあるが、野菜泥棒なのでSATSU☆GAIします!というほど絶対正義執行マンでもない。
それよりも個人的にはモンスターの使役に興味がある。
強制的に従わせているなら開放すれば暴れる可能性が大きく、モンスターはまとめて駆除しなければならない。
これは意思の有る無しも考慮しなければならないが…悩みどころだな。
「いえ、モンスターを使役して悪事を働かない者はおりません。駆除か最低でも捕縛でしょう。モンスターも野放しには出来ませんのでこの場で駆除するのが――」
「フルーちゃん逸り過ぎっすよ。もうちょい落ち着いて…」
やんややんや。
モンスターにも知能――意思がある事はそれなりに知られているはずだが、それはほぼ高位に限った話だろう。
下位のモノほど本能に正直になり、結果的に人に害を及ぼす。
駆除は妥当だと考えるが断言は出来ない。
「はいはい、敵陣の目の前って事を忘れないようにね。もう少し声を押さえましょう」
「…申し訳ございません」
「うぃーす」
中の詳細は気になるがこのままここでワイワイやってればいずれ気づかれるのも時間の問題だ。
狼型もいる事から匂いで気づかれる線もある。
ここは一度引いて意見をまとめないといかんな!
『はい、みんな静かに! 声を出さずに耳…じゃない意識を傾けてね』
念には念を入れて念話で周知する。
…ダジャレじゃないからね?
『みんなアレコレと意見はあるだろうがとりあえず今は胸に閉まってくれ。このままここに居てバレると後が大変だ。だから一端引きます。』
しぶしぶでも撤退を開始した3人娘を見てほっと胸を撫でおろした。
「…よし、1kmほど下がって野営できそうな場所を探すぞ」
「了解っす」
― ― ― ― ― ― ― ― ― ―
はい、空気が重いです。
良い場所が見つからず新しくカマクラを作ったんだが中の空気はさながら問題が噴出する学級会といった所か。
私が引く、と言い出したのがきっかけではあるが…
「あったか~い…それであま~い…」
「ほんと、疲れた体に染みるねぇ」
いい意味で空気を弛緩させてくれるイロエはこーゆー時に適役だ。
レッタも空気を察してくれているのか乗ってくれているしこの3人は良くバランスが取れているな。
「状況を整理しよう」
黙っていても始まらない。
農園を荒らしていたゴブリンははぐれでは無く、十中八九あの首輪で操られた奴隷の可能性が大。
そしてゴブリンだけでなく多種多様なモンスターを従えており私を除く現有戦力であるマルダ、フルー、イロエ、レッタでは確実な負けの未来しか見えない。
負けるだけなら良いが得てして女性というものはいろいろな価値がある。
そんな胸糞の悪くなる未来は可能な限り除外しなければならない。
「マルダ、今回のような依頼の場合…完遂せずに戻って罰則等はあるか?」
「あれを見過ごすというのですか!?」
フルーが口を挟んでくるがあえて視線を外して無視し、マルダの回答を待つ。
「そっすねー…確実にとは言えませんけど恐らく罰せられる事はないかと」
「ほう?」
「冒険者ってのは良くも悪くも結果が全てっす。依頼を達成できないマイナス点と将来的に大問題になりそうな野盗集団を発見したプラス点…依頼者には申し訳ないっすけどアタシがギルドの上なら差し引きゼロどころか大幅プラスっすかね」
「…今ここで見逃したことで発生する被害については目を瞑るのですか? もしくは見失う可能性は?」
言いがかりに聞こえなくはないがフルーの言にも一理ある。
「スッパリ言えば"知らん"っすねー。そりゃーここで捕まえて? 首輪とかの秘密を全部聞けたら最高っすけどアタシらじゃどーやっても雑魚を片付けるので精一杯っす。それで警戒されて潜られた日には目も当てられないし、下手に手を出して捕まって――後々迷惑も掛けたくないですしね。だから早々に戻って報告するのが最善っすかね」
「……」
理想と現実。
マルダはその辺が分かっているから手を出さない。
フルーに関しては主立った経験がほぼゴブリンしかない為に多少驕った部分…理想に準ずる所があるのだろう。
分かってはいても納得は出来ない、割り切れない事が多すぎる。
大人になるって酸いも甘いも噛み分けて世間の汚さに慣れていく事だと私は思うんだよな。
「私はマルダに意見を飲もうと思う」
「…っ!!」
悔しさなのか口惜しさなのかフルーは唇を噛み締めて拳を握る。
主観だが…フルーは良い所を見せようと頑張っているように思えたがどうにも空回りが先に立つ。
別に元気にやっていてくれればそれでいいのだがなぁ。
「フルーの意見も理解はしているからな」
「…お心遣い感謝致します」
「それで…だ…」
含みを作り、貯めて視線を集める。
4人しかいないのでそこまでしなくても良いのだが…雰囲気というか場のノリだ。
「今回の件は『相当に危ない事』に当てはまると思うんだ」
「「!!」」
2人は言わんとすることを察したようだ。
他2名はココアでまったりしているからノーカウントでもいいや。
「アダム様とアタシが加勢するのはいいですけど、ガルム含めてあれこれ相手している間に逃げられませんかね?」
「それは既に考慮済みだ」
逃げられる状況なら、そこに行かないような状況を作り上げればいい。
簡単に言えば詰み…最初に頭を押さえるか、刈り取るか、圧倒的な力で屠るか…だ。
「少し大人げない感じで行ってみようか」
もじゃもじゃ=トロルです。
この辺は参考にする文献で大分変りそうだな~…ちなみに筆者のイメージはムッ〇似ですぞ




