付き添い その1
女性に好意を持たれる事を拒む男がいるだろうか。
いや、居ない!と言い切れるのは健全で童貞な夢見がちボーイだろう。
私は優柔不断なハーレムコミックの主人公ほど鈍感でもなければそれなりに人生経験を積んだ大人だ…と思っている。
20代そこそこが人生経験豊富かどうかは置いといて…
向けられる感情が『恩義』か『好意』かぐらいは分かっているつもりだ。
「いやーみんなも元気そうで何よりっス」
「マルダさんもご健勝そうで。活躍は私達みたいな下っ端にも聞こえるほどですからね」
「マルダの姉さんもすごいけどやっぱアダム様すげーなぁ、特色だってよ!」
「そうなの!えっと…金の憲兵?を倒して?えーっと…」
「イロエ…貴方はもう少しちゃんと周りの話も聞いておきなさい。金の剣聖です…と言ってもアダム様に負けたぼろ雑巾は覚える価値も有りませんが」
「ぶー!フルーちゃんが何時にも増して良い娘ぶりっ娘してるのー!」
「ちょっ…イロエ、それは言うなって言われてたでしょ」
姦しいのは構わないし、賑やかなのも嫌いではない。
それが私を挟んでやらない限りは…。
腕こそ組もうとはしないが右にピッタリ寄り添ったフルー、適度な距離間で左を歩くマルダ。
後ろから付いてくるレッタとイロエ。
フルーが凄くにこやかに後ろの2人をチラッと見たがどう見ても笑っている印象は受けなかった。
それは置いといても…これ、もしかしなくても周りから見たらハーレムじゃね?
いや、断じて違う!
これはそう…隊列なのだ!
何を隠そう我々はこれからゴブリン退治に赴くのだ。
「あの、フルーさん。もうちょっと離れてくれないと歩きづらいんだが…」
「これは気付かず申し訳ありません。それと、私ごときなど呼び捨てで結構です。もしくは『お前』でも『豚』でも構いません♪」
これは…好意なのだろうか?
行き過ぎてる感も否めないがあまり突っ込まない事にしよう。
話を戻すがゴブリン退治だ。
聞くところによるとフルー一行はランクこそ経験こそ1年も無く、青止まりだがゴブリンに特化したパーティで既に数百匹以上を狩っているという。
捕まってあんな事をされていた復讐だろうか?
逆に私は異例ながら特色となったが冒険者としてゴブリンを狩った経験はほぼ皆無。
経験豊富なJKと童貞なおっさ…私の事じゃないからね?
あくまでも比喩表現だから!
と私は誰に力説しているのだろう…。
「…ではフルー。歩きながらで良いので今回の依頼を説明してくれたまえ」
僭越ながら…と説明の口火を切る。
3人のリーダーであり頭脳担当でもあるフルーの解説はなるほど、と思える程度には目的、作戦、今後の予定が整っていた。
他の2名を上手く配置し、相手をおびき出して仕留めるなどそこらの村娘では難しいだろう。
あ、ちなみ私とマルダは後学の為に付き添いしているだけなので手を出すつもりは無い。
マルダに関しては見た目よりも冒険者歴が長いのでゴブリン退治はお手の物らしいが…捕まっていた事は突っ込まないでやろう。
「念を押すようで悪いが、私はあくまで見学の身…相当に危ない事にならない限り手は出さないからな?」
「ご心配なく。アダム様から賜った装備のお陰で窮地に陥った事はございません。まして今回は巣からはずれた小さな群れとの情報です。さして問題には…」
「10匹くらいならイロエ1人でもよゆーだよ!」
「あんたねぇ…この前それでゴブリンだけじゃなくオークに追っかけられたの忘れたの?」
「ふーんだ!イロエは過去に捕らわれない女だも~ん」
「はぁ…相当に、それこそ規格外の化け物でも出ない限りは問題無いかと…」
フルーもそれなりに苦労人らしい。
それと私は知っている。
『問題は無い』って時に限って問題が起こりやすいという事を。
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着いた先は農園…といっても今は一面雪の下。
冬場に取れる野菜というよりは雪の下に埋めたまま保存も兼ねているのだろう。
しかし、あちこちに掘り返された跡と散らばった野菜くず。
地主で無いのでどこからどこまでが農園の範囲か不明だが、荒らされた部分だけ地面が露出しているので被害は分かり易い。
「被害は芋に葉物に…根野菜。このまま放置すれば野菜無しで冬を越さねばならないでしょうね…」
フルーは現場確認、イロエ、マルダは雪で簡易的な壁を作り、レッタの火魔法で暖を取る。
私は耐性からか寒さを微塵も感じないので率先して壁…というよりはカマクラの為に雪の山を作る。
地元は雪国だったのでこういう遊びに事欠かなかったが、就職したことで地元からも離れ、こういう子供ながらの遊びなどする機会も自然を消え失せてしまった。
まだ目標となるゴブリンの反応も近くには無いので少しくらい童心に帰るのも悪くはないだろう。
そして15分とかからず高さ2メートル、幅4メートルくらいの半球が仕上がった。
「うむ、これぞ幼少から思い描いたカマクラ…我ながら童心に帰り過ぎてしまったかな?」
子供には決して作れない大人数人が入れる大型サイズ。
寒さは感じずとも寒いと思う環境に身を置くだけで心なしか寒く感じてしまうのが人の心理であるが、寒さを感じている連中は我先にと避難してくる。
そして吹きすさぶ風を防げるだけでも感じる暖かさは跳ね上がる。
「あ゛-…あったかいの…」
「魔法を暖房として使うなんて豪勢というか無謀というか…ま、あったかいから良いっスかねぇ~」
「このぐらいの魔力消費なら訳ないよ。今回は相手も小勢だし、むしろ寒さで戦えない方が問題だろうね」
感想も良好の様でこれには私もニッコリ。
外からギュ、ギュと雪を踏みしめる音が聞こえて間もなくフルーも戻って来た。
「あんた達だけこんないい場所に避難して…」
「アダム様のご厚意っスよ~…あーぬくい…」
「……お邪魔します」
別に遠慮しなくてもいいのにね。
そしてレッタの杖から出る温風で温まったところでフルーが調査の結果を報告してくれた。
「調査の結果は概ねギルドへの依頼と同様でした。頭数は足跡からおよそ10匹程度でホブや上位種らしいものは確認出来ませんでした。痕跡の埋もれ具合から掘り起こしに来るのは暗くなってから…今夜も来るのであれば後2~3時間といった所かと」
経験の賜物か、叩き上げの人材は強い。
元々の優秀さもあるのだろうが私はフルーの能力を過小評価していたようだ。
「素晴らしい観察眼だな。勉強になる」
「お、お褒め頂き恐縮です……えっと、本来なら罠を張るなどするべきですがこの雪です。10匹程度なら待ち伏せして奇襲…これで行きます」
さ、お手並み拝見だ。
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