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望まない名声

明けましておめでとうございます。

本年も宜しくお願い致します。


「静粛に、では冒険者ギルド本部の任命書を読み上げます。オース支部所属のアダム殿、貴殿の類稀なる功績、そして現特色ランク『金の剣聖』に勝るとも劣らない身体能力と技術を此処に評し、本日付けで現7番目の特色クラスとして任命する」


 湧き上がる喝采と乾杯の声。

 そして浮かない私…。

 こちらは本業では無いにしろ、情報を得るという点で見れば昇進?は良い事だとは思う。

 だが、ランクが上がったという事は今までにない面倒事も必ず付いて回る。

 役職に就くという事はそういうことだ。


「はぁ…ありがとうございます…」


 辞令…じゃなく任命書を貰うと連絡官はまた別の書類を出して告げていく。


「誠におめでとうございます。それではご希望の色を近日中にお決め下さいませ。中に記載がありますが金、銀、黒、灰、無、白と現ランクの白から赤以外でお願い致します」


「…あれ、白が被っていませんか?」


「おっと、ご説明が不足しておりました…申し訳ございません。こちらは特色の"純白"様を示す物です。そういう意味では青でも"青天"や緑を使った"新緑"などを組み合わせて頂く事が可能でございます」


 要するにその人を連想する、モチーフ…要するに何でもいいと。

 ただこういうネーミングは後にずっと付いて回るから慎重に考えねば。

 というか銀使われてるのかよ…安易に「髪が銀だし~」で思っていたのに…


「分かりました。持ち帰って考えさせて下さい」


「もちろんでございます。色決めは今後を左右する重要な事項でございます…過去には不名誉な色で一生後悔と共に歩んだ方も…。後悔無きように慎重にお考え下さい。私は1週間程はこのギルドに滞在いたしますので何かご不明な事などあれば…――――





 というのが1時間ほど前のやり取り。

 ギルドの食堂で色決めの書類と延々格闘している。

 いや、色が決まらず悶々としている…の方が正しいかもしれない。

 遠巻きながら他のテーブルやら受付からの視線を感じる。

 現状で7人しかいない特色となれば任命、色決めに立ち会える瞬間などそうある訳では無いから興味があるのは分かる。


「アダム様なら銀で決まりだと思ったんスけどね~」


「既に銀は居るらしいからな」


「そうっすね…、銀閃のアルミレオって言えば有名ですもんね」


「…すまない。私は知らなかった。良かったら他の面々も教えてくれ」


「んふっふ、アダム様のご依頼とあらば! このマルダが一肌脱ぎましょう!!」


 いや、比喩にしても脱がんでいいから普通に頼むね?

 あと食堂だからあまり脱ぐとか大声で言わないで…

 それとメモ用紙を準備して…と。



 金の剣聖カインド

 先日あったばかりの特色クラス。

 戦闘狂という印象が強く残った奴だがギルドのみならず冒険者からの評価はとても高い。

 あの金髪にまだ幼さを感じる顔立ち…女性からの黄色い声援も絶えない…と。

 戦闘中に見せた印象は案外バレてないんだなーと少し感心した。


 銀閃アルミレオ

 戦いに向かない小人種の男性ながら前線でスピードを生かし敵を翻弄して急所を突く暗殺者めいた戦い方を好むらしい。

 その戦闘スタイルから特色に任命される前より"銀閃"の二つ名を名乗っていたという。

 なお、二つ名の由来は『銀の輝きは最後に見る光景だから』…ちょっとカッコイイと思ってしまった。


 灰道グリムゲルデ

 魔法、それも火属性に特化した耳長種でギルド指折りの古株。

 彼の炎は容赦なく全てを焼き尽くし後には灰の道しか残らないという由縁…あまり名誉や報酬に拘りを持っておらず各地を放浪しながら今なお灰の道を作り続けているとか。

 ギルドも彼を特色と認定はしたが放浪癖が強く、偶にしかギルドに顔を見せないので都市伝説化しているらしい。


 暗黒のエリンズ

 初代にして最古の特色クラス、彼女の為に特色というランクが作られたという生ける伝説。

 今はほぼ隠居の身として耳長種の村を納めており、彼女の弟子はもれなく弓の名手として活躍している。

 暗黒の由来は目つぶしに特化しているとか…案外えげつない。


 無色の"D"

 ギルドに登録されてはいるが一切表に出ない為、顔、性別、年齢、種族などは不明。

 そもそも一般の冒険者とは違い、主に後ろ暗い事を専門に担っているというのがもっぱらの噂という。

 この人は以前に会ったことあるし確かに正体不明というのも頷ける。


 純白ノワール

 教会所属の冒険者という変わり者。

 真っ白な聖鎧を纏い、戦場では率先して前線に立ち癒しの奇跡で命を救う。

 だが救われるべき命を奪わんとする者を殺す事は躊躇わない…その相手がモンスターだろうと同じ人種だろうとも…。

 戦闘スタイルは癒しの奇跡で自らを癒しながらごり押しするという脳筋タイプ。


 そして、この次に私の名が刻まれる…と。

 私にはどんな色が似あうかなぁ~。





「それにしてもカインドがあっさり帰ったのが不思議っすね」


「あれで引き下がる玉とも思えないけどね。痺れを切らすまでは無視してもいいだろう」


 と、ここで会話の内容は数日前に遡る。

 私が吹っ飛ばして失神させたカインドは翌日にはギルドの医務室から姿を消していた。

 ご丁寧に『王都で待つ。次は本気でやろうね♪』と置手紙と蝋付けされた封筒…おそらく紹介状だと思うものが置かれていた。

 無視してりゃいいや、と構えていたら一か月と掛からずあの特色への任命だ。

 流れから見るに間違いなくカインドの差し金だろう。

 『僕は緑に負けていない。彼は特色に相応しい力を持っている!』と私を特色に推薦することで自分の株を維持したいというプライドも理解は出来る。

 今のところは任命するだけで特別手出しをしてくる様子は無いし…もうちょっと様子見するかな。


「一応釘をさしておくがカインドは私と戦いたいが為になりふり構わず手を出してくることが予想される。マルダ、お前も標的になり得るから充分に警戒しておくように」


「りょーかいっス!」


 威勢はいいが本当に理解しているかは怪しい。

 こーゆー時に身を守れるように警戒できるタイプの奴だったら私も変に心配しないで済むんだがな…。

 かといって四六時中ハチを同行させるのも私が困るしなぁ…


「ま、悩んでても仕方ない。放置されてる依頼を片付けるかぁ」


 席を立ち、貼られた依頼を一瞥する。

 難しいのは数あれど、私が重視するのはあくまで『どれだけ依頼者が困っているか』である。


「初の特色依頼としては高難度っすか? それとも高額報酬?」


「特色になった…いや、されたとはいえ私が成すべきは困っている人を助けることだ。という訳で…」


 珍しくマルダに任せず、自分で依頼を取る。


「え゛…それは…」


「嫌なら無理に付いてこなくてもいいぞ?」


「あ、アタシは…アダム様のパーティですから、付いていくまっス!」


 緊張なのか、依頼が生理的に合わないのか噛み噛みだ。

 性別問わずにあの外見は誰だって苦手だ。

 私だって好きではないにしろ得意という訳でも無い。

 依頼板から外した用紙を受付に提出する。


「え…アダムさん? せっかく特色になったのにこれ…ですか?」


 依頼に貴賤無し。

 凶悪なモンスターを狩るのも、ドブさらいも迷子探しも同じ。


「もちろんだ。この下水のローチ退治を受ける!」


 私の昇進後は下水でゴッキー退治となりました。

 試してみたいこともあるしね。


という訳で新年1発目がようやっと投稿できました。

これからもお付き合い頂ければ幸いですm(_ _)m

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