とある行商人の記録:前編
赤い狐の行商団、大幹部の1人…秘め事のエビン手記より。
これは現存する数少ない"現人神アダム"が世に出始めた頃についての内容が見て取れる記録の分析結果である。
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赤い狐行商団エネキア王都支部より特急の運搬指示が届いた。
運搬先はオースの北、深い森と肋骨山脈を越えた先にあるという村までだった。
依頼内容は荷車5台と村からの物品回収。
これだけならよくある事例だが、この依頼書には狐の顔を模した赤い印があった。
団員にのみ伝わる特別な印…これが押されているということは行商団団長からの命令で有ることを意味する。
そして団長直々の命令となれば客は十中八九が王族か上級貴族、行商団に大きな影響力を持つ誰か…言わずもがな失敗が許されないということ。
「姉さん…受けるんですか?」
「ばかやろう!! 受けるとか受けないとかじゃない…やらなきゃアタシらの首が飛ぶんだよ」
手記より一部抜粋。
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件のエビン氏はこの依頼を受けたとき、まだオース支部の構成員に過ぎなかった。
ちなみにこの依頼は私達の調査ではどの貴族から出ているかは判明しているが今回の主筋にあまり関わらない為、省くがこの時に一国のNo.2とも言える貴族に現人神アダムが取り入っている事だけは明記する。
では、手記の内容に話を戻そう。
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「その勅命依頼をあっしが!?」
「エビン、あんたもアタシの下でもう13年…そろそろ一皮向けてもいいだろう」
姉さんはあっしの顔…目を真っ直ぐ、瞬きせずに見つめてくる。
13年、さして長いと思ったことは無いが…かと言って子供が大人になるには十分な時間だ。
あっし…俺ももういい年だ、良くも悪くも一度くらいは冒険しても良いかもしれない。
それに、この目をした姉さんが意見を変える事は無いのも充分に知っている。
「…本気…なんですね?」
「良く分かってるじゃないか!」
こうして俺は初めて自分1人で重い責任を背負うのだった。
後にして思えばあの仕事が俺の命運を分けた、いや運命を変えたと思う。
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エビン氏は上司に恵まれていたらしい。
羨ましいことだ…。
延々と過去の記録を調べ、まとめ、その上澄みだけを攫っていくウチの上司に比べたら…
おほん、少々脱線してしまいました、戻りましょう。
※ここは提出前に削除すること※
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仕事の重要度は非常に大きな意味を持つ。
だが末端の要員は組織の犬となり走ってご褒美を貰うだけだ。
それに重要な仕事だけに全てお膳立ては済んでいるみたいだし、案外楽に終わるかもしれない。
「あなたが案内役ですかい?」
「皆さんを村まで護衛する役目を賜ったゴートと言います」
「…同じくキルトです…」
「ゥウォン!」
「あっし…いえ、失礼。私はこの一行を預かる赤い狐行商団のエビンと言います。道中よろしくお願いします…の前に1つよろしいですか?」
「どうぞ」
「私の記憶が確かならば、そこの狼は…」
町から街への移動で森を抜ける事はよくあり、森や山道はどんなに整備されていてもモンスターという存在は必ずいる。
かくいうあっし…俺も襲われた数なら両の手では数えきれないほどある。
襲われる脅威の代表とも言える…ウルフ種だ。
それも森に特化したフォレストウルフではない…亜種のホワイトディンゴじゃないか?
「あぁ、グレイの事でしたか。」
グレイ?
モンスターに名前を付けて飼育している!?
「ご心配なく。グレイは主の忠実な信徒であり我らの同胞です。護衛としてきっと役立つ事をお約束します」
「そう…ですか」
任せろ、と言わんばかりにグレイ…さんが「ウォン」と小さく吠える。
モンスターを飼育…いや、仲間としている事に呆気を取られていたが驚くべき事はそれだけじゃない。
ゴート、キルトと名乗った亜人の戦士も並で無い。
戦士の力量の半分は装備を見ればある程度予想は出来る。
成金のボンボンが装備に着られているという可能性もあるだろうが防具から見え隠れする古傷と威圧感さえ感じる佇まいをみればその線も限りなく無い。
俺の見立てでは最低でも冒険者としては緑、赤ランクだとしても驚かないぞ。
「…そのグレイさんもですが、お2人もかなりの実力者とお見受けします。これで村までは安泰ですね、それでは出発しましょう」
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ここで登場したゴートにキルト、この2名は当時のアダムの信徒としてはかなり上位に残っている。
グレイに関しても神都アダムスに於いて守護獣の名として残っている。
当時の記録に名前があるという事は『実在』していたという事だ。
まずこの『エビンの手記』が本物であるという事が前提であるが…それを語り始めたらキリがないので割愛。
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俺は正直、侮っていた。
いくら凄腕の護衛と言えども3人(うち1匹)で5台と輜重車…全15名を守り切るのはまず不可能だ。
普通は荷車1台に3~4名付くとして、計6台なら最低でも18名は欲しい。
まぁ、その侮りも半日程で尊敬と畏怖に変わってしまったがね。
「いやー、北の森は未開の地と聞いていましたが静かなものですな」
「この辺りは既にグレイの縄張りですからね。流れ者かはぐれでもない限り襲われることは無い………」
「…どうしました?」
「静かに…隊列を止めて声を小さく、動かないように」
行商を行う者は空気の流れに敏感である。
それが物流であれ、人々の噂であれ……敵意であれ…だ。
俺とて人並みに、窮地に気付く程度には分かるが今のところ何も感じないが…
「見て下さい。グレイが周りを警戒しています…つまり周りに何かがいるという事です」
確かに先頭を歩いていた狼…グレイが立ち止まり耳をピクピク回している。
戦士2人も得物に手を掛け周りを警戒している。
大柄なゴート氏は人種用の大剣を片手剣として装備している…恐るべき膂力だ。
正反対にキルト氏は変わった籠手を装備している…指先に鋭利な爪が付いているがあれを武器にしているのか?
「…見つけました。北東に約1キロ、はぐれと思われるオークが3体です」
見つけた!?
この鬱蒼とした森で1キロ先のモンスターを見つけた?
ありえない…とは思うが相手がオークとはあまり分が良くない。
「オークと同数では不味いです。向こうが気付いていないのならこのまま距離を取りましょう!」
「…いえ、村からまだ数日の所とは言えはぐれであれば餌を求めて村に害を成す可能性があります」
「そうだな…グレイをこのまま護衛に残しますので皆さんは進んでください。オークを処理した後に合流しますので」
オーク3匹を2人で!?
無茶だ!亜人種は人種より身体能力で優れているとはいえそれは相手も同じ事…同じ土俵であれば数が多い方が当然有利。
それにオークはタフさに優れ、殺しにくい事に定評がある。
「ご心配は無用です。オークであれば私1人でも5体までなら何とでもなるでしょう。キルトなら3体か4体でしょうか」
「は?」
その辺のゴブリンとは格が数段違うのに1人でも余裕?
下手をすればゴブリンに遅れをとるベテランすらいるというのにこれが慢心では無いと直感的に分かってしまう。
もうこの人の強さに気づいてしまったら街の赤ランクが子供の児戯に等しいような錯覚さえ…。
「ははは…村まであと3日弱、あとどれだけ驚かされれば良いのやら…」
ちなみに2時間ほど後になって2人が戻ってきた。
どちらも無傷、身だしなみに汚れも無く仕留めたようでゴート氏が木のソリに乗せたオークを引っ張って来た。
オークは良質な肉に加工しやすい皮が人気の商品になる…のだが、これ本当にオーク?
3体のうち1体は妙に肌が黒いし一回り大きい…。
これ…上位種のヘヴィーオークでは?
オークと大差無い?
そうですか…。
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ついつい筆が乗って引用文が増えてしまった…提出時にはもっと分析を増やして引用を完結にまとめねば。
村に付いてからは後編に続けるとしよう。
レビューのお陰でモチベが沸いて出る(当社比




