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学校と次の一手

 放置していた案件の1つをとりあえず消化するために私はあるものを建てた。

 その結果、アダム村に学校が出来ました。

 正式名称はアダム村村立小中一貫校…略して学校です。

 小学校と中学校の区別もここではハッキリと別れてない…というより学校という概念が無い。

 生まれが裕福であれば家庭教師が付いて教育を受けられる場合もあるが農村に生まれた段階で将来がほぼ決まってしまう。

 村長曰く、「冒険者になって一番苦労したのは読み書きですね」とのこと。

 誰でも分け隔てなく学べるように…とするのは壮大すぎるからまずは自分の手の届く範囲からだ。

 まぁ、大言壮語を吐いたが何のことは無い、ミルレートに仕事を任せるというのが主な目的だ。

 体制としては校長は村長に兼任してしてもらって…科目は大まかに国語と算数と体育を考えている。

 国語と算数の先生はミルレート、体育は先生はゴートとキルトにお願いした。

 学校とは言ってもちょっと大きめの小屋に机が入っただけの極々質素な作りだし、もともと人数が少ないこの村では子供は両手で足りるほどしかいない。

 話を聞くに大人でも最低限の読み書きができる人は一握りしかいないらしく、この村では村長含め10人いるかどうからしい。

 なので門戸は広く、将来的には子供だけでなく村民であれば誰でも自由に授業を受けられるようにしたい。


「ミルレートを先生に指名したのはいいが、読み書きと計算はどのくらい出来るんだ?」


「そーですねぇ…読み書きはこの辺りの主流の王国語と部族に伝わるエィリェ語が出来ます。計算は足し、引き…掛け、割りまで習いました」


 そうか、国によって言葉が違うのも大いにあり得ることだ…とりあえず主流らしい王国語が分かれば支障は無いだろう。

 計算に関しても割り算まで出来れば日常でも役立つ。

 基本的な読み書きと計算、体力は問題無いとしても傭兵の戦闘術…うん、カリキュラムとしては申し分ないと思う。

 ミルレート・ロ・サランドラ先生、実年齢170歳だが耳長種ゆえに見た目だけなら二十歳少し前といった若々しさ。

 正直、こんな美人教師に教えてもらえる子供たちが羨ましい…。

 …でも種族が違うとはいえ170歳…。




ほわんほわんほわ~ん


「アダムくぅん?宿題を忘れるなんて悪い子ねぇ~…先生がお仕置きしてあ・げ・る♪」


 多感な時期には刺激が強すぎる豊満なボディをパツパツのスーツで押し込めた先生が僕の胸板を指でくすぐる。

 宿題を忘れた罰として廊下に立たされ、手にはバケツを持たされ身動きが出来ない所をいい様にされてしまっている。


「先生ぇ…ごめんなさい…」


「謝ってもダ・メ・よ?」


 先生がやけに胸のぽっちの部分をくるくる、さわさわといじってくる。

 未熟な僕の体の奥が段々と熱くなってくる。


「あっ…あ…あぁぁぁぁぁ…!」


「こんなにしちゃって…これはもっと指導してあげなきゃいけないわね…」


「先生!そこは!あっ、あぁぁぁぁぁぁ!」


ほわんほわんほわ~ん




 と、イケナイ妄想はこれぐらいにしておいて…

 メモしておいたカリキュラムをミルレートに見せる。

 何やら「へっ?」やら「え!?」と反応しているがとりあえずスルー。


「一応説明しておくと、これだけの内容を1~2年程度かけてゆっくり教えていく。農村だから収穫時期もあるし、そもそも慢性的な人手不足だった背景もあるから毎日は授業を実施しない。多くて1週間に2回とか3回くらいで、1回は長くて半日と思ってくれ」


「こ、これほどの内容をたった2年でやるのですか!?」


 あれ?

 王国語はイメージするなら英語に非常に近い構造をしているように感じた。

 なので最初はまず約30字ある文字を書き、覚える事。

 次に数字の概念の習得と足し算と引き算、並行して体力づくり…単語や掛け算、割り算に戦闘術は2年目と思っていたが…。


「難しいか?」


「失礼を承知で言わせてもらうなら、私は王国語を覚えるのに15年掛かりました…計算に関しても足し算と引き算で5年、掛け算に10年、割り算も10年くらいでしょうか…」


 確かに1つの言語をマスターするのは非常に難しい。

 勉強だけをやっていても喋れない人はざらにいるし、私自身が英語の授業に付いていけず英語を嫌った口だ。

 それにしても…だ、足し算5年+引き算5年+掛け算10年+割り算10年って…それで30年!?


「そ、それは耳長種では普通の事なのか?」


「私はさほど優秀な方ではありませんでしたけど…同年代で一番優秀だった子は足し算と引き算を1年。掛け算と割り算を2年で終わらせてましたね」


 寿命が長いとスケールもでかいのか?

 それでも日本の小学生よりも大分長い。


「まぁ、物は試しという事で…村の子らは既に喋れるから言葉と文字が一致すれば王国語は早いだろう。計算も…そうだな、後で参考となる教科書を準備しておこう。それでまずは2~3か月進めてくれ」


「わ、分かりました!このミルレート・ロ・サランドラ、必ずやり遂げる事をこの耳に誓います!」


 後から知った話だがこの「耳に誓う」というのは耳長種にとって「決死の覚悟で」に値するものだったという。

 そこまで気負わせるようにしてしまったのは反省点だった。






― ― ― ― ― ― ― ― ― ― 






 場面は変わり、私は諸々の交渉事や相談事項をコーウェル公に丸なg…おほん、お願いしに邸宅に出向いていた。

 公爵は快く迎えてくれたが疲労の色が濃く見え、目の下には隠しきれない隈が見えている。


「コーウェルさん、大分疲労が溜まっているように見受けられますが…大丈夫ですか?」


「いやはやお恥ずかしい。伯爵…いえ、元伯爵ですね、彼が失脚したことにより陛下より領地の配分が行われたのですが……」


「そこで言葉に詰まるという事は何かしらの面倒事があると…?」


「隠し立てする事でも無いのですが…あまり大きな声では言えないのですが陛下は政治手腕はそれ相応なのですがいかんせん貴族同士の諍いを嫌っておりまして、簡単に言うと元伯爵領を全て私の管轄下に置いてしまったのです…」


 元凶はあの伯爵の外道な行いとは言え、それを元に裁いたのは私…公爵の疲労の一端は私にもあるということで…


「陛下のご下命ですので勝手に他の貴族に譲る訳にもいかず、金の生る木に悩みの種が出来た訳ですよ、はっはっは…」


「…度々苦労を持ち込んで申し訳ない…」


 私の自己満足だとしても頭は下げなければならないだろう、まだ会社に勤めていた頃は理不尽でも横暴でも頭を下げなければならない時があった。

 慣れているわけではないし、これは自分が蒔いた種が他人に迷惑を掛けたのだ。

 この程度の頭ならいくらでも下げよう。


「そんな…頭をあげてください、アダム様を責めている訳ではないのです。事実として国の内部に溜まっていた膿を出せた訳ですし領地が増えたことは私としても僥倖です。ただ…」


「ただ?」


「私の領地が増えた事を快く思っていない奴らの嫌がらせが少々鬱陶しいだけです」


 ははは、と乾いた笑う顔はやはりどうにも痛々しい。

 貴族同士の嫌がらせだ、政治的な事もあるだろうし悩みの種…という言葉で済ますほど簡単でも無いだろう。


「…何か私に手伝えることはありますか?」


「お心遣い感謝いたします…ですがこれは既に我が領地の問題です。どのような立場の人であれ、介入するにはそれ相応の理由が必要になります…まして伯爵を失脚に追い込んだ犯人が未だに不明とはいえ、もしその犯人が仮にアダム様とされ、当家に肩入れしているなどと知られた日には私とて罷免されかねません」


「今更ですけど私、ここに堂々と入っていますが大丈夫ですかね?」


「確実にとは言えませんが、公爵家の賓客とでも見られているでしょう。先の件の犯人と知られない限りは問題無いかと」


 ヒヤッとした。

 いうなれば「あれ?今日、家を出るときにストーブ消したっけ…!?」ぐらいのヒンヤリ感。

 伯爵の失脚の時はいつもの甲冑姿だし、冒険者アダムと御使いが同一人物だと知られていない…はず。

 あれ?キルスティンさんは知ってた?

 …うん、とりあえずは主立ってはこの2名だけだから漏れることは無いと思いたい。


「分かりました。そこまで仰るのであれば手出しはしません。ですがこれぐらいはさせて下さい」


 ほんの気持ちばかりと滋養強壮効果抜群のファイト一発!なドリンクを1ケースほど贈呈する。

 ビルドに飲ませた感じではかなり効果が見られたし、ここでコーウェルさんに倒れられては私の「丸投げして楽計画」が頓挫してしまう…あ、丸投げって言っちゃった。


「疲れに効く薬…というよりポーションとでも思ってください。それと相談事もありまして…」


「今日来られたのはそちらが本題ですな?アダム様持ち込みの話であれば当家の利益にも繋がりましょう。是非伺います」


「実は…」


 馬車という移動手段に乗り心地という付加価値が付き、これが爆発的なブームになるのはもう少し先だ。


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