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2日目の仕事と実験 その1

一部にエロやグロ、個人の主義主張があります。

ご注意下さい。

リリアナとの約束まで…一晩明けたのであと9日。


コンコンコン…


「失礼します。」


相変わらず――まだ2日目だが、肌寒い事務所だ。


「おっ、アダムく~ん、いらっしゃーい!」


「ちょ、ちょっと社長さん、外では名前で呼んでください!」


とりあえず名前が思いつかずにとっさに出たのが『アダム』、聖書で有名なアダムとエバから頂戴した。特に深い意味はない。


ごめんごめん、と形だけの謝罪だ…絶対に今後もネタにされるだろう。


「唐突で悪いんだが今日は手が離せなくてね…1人で業務を頼むよ。終了時間には連絡するからさ。」


口は軽快に動いているが手元一切止まらずものすごい速度でタイピングを続けている。


「了解です。」


『エッグ』に向かい上着を脱ぐ。


どんな業務が待ち受けているだろうか。





― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― 







目を開けると以下略。


端末を開くと新規メールが2件入っていた。


1件目は、


件名:救急

内容:救助対象の回復


リリアナの時と同じような案件だろうか。


2件目は、


件名:討伐

内容:目標の討伐又は無害化


こちらは初めてのタイプだな、討伐か無害化…狩人ゲームで言うところの撃退…追い払うだけでも可って奴かな。


どちらもこれだけでは情報が足りない。前回のように数時間で手遅れというのは避けたい。


前回の経験もあるからとりあえず1件目の救助に向かおう。


転移先は…山奥の洞窟?


まずは透明化を発動させて、『転移』!






― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― 







前回の村はそれなりに田舎だったがこちらはもう秘境と言ってもいいだろう。


濃密な緑の香りと高い湿度で汗ばむように感じる。


「うわっ、あちぃ…」


真っ暗な――もう夜だが、これだけ鬱蒼と茂っていれば昼でも足元が見えるか怪しいものだ。


森という言葉では足りない、ジャングルと言っても不足かもしれないレベルではないか。


情景はもとより、救助対象を探そう。


転移の際に対象者の近くに出るはずだが――こんな時に便利なスキル。


範囲索敵、その名の通り周囲の特定物の探索が可能なスキルだ。もちろん隠ぺい系のスキルや検知されない例外は多数あるだろうが…


早速発動させてみるとマップ上に複数の点が表示される。


マップを見ると洞窟と思われる部分には点が1つ、他は野生動物かモンスターだろう。


洞窟へ向かい歩き出す。


今更だが透明化して歩いている――のだが、森を歩くと木々や草花が体に当たる。


こういう場所では『何かいる』と知らせているようなものだ。


隠ぺい系のスキルと併用したほうが良いだろうか、非接触というスキルもあるので試しに使ってみる。


おお、草木が手や足をすり抜けていく。


丁度、3Dのゲームで判定を持たないグラフィックやポリゴンが通り抜けるようなものをイメージしてもらえると想像しやすいだろう。



歩き始めて数分と経たない間に洞窟が見えた。


この暗さでは相当注意しないと気付かないだろう。


しかし、あからさまに蔦や葉っぱ、樹木で入口が塞がれているな?


非接触を発動中なので問題なくすっと中に入る…気分は幽霊になったかのようだ。


中は外よりもっと暗く、見渡しが効かない。


光源を出してもいいが不審がられるのは面倒だ…ヘルプを開いて使えそうなスキルを探す。


スキルを探しつつ、聞き耳を立てているが物音が聞こえない。


本当にいるのか?


変わらずマップを見ると点は移動していない。距離的には目と鼻の先だ。


お、このスキルが使えそうだ。


スキル:暗視…暗闇でも昼間と同じだけの視界を得られる。


さっそく発動!


赤外線スコープか、光量の増加かと思ったがそのまま視界が昼のように鮮明になった。


…あら、本当に数メートル先に誰か倒れてるよ。


まずは状態確認っと…



名前:エルロッド・ル・エンドラ

種族:耳長種

性別:男

年齢:318

状態:気絶、毒Ⅱ、肝臓損傷、腎臓損傷、大腸損傷、小腸欠損、出血etc…



エルフ族キター!なんてやってる場合じゃない。


状態を見る限り相当やばい。素人でも「あ、これは死ぬわ」って直感するくらいにやばい。


暗視が効くようになってから分かったが入口からずっと血痕が残っている。


倒れている部分は血だまりだ。


右腹が大きく抉られている。


応急処置で押さえてはいるようだが、小腸が少々はみ出している。


おそらくモンスターか何かに襲われて、命からがら逃げて、洞窟にカモフラージュして…そこで力尽きたというところかな。


まずは癒しを最優先、まずは…


「特級ポーションをどばーっと掛けます。」


ゲームマスターのアイテムに制限は無いので大盤振る舞いでいこう。


虹色が常に混ざり合い、決して溶け合わない色合いの怪しいポーションをぶっ掛けるとエルロッド…どっちが苗字か分からんからとりあえずこっちで――即座に変化が訪れる。


ポーションは掛けた部分から浸透していき、全て吸収された。


はみ出していた小腸がうぞうぞと腹の中に戻りだし、千切れていた大腸も再生して腹の中に入っていった。


18禁スプラッター映画のワンシーンのようだ。それも逆再生。


これを見る限り肝臓や腎臓も中で再生しているだろう。


しまいに大きく開いた右腹が徐々に埋まっていき、最終的に服に開いた穴だけが残った。


…これは、グロ耐性が多少あってもちょっときつい、生々しすぎる。


ごほん、とりあえず窮地は脱したはずだ。


問題は報酬の回収だ。


業務その5、助けた場合には"神像"をプレゼントし、祈りを捧げて貰う…だ。


起こして説明して、プレゼントして…あー、ダメだ時間がもったいない。


とりあえずエルロッドを登録して後でも場所が確認できるようにして報酬の件はあとで頼もう。


神像は…懐に忍ばせてと…


上司に確認も取らず自分勝手に進めるのは正直忍びないがまとめて報告しよう。


一旦、管理者の間に戻りもう一つの依頼を確認しなければ。


『転移』!






― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― 





時間は有限だ。


サッと行こう。


件名:討伐

内容:目標の討伐又は無害化


次は討伐か…まだ戦闘系は試してないから実験にもちょうどいい。


このアバターはゲームマスターだけあってレベル100、ステータスオールMAXで全スキル所持、全武器(一部未実装も含む)とはいっても全スキルをそのまま使える訳ではないらしい。


典型的な例として短剣スキルを斧専用スキルは使えない。


同じくただの槍を装備して魔法は使用出来ない。


逆に魔法効果のある武器や装飾品があるのはどのRPGでも一緒だろう。


最初の準備として装備はどうしよう…とりあえず最強を知るために最高ランクで固めてみようか。


装備一覧からオーソドックスな剣士で。


頭:剣神・建御雷神乃兜

体:剣神・建御雷神乃戦鎧

腕:剣神・建御雷神乃籠手

腰:剣神・建御雷神乃草摺

足:剣神・建御雷神乃具足

右手:剣神・建御雷神乃神刀

左手:剣神・建御雷神乃脇差

装飾1:主神の銀指輪

装飾2:主神の金指輪



一式で固めてから気付いた。


西洋風なゲームに対し思いっきり和装じゃないか。


最初は天使か聖職者なイメージだったがこれじゃ時代劇か5月人形だよ…。


腐っても始まらない。


ちゃっちゃと終わらせよう。


前準備として『透明化』『非接触』を発動しておいて…


ガチャ…


「動くたびに鎧が接触して音が出る…」


困った時はヘルプを参照して…『消音』を発動。



『転移』!


読んでいただいてありがとうございます。

ブックマークや評価を頂ければやる気に直結します。

よろしくお願いいたします。

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