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久々のお仕事

冒険者ギルドオース支部、支部長キルスティン・ギモンさんからゴムの情報料として日本ではごく一般的な上白糖を出したら思いのほか驚かれた。

 その理由はよく話してみたら簡単なものだった。

 南部で作られるという砂糖はいわゆる黒糖に似たものとのことで白い砂糖というのは存在しないらしい。

 そりゃ雪は黒だ、なんて位に信用されないわけだ。

 だが見せてしまった手前もう引けないので代わりに黒糖に変更させて貰った。

 なお、口止め料として黒糖はちょっと大きい1kgパックを詰めたら今度は白目をむかれたのでまた価値的にやりすぎてしまったらしい…反省。

 まぁ、本人が呆然自失している間に奥さんに言伝して置いてきたし、常識のある人だからきっと大丈夫、きっと。


『ユーガッメール』


 おっ、しばらくご無沙汰だった救済メールが入った。

 あいつらも暇そうにしているだろうから連れて行こう。

 

「マルダ、悪いが急用ができた。また少し留守にする」

 

「えーーー!まだ戻ってきて1日も経ってないじゃないっすかー!」


「あの時のお前たちのように助けを待っている人がいるかもしれない…いや、いるんだ」


「ぶぅ…そう言われちゃうと「行かないで!」って言えないじゃないっすか…」


「悪いな」 


 そう言ってそそくさと人の目がない場所に移動すると管理者の間へ転移する。

 さて、次はどんな依頼が来ているのやら。


「あ…アダム様の匂いが消えた…やっぱ転移ってスゴイっすねー」


 それを嗅覚だけで解かる方も大概凄いのだが突っ込む人は既にいない。




― ― ― ― ― ― ― ― ― 




 そしてコンソールを開いた私は新たな情報に困惑していた。


 「なんだこれ…」


 件名:対象の殺害または断罪

 内容:イルネスト・ド・ヘンリーの殺害、または公平な裁きの元に断罪

 依頼者:不明


 殺害というタイトルだけで良くない香りがぷんぷんするのに依頼者が不明とはどういうことだ?

 少なくとも依頼者は救われるべき対象であり、信仰を貰える対象…人種に限らず多種多様な種族の『誰か』である。

 その依頼者が不明というのは初めてのパターンだ。

 これはいつも以上に拗れているか判断を悩むことがあり得る。

 フル装備かつ、フルメンバーで挑むのが良いだろう。

 

「ハチ!シロ!仕事だぞ!」


 管理者の間でずっと暇つぶしという名の終末の戦いをしていたらしく、刺激に飢えていたようだ。

 私の呼びかけに対し即応して駆けて来た。

 

「やっと仕事か、待ちくたびれたぞ」


 『初仕事!初仕事!』


「では簡単に説明すると、今回の仕事は依頼者が不明となっている。いつもより慎重に行動するように。特にシロは初仕事ではあるが念のため連れて行く。しかし、状況次第では最後まで出番が無い可能性もあるが…納得してくれ」


「しかしまぁ…こうなると人化出来ないのが少々不便だな?」


『…俺たちの種族はこの状態で戦ってこその種族だ。それにこの姿で不都合は無い!』


「ふっ…甘いなシロちゃん」


『む?』


「このサイズなら素晴らしい利点があるではないか?」


『な…なんだと!?』


「考えてもみろ、クッキー1枚…このサイズなら一口か二口だ…だが元の大きさなら?」


『…一口にもならん!!』


「クハハハハハハ!ようやく気付いたか!」


「…こら、アホな問答やってないで準備しろ。もうじき日も暮れる時間だ。1時間後には出発するからな」


「ならシロちゃんよ、体を温めるためにもう1戦どうだ?」


『もちろん構わない。次は負けんぞ!』


 今度は準備運動という名のラグナロクかよ…ほどほどにしておいてほしいものだ。

 少し考えてみたらこいつらには準備するような装備もほとんど無い…という事を思い出したのは自分の準備を終えてからだった。






 ― ― ― ― ― ― ― ― ― 






 森の中に静かに佇む洋館、いや外壁の規模からすればもはや要塞と言っても差し支えないほどの造りだ。

 重厚な外壁は結構な年季も入っているらしく外壁には苔や蔦が伸び葉が生い茂っており、おおよそ地面から1~2メートルほどが緑に染まって天然の迷彩模様のようにも見える。

 日も既に落ち、洋館から漏れる光がなければあたりは何も見えないレベルだろう。


「ずいぶん立派な館だなぁ…周りは森だけだし、郊外に立つ謎の洋館となれば怪しい事件の現場にもなりえるかな」


「…主よ、中から兵士が出てくるぞ?」


「え?」


 間髪入れずに重厚な門の脇にある扉から兵士がぞろそろと溢れてくる。

 転移してまだ数分も経っておらず周りは宵闇と木々の陰でまともに見えない状態であり、そんな状態で私たちの接近に気づくとは監視体制は万全であることを物語っている。

 あっという間に周りは剣に槍で埋め尽くされ、後方には杖を持ったのが2人と外壁の上に弓が数名…展開の速さから練度の高さも伺える。


「貴様ら、ここに何の用だ!そんなモンスターのような手下まで引き連れて…通りすがりです等とは言わせんぞ!」


「…ここの主人に用事があって参りました。取り次いで頂けると有難いのですがね」


「……咲き誇る花」


「はい?」


「咲き誇る花」


 あ、これ合言葉とか符号っぽい…当然だが知らん。

 間違えるのは当然アウトだが答出せないのも……


「…返答無しが答えか、殺せ!!」


 ですよねー。

 兵士たちの装備から察するに今回の対象者となっているイルネスト・ド・ヘンリーっていうのはそれなりの地位か金を動かせる立場にいる輩だろう。

 そして口封じも躊躇わない冷酷な一面も持っている…と。

 そんな事を考えている間に前後左右から襲い来る剣、槍、弓…普通であればどれか1つでも当たれば重傷は免れないだろう。

 当たれば…な。

 

 正面から迫る両手剣の軌道を読み半歩だけ下がり空振りさせる。

 続けざまに左の脇腹を狙って突かれた槍には体を反らし、飛来する矢は手で払い落す。

 躱された両手剣が軌道を変え更に1歩半踏み込み横薙ぎに胴を狙ってくる。

 今のままでは確実に上半身と下半身が永遠の別れをしてしまうが…ワザと当たるのも癪なので剣を叩いて落と……申し訳ない、剣を折ってしまった。

 両手剣が折れた事に驚愕しているが使えなくなったと悟ると後ろに下がり、代わりに細剣が飛び出してくる。

 突進からの高速の連続突きは的確に鎧の隙間、首、目など狙って突かれているがこれも既に見切っているので心臓を狙ってきた辺りでぐっと刀身を握る。

 細剣と突くだけでなく刃もあるが、引くか押さなければ相手は切れない。

 やがてミシミシ、パキパキと音が鳴り細剣の長さが半分になってしまった。


「なんだコイツ!?」

「後ろに目でもあるのかよ!!」

「素手で剣を折るとか化け物か!」

「私のレイピアが……」


 かすりもせず、刀身を掴むなど並みの状態では難しい。

 だから『天眼』を発動させ、自分を上から見えるような感覚になったからこそ死角も手に取るように分かる。

 他の効果としてカウンターを取ることもできるがお偉方に従う兵士を虐殺するつもりも無いので回避と防衛に徹した訳だ。


『ハチ、シロ、手を出しても良いが殺すなよ。』


 やがて天眼の効果時間…20秒が経過するが、初手を避けられた事が衝撃だったのかにらみ合いの状態になっている。

 ハチやシロも2~3人ぶっ飛ばされて容易な相手では無いと悟ったのか包囲網を敷くだけに留まっている。


「やり逢うだけ無駄だというのが分かったと思います。私を通してくれれば皆さんは見逃しますがどうですか?」


「…貴様の目的は何だ」


「言えば絶対通してくれないと思いますが…この館の主人を捕らえる事。場合によっては殺す事です」


 周囲の温度が下がったかのような錯覚を覚えた。

 おそらく気のせいではない。

 私と会話をしている隊長格の男だけでなく、周りにいる兵士達が剣を槍を握りしめ重心を低くしている。

 貴方の主人を殺しますと言っているのだ、まともな神経であれば通すはずがない。


「……馬鹿正直に目的を口にして通してもらえると思ったのか?」


「だから通してもらえないと思っています。真実を話すのは信用の第一歩ですので」


「…賊に信用を語られるとは我々も舐められたものだな」


「舐めてはいません。職務に対する礼儀です。それに…貴方方では私1人でも止める事は出来ないと思われますので」


「それが事実だとしても…主君を見捨てて逃げるなど騎士の名折れ!お前たち!最善を尽くせ!!」


「「応ッ!」」


 兵士にしては身なりが綺麗だなーと思えば騎士とは…。

 騎士を従わせるとなればもう今回の対象人物は王侯貴族のお偉方で決まりだな。


「貴方方の志は立派です…しかし、私にも引けない理由があります。」


「イズン!中に伝えろ!」


「ハッ!」


 命令された比較的若く、後方にいた騎士が即座に駆け出す。


「殺すつもりはありませんが逃がすつもりもありません。『睡眠+範囲化』!」


 あれだけ敵意を持っていた騎士たちがバタバタと倒れてゆく。

 あ、壁の上の弓持ちが落ち……シロ、ナイスキャッチ!

 咥えたことにより涎まみれと鎧が少し変形しているが落下死するよりは余程マシ…シロには後でご褒美をあげよう。

 伝令に走ろうとしたイズンという騎士も走り出そうとした姿勢のまま地面に突っ伏している。

 その中で剣を地面に突き立てて倒れなかった者がいた。


「ぐっ…これほどの…技量と、魔法を…併せ持つなど……!」


 先ほどの問答をしていた隊長格が耐えてはいる。

 しかし、剣を支えにしなければ態勢を維持できない程に体がグラついている。


「大人しく寝ていてください。目覚めたときにはすべて終わっているでしょうし…悪いようにはしません。『睡眠』」


「…ばけ…もの…め…!」


 そのまま剣にもたれかかる様に倒れ、静かに寝息を立て始める。

 とりあえず目先の脅威は去ったにしろこれだけ…ざっと見るだけで20人以上の騎士が出ているこの状況を見れば「外で何かあったのか?」と騒ぎになるだろう。

 ここからは速度が重要となる。

さっさと屋敷の中に乗り込んで逃げられる前に対象人物を取り押さえなければ…。


「シロはここで待機。屋敷の周りを警戒してくれ。もし誰かが逃げ出すようであれば殺さないように取り押さえてくれ」


『了解した!』


 では屋敷に乗り込もうか!



お待たせしました。

大丈夫です。飽きてませんよ?

ちょっとイベントとか「戦場から逃げるな」とかオバロ3期!!とか筆を進めづらい事が重なっただけです!(言い訳


あと次回あたり胸糞話になりそうなので先にここで宣言しておきます。

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