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次は支部長と

 突然の訪問?ではあったが良い買い物ができた。

 赤い狐行商団…今後は情報収集という意味では存分に使わせてもらおう。

 それでは今日本来の予定に戻そうかな。

 

「アダム様ー!!!」


 噂をすれば…聞こえてきた。

 なぜ市場から少し離れたこの場所に気づいたのかは少し疑問が残るけど…。

 既に私をロックオンしたのか一直線に向かってくる。


「ハァハァ……アダム様見つけました!」


「待ち合わせ場所を決めて居なかったから探させてしまっただろう、すまないな。」


「アダム様が謝ることなんてありません!私が用事を聞いてすぐに向かってしまいましたし、それに…」


「それに?」


「アダム様の場所は…匂いで大体分かりますし…♪」


 は?匂い?

 風呂は入っているし歯磨きもしている。

 加齢臭は…まだ無いと信じたいが…。


「私…そんなに匂う?」


「あっ!アダム様が臭いという訳ではなくてですね、アダム様はひっじょーに良い匂いなんですけど…ってそういう事じゃなくて、えっとですね…」


 私の発言から自らの失言を悟ったらしく、必至に言葉を選んでいるのが伺える。

 あと臭くないのか…ちょっと安堵した。


「意識を集中するというかですね…目を閉じで鼻で大きく深呼吸すると何となくですけど"あ、こっちからアダム様の香りがする"って分かるんです」


 犬か!?

 前々から忠犬染みてるとは思っていたが嗅覚まで犬っぽくなってしまうとは…。

 何よりも実際に探し当てている事からその能力に疑いの余地はないだろう。


「私以外の匂いは分かるのか?」


「それは分かんないです!」


 索敵要員としての資質、とも思ったがそうでもないらしい。

 アダム特化型探索術(嗅覚)とでもいうべきか…まぁ使い道は皆無だな。

 そんな無駄な思考の合間にくぅ~~…か細いが聞こえないほどではない音が耳に入ってくる。

 マルダがあっという顔を、徐々に顔を朱に染めていく。

 考えるまでも無くマルダの腹の虫が飯を要求している声であることは確定的に明らかだ。

 時刻は早くも昼に差し掛かるという所、健康な人であれば腹が減るのも頷けるし何より自分のせいで走らせてしまったのは申し訳ないと思う所もある。

 …走ったのは私の責任では無いのでは?

 そんな細かい事を気にしてはいけない…目の前にはお腹を空かせた子猫チャンがいるという事だ。

 自分で言っておいてなんだが、犬とか子猫とか私も大概失礼だな…


「あー…腹減ってるならこれでも食うか?」


 私が取り出したのは先ほど赤い狐行商団で披露したハンバーガーもどきアレンジ。

 余った材料をアイテムボックスの中で素材ごとに組み合わせるとあら不思議、あっという間にチーズ〇ーガー!もう伏せ字めんどいし、普通にバーガーって言ってるしな。

 さすがに炙れないのがちょっとだけ足りないがそこは我慢してもらおう。


「!? うんま! 何これ! うんまッ!!」


 はい、リアクションありがとう。

 さすがに挟み肉というアレンジ元がもう無いのでバンズとパティは日本産を使ったもどきバージョン2だが、むしろ味に関してはオリジナルを凌駕しているだろう。

 商品には出来ないが自分の関係者に食べさせるぐらいは良いだろう。




― ― ― ― ― ― ― ― ― 





「んーとですねぇ、今日は支部から出ないからいつでもどうぞ、って言ってました!」


 お使い良くできましたね。

 それと口にトマトソース付いているぞ。

 冒険者ギルドの支部長にアポを取る話を聞くまでに結局あれから3個もバーガーもどきを食べられてしまった。

 薦めたのは自分だし、旨い旨いと言って食べてくれると提供する側としてもつい、手が滑る…いや、財布の紐が緩むという感じなのだ。


「ならこれから向かうとしよう、あと口はちゃんと拭けよ」


 今更思い出したかのようにゴシゴシやっても遅い…まぁ、その仕草、ちょっと間の抜けた所が人気を集める理由なのか。

 以前私に絡んできたホリッド含め親衛隊が出来るだけでなく、市場のおっちゃんおばちゃんにも顔が利き、まだ若手ながらもベテランや新人問わず人気があるようだ。

 信仰を集める身としては人に好かれる事は実践したいと思うが…一般人にいきなりアイドルをやれというようなものかな。

 付け焼き刃が上手くいくとも限らないし私は私の手段で地味に進めていくのが最短とはいかなくとも最善のルートだ。


「あー!待ってくださいよー!」


「いつでも良いとは言ってくれたが手土産くらいは用意しないとなー…」


 コツコツと石畳を歩き出す私の後ろにマルダが子犬のように付いて回る。

 市場に戻って少しお土産になるものを探そうか、安易に向こうのお菓子を出さずにこちらの風習に則ることも大切だ。


「この辺りで美味しいお菓子やお土産に出来そうな店はあるか?」


「ありますよ!アタシおすすめを紹介します」


 1軒目、クレープとオムレツの真ん中のような卵の生地の中にフルーツを挟んだもの…食べ歩きが主なので却下。

 2軒目、ビスケットのような焼き菓子にはちみつをかけた物…お店で食べるタイプなので却下

 3軒目、これはかき氷…削った氷にはちみつか果汁などのシロップで味を付けているがこれも持ち込みは出来ないので却下。

 1軒目で「へー」、2軒目「…ん?」、3軒目で「まさか…」とは思っていた。

 これは確実に自分で美味しいお店を紹介している。

 後半のお土産に…という部分が完全に抜け落ちているようだ。


「では次のお店はですね――「マルダ、出来ればお土産として喜ばれるような店を頼む」」


 甘味巡りは後でハチもいるときにでもしてもらえば良い。


「お土産っすか?どこの?」

 

「どこって…これからギモンさんの所にお邪魔するんだから手土産の1つくらいは用意するべきじゃないか?」


「あー…そういうことですかぁ…」


 何だろう、この嫌に歯切れが悪い感じ…


「アダム様…ちょっと前置きしますけど冒険者の緑以上は一般的には高ランク扱いされます。これは大丈夫ですよね?」


 お土産に冒険者の話?と思うが素直に頷く。

 冒険者になる際に説明で聞いたことがある。 

 白、青、黄、緑、赤、特色という順になっていて白・青が駆け出し、低ランク扱いされ黄で一人前となり中堅クラスになる。

 緑になれば一般人の限界レベルとされ、ベテランや熟練と呼ばれるのはこのランクからだ。

 それなりに数が居るとはいえ、その影響力はそれなりの物だ。


「そして緑より上に上がるためには才能とあるモノが必要になります」


 日本社会に置き換えると昇進するには概ね、経験年数と力量や資格…あとは上司の覚えや成果かな。 


「…積み上げた実績とかギルドの上役に気に入られる…とかか?」


「あれ、知ってたんですか?」


「まぁ…何となくだがな。どこでも社会というのは一握りのお偉いさんのエゴで動いているもんだよ」


 極々普通の会社のサラリーマンだった私が社会の構造を語るのはおこがましい所があるが、往々にしてそんなもんだろう。

 散々耳に良い事を言って当選した政治家が公約を果たしただろうか。

 芸能事務所が分け隔てなく所属のタレントを推すだろうか。

 テレビや放送のお偉いさんが自分のお気に入りのタレントだけを贔屓しない…なんてことがあるだろうか。

 結局、上に居る人間が自分の為に力を振るう事が多いからこそ、賄賂や接待に枕営業なんて噂が後を絶たないのだ。


「つまりマルダはこう言いたいわけだな、"私が支部長に贈り物をするとご機嫌取りと思われる"と」


「…うっす」


 マルダなりに私の立場を思ってくれた上での進言だ、素直に受け入れよう。

 ま、裏技でも使って贈り物はするけどね。

 ジャパニーズサラリーマンでは菓子折りは定番だし、ここまで郷に入っては~をするまでも無い。


「"贈り物"は諦めよう、とりあえず支部に向かおうか」


「うっす!お供します」

生存報告がてら1話うpします。

出張中にだらだら書いていたらちょっと長くなったので前後編的な感じのだらだらした蛇足話が続きます。


はなびの台湾まぜそば美味しかったです。

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