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休憩

 今日は急ぎの用事も無ければ救済メールも来ていない。

 オースに残してきたマルダには数日は帰らないと伝えているしもうしばらくは放って置いても大丈夫。

 という訳で、耐性解除するために管理者の間に戻って来たのでした。

 そこで目にしたものは…。


 10メートルほどの赤い鱗を纏った竜と純白の毛並みが美しい全長6メートルほどの狼が激しいバトルを繰り広げている最中だった。

 赤い竜が大きな口から灼熱のブレスを吐くと白い狼も負けじと絶対零度の白い咆哮で拮抗させる。

 ブレスが効果無しと見るや肉弾戦に移る。

 竜は威力はあるがスピードはイマイチで、狼はその逆といったスタンスだ。

 狼は爪、尻尾をひょいひょいと掻い潜り弄ぶかのように周りを飛び回る。

 焦れた竜は腹に響く雄たけびを上げながら自身の鱗を赤熱化させて……周りに閃光と衝撃が走った。

 竜を中心に地面が赤くなり、蒸気を上げている。

 狼はその攻撃を事前に察知していたのか、大きく後方に下がっていた。

 正に世紀末といった様相だが、ファンタジーとしてみれば「うわー何て綺麗なCGだー」と…いかんいかん、現実逃避していた。


『ぬぅ、やるではないかシロちゃん!』


『そっちこそ訛ってないようだな!』


 赤い竜は正式には『黙示録の赤き竜』――通称ハチ、白い狼は『白銀皇狼フェンリル』――通称シロ。

 どちらも最高ランクの召喚獣だがこの世界では呼び出せる実力者は現存しておらず世界の裏側で呼び出されるのをひたすら待っていた暇人達だ。

 何で管理者の間にシロまでいるのかと疑問に思う方もいらっしゃるのでは無いか。

 それでは少しだけ回想を挟みましょう。


 ほわんほわんほわ~ん






 時間はグレイと名付けたフォレストウルフの亜種を助けた後に遡る。


「グレイ達も送ったし私たちも帰るか」


「もうちょっと手ごたえのある獲物が良かったな」


『もう帰るのか』


「あー、フェンリルは用事も済んだし帰還させてもいいかな」


「そうか…ひと時ではあったが楽しかったぞシロちゃん」


『え、俺の出番これだけ?』


「くははは!シロちゃんよ、こやつに我らの扱いをどうこう言っても始まらんぞ。我も最初はただの運搬係だったからな!」


『はぁ!? アカが運搬係!? それに加えて俺が通訳とか扱いが酷過ぎやしないか!?』


「酷いと思うのは申し訳ないが今回フェンリルを呼んだのはハチ…君がアカと呼んでいるこのドラゴンの勧めがあったからな。それに今の私は戦う力には困ってないし…」


『俺は本当に通訳だけして帰るのか…』


 尻尾が倒れ、心なしか耳も垂れている。

 そのしょぼーんとした姿を見ているとなぜか心にくるものがある…。

 ちょっと考えればこいつもハチと同じく何もない所でずーっと待つだけの日々だったんだろうなぁ…。

 それにハチがこっちにいるとなれば話し相手も減る訳で……なんだか自分がものすごく残酷な事をしているような気がしてきた。


「まぁ…その…あれだ、フェンリルよ。お前が良ければこっちの世界に留まるか?」


『良いのか!?』


 おおう、垂れていた尻尾が扇風機のようにぶんぶんと音を立てて振れている。

 問題は食費だ。

 この図体ではハチの何倍食べるか分かったものではない。


「お前が居たいというなら別に無理に還す気は無い。それと人化は出来るか? 今のままだと食費が……な」


『むぅ…残念ながら人化は出来ないが食い物の心配なら不要だぞ?』


「ん?飯はいらないのか?」


『召喚獣は基本的に魔力さえあれば飲食は不要だ。 ただ楽しみとして食べる事はあるがな』


 という事は……?

 空気を察したのかこそこそと逃げようとするハチの後ろ姿を見かける。


「なぁハチ君…あれだけ飯やら菓子と言っていたのは何だったのかな?」


「えっと…だな、そのだな……」


『…察するにアカよ、好き放題食っていたのか?』


「そ、そうだ!放置してきた冒険者の様子を見て来なければ!!」


 そこからのハチの行動は早かった。

 素早く木の枝に乗ったかと思うと木々を飛び移り樹海の闇の中に消えて行った。

 普段とは違いセーブしていない全力での逃走。


「……フェンリル、最初の仕事だ。 ハチを捕まえてきなさい」


『…承知した』




 数分後には首根っこを加えられたハチを捕まえてきたフェンリルはまるで忠犬のような振る舞いだった。

 ちなみにハチは3日間のお菓子抜きとしたがそれでも「菓子…菓子ぃ…」とうわ言のように繰り返すのでこっちが何故か申し訳ないような気持になり結局罰は1日で終わってしまった。





 ほわんほわんほわ~ん


 という訳で私の配下にフェンリルのシロが加わりましたとさ。

 目の前で絶賛行われている殺し合い…いや、本人たちからすれば只のじゃれ合いらしい。

 ハチも暇つぶしの相手が出来て丁度いいか。


「ハチーシロー、ちょっといいかー?」


 目の前のラグナロクが終わりを告げ2頭の怪物がのしのし、たしたしと歩いてくる。

 私に影を落とす巨体は知らない人が見ればチビりそうな圧力だ。


『いい運動が出来たぞ、それで仕事か?』


「いや、少し時間が出来たから眠ろうと思ってな」


『寝るのに許可がいるのか??』


 シロは怪訝そうな顔で首を傾げている。


「そうだな、シロには私の説明はしていなかったな。ちょうどいい機会だし話しておくか」


 かくかくしかじか


『へー…管理者かぁ…アカ、いやハチが大人しく従う訳だ』


「そんなわけで数日眠りっぱなしになると思うから念のために警護を頼む」


『承知した。だがその間のね…あの…ね…』


「はいはい、菓子と飯は冷蔵庫に入れておくから2人で、ちゃんと分けて! 食べるようにな」


『うむうむ、承知したぞ♪』


『良く分からないが…分かった』


 ハチがちゃんと分け合うかちょっとだけ不安だが今気にすることでは無い。

 どうか、眠っている間に緊急の要件など来ませんように…。



 寝間着は信仰ポイントで買ったジャージだ。

 向こうで暮らしていた頃は部屋着はほぼジャージだった為、これが一番リラックス出来る。

 それでは布団に入って…メニューから"耐性解除"と…。


「うお…お! 目がまわ…―――



 私の意識は暗転する。





― ― ― ― ― ― ― ― ― ― 




『なぁ、アk…ハチ。お前が戻らなかった理由は何だ?』


「あそこは…つまらん…闘争も無ければ娯楽も、菓子も飯も無い。こちらに来てようやく分かったのだ。私たちは世界を相手にし得るだけの力を持っているがその気になれば召喚者すらどうとでも出来る力がある。それ故に世界の裏側に閉じ込められたのでは無いかと思った」


『確かにな…』


「今にして思えばあそこは牢獄だ…呼び出されて移動に使われた時にはどうしたものかと思ったが、こちらでの生活はなんだかんだ…楽しいぞ!」


『お前の表情を見て納得したよ』


「こうなれば我らが減った分だけ向こうに居る奴らは今まで以上に暇をしているに違いない」


『…まさか全員をこちらに連れて来るのか?』


「うむ、可能なら呼びたいものだな」


『はぁ…お前は世界を滅ぼす気か?』


「逆に問おう。シロちゃんは主に勝てるか?」


『無理だな、本能が"絶対に逆らうな"と考える事すら拒否している』


「主の事だ。今さらあと3、4体増えた所でさした問題にならん」


『ははは…1体でも世界を相手にし得る獣を複数従える世界の管理者…これは世間的には支配者とかいうのではないか?』


「言葉遊びだな、管理というのは支配とほぼ同義だろう」


『確かにな』


「どこの有象無象か分からん奴に呼ばれるより力ある主に巡り合えた事に乾杯でもしようか」


『そうだな…それと先日から気になっていたのだがお前"お菓子"とやらにすごい入れ込んでいるがそれほどの物なのか?』


「お菓子はすごいぞ! 甘い、辛い、しょっぱい、酸っぱい…その他言葉で表せないほどの旨さだぞ!」


『そんなに絶賛するほどか、いろいろ言っていたがつまりはお菓子が無いから帰らんのだろう』


「ばれたか」


『「ははははははは!」』


具合が微妙なので書き逃げ

GW中にもう1話くらい上げたい(希望)

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